初夏に見つかる黒い蛾
ちょうどホタルが出現する頃合いの時期に神社などを中心にやや薄暗い雑木林環境で黒白赤というホタルのような色合いをした蛾が見つかります。
飛んでいてもかなり目立つその黒い色と、羽ばたきでひらひら目立つ白い線は類似種のいないホタルガという蛾の一種です。
食草の影響から比較的幅広いエリアで見つかる蛾であるため、目につく機会の多い蛾と言えます。
ホタルガとは?
ホタルガはマダラガ科に所属する蛾の仲間の一種です。
体長は意外と大きく3㎝程。身近な蛾でいうと外灯に来るマイマイガなどは近いサイズをしています。
成虫は初夏の6月頃と晩夏の9月頃に見つかることが多いです。年2化で出現期間が近いことから初夏から晩夏まで遭遇のチャンスがあります。
幼虫の写真はありませんが、ホタルガはマダラガの仲間ということで幼虫が有毒種です。
幼虫は毛や針ではなくかぶれる液を出すというユニークな特徴があります。体液に毒があるものとしてハネカクシやツチハンミョウの仲間に性質としては近いものがありますね。
成虫は真っ黒な体で翅には大きな白線が入り、頭部は赤色とかなり特徴的です。触覚も非常に大きく、飛翔の段階で間違えることは無いと考えられます。
利用樹種はサカキやヒサカキとこちらも神社を始め薄暗い環境の普通種としてよく目にします。
それに伴いホタルガの出現も薄暗い環境となる場合が多いです。
ホタルガの成虫に毒はある?
マダラガの仲間は幼虫に毒がある仲間です。
肝心の幼虫の写真はありませんが、毛虫です。毛虫ですが毛には毒は無く、体液に毒がある珍しい幼虫です。
ホタルガの食草となるサカキやヒサカキには毒はありません。
有毒蝶のジャコウアゲハの様に食草から毒を得ているわけではないというのは面白いですね。
毒持ちの生き物にはイラガやドクガの様に生まれた時から毒をもっているものとヤマカガシやジャコウアゲハ、アサギマダラの様に成長の過程で得た食物から毒を得るタイプのものがいます。
ホタルガは幼虫だけということでちょっと特殊な気がしますね。
ホタル擬態?派手な色合いの理由とは
ホタルガの名前の通りこの蛾はホタルに関連が深い可能性が考えられます。
身近なホタルといえば発効するゲンジボタルやヘイケボタルが有名ですよね。
ホタルの仲間の中には具体的な種名は不明ですが毒の持つ種がいると言われており、彼らの持つ赤色や黒色の配色は一種の擬態として機能しているものと思われます。
ホタルガの色合いは比重こそ違いますが、配色はホタルに似ています。
毒のある虫に毒の無い虫が擬態することをベイツ擬態と呼びます。
有名例でいえばジャコウアゲハ擬態のアゲハモドキですね。
同じような配色をした例としてホタルカミキリという種類がいます。
カミキリムシの仲間なのですが、配色はホタルに似ており、やはりこの配色に何かしらの有用性があると思います。
日本の事例ではありませんが台湾のヤマカガシはヒキガエルではなくホタルの幼虫を食べることで毒を得ているという話があります。
やはりホタルの仲間のどの種かには毒がありそれを真似ている説が有用な気がします。
ちなみにホタルカミキリは斜面や水辺近くに生えることの多いネムノキを、ホタルガはやはり薄暗い環境に生えるサカキ類を利用するなど2者の環境はホタルが出現するような場所で見られることも多いです。
薄暗い環境をヒラヒラと舞う
チョウやガの出現というのは食草に縛られています。
もしホタルガを見てみたい場合には食草であるサカキやヒサカキの生える環境を理解することが有効です。
サカキやヒサカキは縁起物としてよく知られており、点在する神社などで普通に見つかります。
そして彼らの果実は鳥によく食べられ様々な場所で発芽するわけですが、常緑樹である彼らは比較的暗い環境を好みます。
林縁の常緑樹として特に都市部では様々な雑木林で見つかりますのでそれに合わせてホタルガも良く見つかるはずです。
この蛾、昼夜どちらかといえば昼間に見つける蛾なのですが、飛んでいると異常に目立ちます。
どことなく夏の風鈴を思わせるような涼やかな雰囲気があり、なかなか乙な味わいをしています。
特に水辺で涼しげな空気感とはベストマッチしていますね。昼間のホタルとして6月頃の象徴的な虫なのではないかと思います。
ホタルガは止まっていることも多い
飛んでいれば目につくホタルガですが、止まっていると意外と分かりません。
というのも葉の上にいれば見つけやすいですが、木の上や枝にいると意外と黒い菌類は多いので見つからないんですよね。
ゴムタケの仲間やコナラなどにつく謎のキノコなど静止している黒いパーツというのは自然界では意外と多いものです。
今回は葉の上にいる物を見つけました。かなり鈍いようで逃げたりするそぶりはありませんでしたね。