クロアゲハの仲間にそっくりの蛾
アゲハモドキというアゲハチョウの仲間の姿そっくりな蛾がいます。
擬態の代表的な昆虫で、知名度のある虫です。
一見すると蝶にしか見えない見事な擬態ですが、その擬態にはどんな効果があるのでしょうか?
今回の記事では精巧な擬態を行うアゲハモドキの面白さと擬態の戦略を紹介していきます。
アゲハモドキとは?
アゲハモドキはその独自のフォルムから分かるように仲間の少ない蛾の種類です。
アゲハモドキガ科の仲間は非常に少なく、身近な種類ではこのアゲハモドキ位しか目にすることはできません。
姿はクロアゲハの仲間のように見えますが、実物は1回りほど小さいです。
そのため、アゲハチョウを見慣れているような方は違和感に気がつけるはずです。
幼虫写真はありませんが、春に白い花を大量につけるミズキの仲間を食草とするため、雑木林的な環境で目にすることができます。
昼間も夜も目にすることはできますが、いずれの時間帯も積極的に飛んでいることは少なく、外灯周辺や適当な葉に止まっている場面に遭遇する場合がほとんどです。
遭遇率としては探すと見つからない位の難易度ですね。
擬態の代表種
アゲハモドキがなぜ有名かといえば蝶の仲間における擬態の精度の高さによるものでしょう。
クロアゲハの仲間とアゲハモドキは本当にそっくりですよね。どちらが真似をしているのでしょうか?
一般的なアゲハの仲間は幼虫の食草がミカンの仲間です。
アゲハモドキの食草はミズキの仲間でしたね。どちらも毒のある植物ではなく、これでは擬態としての意味を持ちません。
(ベイツ擬態の例 毒蝶擬態)
擬態の戦略は有名なものが2種類あり、毒のある種類の色や模様を真似るベイツ擬態と、毒のある者同士が似た模様を持つミュラー擬態が有名です。
虫に触れていない方は毒を持つアゲハチョウがいると聞けば、上記の話全てに筋が通ることを理解していただけると思います。
(唯一毒のあるジャコウアゲハ)
クロアゲハの仲間もアゲハモドキも毒を持つジャコウアゲハという蝶の姿を真似していると考えられています。
ということはアゲハモドキはベイツ擬態の蛾ということですね。
ジャコウアゲハとの違い
ジャコウアゲハは林縁環境や山地環境などに見られるアゲハチョウです。
食草は有毒のウマノスズクサ科を利用し、幼虫の時期に毒素を溜め込むことで成虫においても毒の成分を持ちます。
黒色と赤色の警告色が目立つ蝶で、ベイツ擬態を行うアゲハモドキやクロアゲハの仲間が現在もはっきりとこの姿を真似ていることから生存に関して効果は大きいことが想像できますね。
ジャコウアゲハは黒系アゲハの中でも♂は体まで赤色、♀は翅が白く塗ったような特徴が見られます。
アゲハモドキの翅の薄れた感じの雰囲気はこの♀の雰囲気をよく掴んでおり、赤いボディも再現しているため擬態としての精度はかなり高いです。初見で遭遇した方は確実に驚くと思います。
しかしまず1回り違うサイズ感で見分けられ、お尻の尾状突起の尖り具合もアゲハモドキはかなり弱いです。
何よりアゲハモドキは触覚や頭部が蛾なんですよね。
アゲハモドキの珍しさ
アゲハモドキは蛾や蝶の仲間です。
これらの仲間の繁殖には必ず幼虫の餌資源である植物が関わってきます。
アゲハモドキはミズキ科でよく目にするので、雑木林における発生量はミズキの量と関連があります。
ミズキは雑木林の普通種であるため、ある程度の個体数はどこでも見られそうに感じるのですが、いざ探してみるとなかなか見つからないと言うのがアゲハモドキです。
そのため、擬態をする珍しい虫だというのが出会った方の認識になると思います。特に平野部ではあまり見かけませんね。
アゲハモドキに出会いたいなら?
彼らは昼も夜も行動はしますが、いずれも活発には行動しない印象が強い昆虫です。
探したい場合には蛾の王道採集である外灯採集がオススメです。
アゲハモドキ自体は5月頃から姿を見ることができます。発生期間は比較的長く9月ごろまで姿を見られます。
夏場のクワガタ採集の副産物的な情報を提供すると、アゲハモドキは8月中旬~9月頃に目にする数がとても多くなります。
この時期に雑木林近くの外灯周辺を散策してみると遭遇できるのではないかと思います。
まとめ
アゲハモドキは毒蝶のジャコウアゲハに擬態しています。
毒のある虫に無害な虫が擬態するパターンはベイツ擬態と呼ばれ、その観察対象としてアゲハモドキは最高の対象です。
食草のミズキ科で目にすることが多く、発生が多いタイミングは8月下旬~9月頃になるので興味のある方は夜の街灯採集を行ってみると出会えるかと思います。
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ベイツ擬態でおなじみのアゲハチョウの仲間を捕まえる方法です。
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同時期に現れるハチドリのような蛾もユニークです。
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15cmにもなる巨大蛾もアゲハモドキと同時期に見ることができる蛾です。