蓼食う虫も好き好き

知っているとちょっとお得で日々の観察が楽しくなる自然の魅力を発信します。画像の無断転載は禁止です。

オレンジと黒の毛虫は危険! ふさふさの毛を持つドクガの仲間と対策を紹介

鮮やかな毛虫に潜む危険

モンシロドクガと思われる毛虫

幅広い時期に目にするオレンジと黒の毛虫がいます。

鮮やかできれいな毛虫だと思いきや、その幼虫は自然界では特に警戒すべき幼虫の1種、ドクガの仲間の可能性が高いです。

この毛虫は触れることでも皮膚炎などを引き起こしますが、抜けた毛に触れることでも様々な害をもたらす危険な虫です。

しかしその危険と裏腹に有名な2種の擬態戦略を学ぶのに適した対象であり、対策さえ覚えておけば被害を抑えられる可能性もある昆虫です。

今回の記事では身近なドクガの仲間の紹介と擬態の紹介、そして対策方法を紹介していきます。

ドクガとは?

ドクガの仲間は名の通り毒を持つ毛虫の仲間です。

毒のないドクガのキアシドクガ

体長は4㎝ほどのものが多いですが、中にはマイマイガなどの7㎝近い巨大種もいます。

イメージが先行してすべてに毒があると思われがちですが、ドクガの仲間の中にも毒を持たないものがいます。

長い毛を持つリンゴドクガ。これで毒がないから驚きである

科の特徴としては毒針毛(どくしんもう)という長い毛をもちます。この毛は抜け落ちても毒の成分を含んでおり、風に飛ばされることで2次被害をもたらします。

幼虫は種によりますが年2,3回発生するものから年に1度発生のものもいます。

オレンジ系のドクガはどれも毒がある。類似種のケンモンがいる

毒を持つ種類は幼虫~成虫まで毒針毛をもち、繭にも毛があります。この点は代表的な毒毛虫のイラガと並んで同じです。

成虫の姿も特徴的で、箱のような立体的な姿をしています。

ドクガの仲間の典型的な姿。頭部の毛が多い

頭部に細かい毛が密集しており、毛感が強いのと頭部を隠して前足を前に出すユニークな止まり方をするため分かりやすいです。

ドクガの仲間の成虫は幼虫の発生期が複数あるため長い期間見ることが可能です。

外灯に飛来する傾向がやはり強く、探したい場合には外灯採集が有効です。

チャドクガに代表されるように特定樹木につくものもいますが、大抵の種類は幅広い植物を食べます。草地にもいるので気を付けましょう。

モンシロドクガ

今回の写真のものはモンシロドクガであると思われます。

人工物などの上で遭遇した

ドクガらしいオレンジと黒の体は他の種にも共通するのですが、その割合が若干異なっています。

広食性で様々な樹木につくなどドクガの仲間でもよく目にする種類です。幼虫越冬をするため晩秋頃まで目にします。

発見時期が11月の下旬であることから幼虫越冬種であると想定し、似た斑紋の中でもモンシロドクガではないかと推測しました。

ドクガの仲間の若齢幼虫は見比べても分かりにくい印象

無毒の種類でケンモン蛾の仲間に似たものがおり、ややこしい種類です。モンシロドクガである場合すべてのステージに毒があるため触らないほうがいい種類と言えるでしょう。

オレンジと黒の幼虫は特に1齢や2齢において類似種とそっくりであったり、色彩変異もあるので特定種に絞り込むのがなかなか難しいです。

ゴマフリドクガ

モンシロドクガに似た種類です。

多分ゴマフリドクガ

一応背中のオレンジ模様の面積が狭いと記述がありますが、成長段階や個体差などによりそっくりなものもいる印象です。

共通しているのはオレンジと黒のドクガの仲間には毒があるということです。こちらも幼虫越冬であるため、早いと4月頃に新成虫を見ることがあります。

出現期もやはり長く、時々目にします。成虫になるとゴマ振りの名の通りゴマのような斑点が特徴的なドクガです。

警告色とミュラー擬態の戦略

危険なドクガがなぜオレンジと黒や黄色のような色合いをしているのか気になりませんか?

警告色だが毒はないマイマイガ

まず一つはこの色合いが警告色であるという点ですよね。

スズメバチに代表されるように毒を持つ虫は自身の危険性をアピールするために派手な色合いをしています。

毒がないので毒のある虫に擬態している

この色合いなどを毒の無い虫が真似るのがベイツ擬態です。ジャコウアゲハに擬態するアゲハモドキが代表的と言えるかもしれません。

真似ている側に毒がないというのがベイツ擬態の特徴です。

毒のあるモンシロドクガ(左)と毒のないマイマイガ(右)

実は代表的な擬態にはもう1種あり、それがミュラー擬態というものです。

こちらは毒のあるもの同士が似た姿を持つことで捕食者に対して危険意識を持たせるというものです。

ドクガ、モンシロドクガ、ヒメシロモンドクガ、ゴマフリドクガなどは幼虫の姿と色合いがとても似ています。

ゴマフリドクガ(左)とモンシロドクガ(右)両者とも毒がある

もし類似の種類が捕食された場合まとめてこれらの種類が捕食されにくくなるというビックリな賢い戦略です。

ベイツ擬態は有名なのですが、ミュラー擬態は知らない方も多いと思います。毒を持つ虫ならではの戦略なのでぜひ観察してみてください。

ドクガ科の毒性となぜ被害を受けやすいのか

これは私自身刺されたことが無いので、昆虫毒に関する視点から紹介します。

長い毛は簡単に抜けてしまう

ドクガは前述したように毛が抜けやすく、虫に触れた記憶はないのにかぶれてしまったというケースが起こりやすい虫です。

全ての昆虫毒に使えるわけではありませんがこのドクガの毒は熱に弱い毒です。

webにて様々な皮膚科さんのHPでドクガの情報を見た結果、ドクガの毒は50度程度の温度で無毒化できるようです。

落下したドクガが皮膚や服につくケースも有る

ドクガを認識して刺されたら50℃のお湯をかけるというのはちょっと現実的ではないかもしれません。ここで覚えておきたいのはドクガの毛が抜けやすいという点です。

チャドクガの被害例を見ると分かりますが、背中などの体周りに大量に毒の影響が出るケースがあります。

抜けた毛が風に乗り静電気などで服に張り付きます。それを着てしまうと毒針毛の影響を受けてしまうのです。

チャドクガを見ると屋外のツバキが怖くなる病にかかる

こうした被害にあった場合や、ツバキに代表されるチャドクガなどのいる木が近くにある場合には服の方を暑いお湯で洗濯することで毒針毛を無効化できるはずです。(試したことは無い)

ドクガのライフハックとして1つ覚えておいてください。


被害を避けるための戦略

ドクガには特定樹木につくものと幅広い樹木につくものがいます。

冬のツバキは比較的安心できるが、春~秋はかなり怖い

このうち被害が重大化するのは特定の木につく種類、すなわちチャドクガです。

チャドクガはツバキの仲間に大量発生します。なのでツバキ、ヤブツバキ、サザンカ、チャノキ、ヒメシャラ、ナツツバキなどの庭木として人気の樹種が該当しますね。

ナツツバキの例。茶筅のような特徴的な雄しべがある

ツバキ科の判断は花の形を覚えてしまうのが確実です。ひまわりとタンポポがキク科として似た花を持つように、科が同じ花というのは同じ形をしています。

冬の時期にピンクの拳ぐらいの花があるならばチャドクガが発生する可能性があります。町中でも発生するので、それを起点に飛ぶ毛にも気を付けましょう。

どんぐりの木であるアラカシにいたケース

一方でモンシロドクガやゴマフリドクガのような広食性のドクガの仲間の大量発生に遭遇する機会というのはほとんどありません。

それゆえ被害を受ける可能性は木々のある場所ならばどこにでもあるというのが正直で、たまたま落ちてきたりしたならば運が悪かったと言わざるを得ません。

なんてことない下草についていることもある。キドクガが多い印象

一つ確実に言えることは草むらには気を付けましょうということです。

食草の広いドクガの仲間は樹木だけでなく草にも発生します。

林床の草にドクガが多数ついていた事例は観測したことがあるので、毒毛虫の被害を避けたいならば草地には気を付けましょう。

ハチ毒は冷やしてドクガは温める。毒によって対処が違うので注意

ちなみにハチ毒とは異なるためポイズンリムーバーは効果が薄いと思われます。(試したことがない)

ドクガでよく使われるものはセロテープで毒針毛をペタペタ除去するというものです。

毛虫が気になる方は小さなセロテープを携帯しておくと緊急時に役立つと思います。

アウトドア活動ではうっかりや偶然で被害に会えてしまう

かくいう私はアウトドアでいろいろ活動していますが、まだ毒毛虫の影響を受けたことがありません。過去にお弁当時に真横に振ってきたことがあり、「これは運次第でいくらでも被害を受けるな」と感じました。

外で活動するならば危険をまず想定して、それに必要な救護アイテムを準備しておくのが楽しく過ごすコツだと思います。

今回の記事でドクガの対策はイメージがわいたと思うので、ハチやアブ、マダニやヤマビルなどもぜひ警戒してください。

ドクガも嫌な虫ですが彼らから学べることは多いです。毒を制していきましょう。
pljbnature.com
野外の厄介な生物、マダニの紹介です。実はそのへんの草むらにもいる最重要対策生物です。覚えておきましょう。
pljbnature.com
刺すカメムシも野外では注意が必要かもしれません。サシガメの仲間にはトコジラミで知られるように吸血性のものもいます。

pljbnature.com
屋外の危険生物といえばスズメバチ。身近な7種のスズメバチの紹介と意外と大丈夫な対策方法などを紹介しています。