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樹液で見つかるスズメバチの種類と危険性及び対策について。 夜にも活動するモンスズメバチや希少なチャイロスズメバチなど。

樹液の危険な虫スズメバチ?


昆虫採集においてどの昆虫よりも知名度があるのはスズメバチの仲間だと思います。

刺されれば人が死ぬという認識から恐れられるハチですが、樹液は多様なスズメバチが訪れる良い観察スポットだったりします。

今回は樹液に来る7種(現6種)のスズメバチを紹介し、その危険性と意外と大丈夫な安全性をお伝えします。

そもそもなぜスズメバチが樹液に来るか?


スズメバチは生態系の中でも上位に位置する強い虫です。

自然界においては幼虫などのいわゆる人間活動における害虫となるような虫たちの捕食を行ってくれます。

彼らが捉えた虫は団子状になり巣の幼虫たちの餌となります。一生懸命働くハチたちにもエネルギー源が必要で、花の蜜を訪れたり、樹液にやってきてエネルギー補給を行っています。

樹液に来るスズメバチの種類を紹介

スズメバチ類の数は環境によって見られる種類が変わってきます。

オオスズメバチ

知らない人はいない有名なハチですよね。
ここは山の近くであるためオオスズメバチが多く見られます。

オオスズメバチは樹液に来るハチの中で最大の大きさを持ち、初夏に来る女王は5cmを超える超巨大種です。

巣の環境が他の種と異なり、倒木や積み重なった枯れ木の下など土中環境に巣を作ります。

巣が外部に露出しないため、野外で巣に急接近してしまうことが多く、事故に繋がりやすい種類といえるでしょう。

その攻撃性が注目される種ですが、樹液のような目視できる環境で6,7月程度の早い夏の時期に近づきすぎない程度の距離を保てば問題ありません。

威圧感は凄いですが、あくまで樹液に来ているものは近づき過ぎないよう心がければ大丈夫です。

オオスズメバチの多さはそこの環境が餌となる様々な昆虫たちに満ちている良い証だと捉えることができますね。

外国ではマーダーホーネットと呼ばれ殺人ハチの異名を持ちます。

ヒメスズメバチ


ヒメスズメバチはヒメ(ちいさい)と言う割に大型のスズメバチです。

この種の特徴はおしりの先が黒いことと大人しい性格をしているということです。

他の種より威嚇の飛行(周囲を飛び回る)などをせずスズメバチの中ではかなり安心できる種類です。

おしりの黒さで判断が用意、思ったより大きいサイズで間近の迫力十分と個人的には遭遇できると嬉しいスズメバチなのですが、身近で見られるスズメバチの中では数が少ないように感じます。

これは他のスズメバチ類が多様な昆虫を利用するのに対し、ヒメスズメバチはアシナガバチ類の幼虫を好んで捕食するという食物の制限が大きいのかなと感じます。

キイロスズメバチ


キイロスズメバチはかなり小型で濃い黄色をした毛深く比較的攻撃性の高いスズメバチです。

非常にすばしっこくて視界から消えることも多く、個人的には苦手なハチです。御存知の通り市街地などの人工物環境でもよく見られるスズメバチで、大きいと1m近くになる球形の巣を作ります。

キイロスズメバチはまさに数のハチという感じで、山地というよりは主に平地の住宅地や雑木林で優占している印象です。

9月以降非常に怖いのがキイロスズメバチで人的被害も増えますが、真夏の樹液においては他の種と変わらない印象です。

コガタスズメバチ


コガタスズメバチも平地でよく目にするスズメバチです。

大きさが様々で、小さいと1cm程度。大きいとオオスズメバチぐらいあるものもいます。初夏にとっくり状の特有の巣を作るので見つけやすく、葉の間や屋根下など営巣場所も幅広いです。

山地~平地で最もよく目にするスズメバチの仲間はコガタスズメバチを疑えば良い。というくらいにはよく目にします。

モンスズメバチ


夜はスズメバチいないよね~と安心してはいけません。

小型で背中の模様がお尻側に食い込むモンスズメバチは夜も行動することができます。

昼ほどは見かけませんが、うっかり意識せず遭遇すると危険です。

特に夜間に採集をする人はこのモンスズメバチに一番嫌な思い出があるのではないかと思います。

ライトに突っ込んでくるモンスズメバチは下手なホラーよりも断然冷や汗を掻き、私もこのモンスズメバチが一番苦手です。

一方でモンスズメバチはセミ好きのハチとして面白い生態を持ちます。

スズメバチは昆虫を幅広く捕食しますが、面白いことにヒメはアシナガバチを、モンはセミを好んで食べる傾向があるんですね。

モンスズメバチお尻に波模様のような特有の紋があるスズメバチです。

ヒメスズメバチと並んで面白い種類なので、模様に注目してみてくださいね。

チャイロスズメバチ


非常に珍しいハチで、神奈川では絶滅危惧2B類に登録されている希少種です。

他のスズメバチの巣を攻撃して乗っ取るという面白い生態をしていますが、それゆえにスズメバチ層が豊かでないと姿を見ることができません。

故に見つけられることは非常に稀で、私も写真として収められたのは今年が初めてです。

嬉しいことに近年では増加傾向だそうです。

チャイロの名に相応しいユニークな色合いをしているので、見かけた際にはぜひ観察してみてください。攻撃性は高いと言われていますが、会えることが稀なので詳細は不明です。
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チャイロは絶滅危惧種なのでぜひ知ってほしく記事があります。

あとはクロスズメバチがいます。今後更新予定です。

昆虫採集におけるスズメバチ対策


樹液の昆虫採集におけるスズメバチ対策は非常にシンプルで、木にいきなり近づかないということです。

スズメバチは早朝に日が上がり始めた段階から日没まで活動します。(モンスズメバチは夜も樹液に来る)

そのため採集者側が「木にスズメバチがいるだろう」という警戒を持つことが重要です。

良い樹液やその香りを発見すると猪突猛進でその木に突撃する方がいますが、これはハチたちに対して刺激的すぎます。

まずは遠目から木の様子を眺めることを徹底しましょう。

初夏に樹液に来ているスズメバチは食事のために来ているので、経験上こちらにあまり関心を持っていません。

よくスズメバチ類毎の危険性が語られていますが、樹液に来ているものに関しては大差がないように感じます。

網でつついたり、飛んできたときに手で払うなどの攻撃に取られてしまうような行為をしない限り攻撃される事は長い採集経験上でもありません。

ただし8月下旬以降になると様子が変わってきます。

この時期からは夜間でもスズメバチ類全般を見るようになりました。
この時期は気も立ってくる時期なので、一層ライトの照射と樹液にいきなり近づかないことを徹底しましょう。
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経験上おにやんま君は手軽に効果を感じられます。オススメです。

野外におけるスズメバチ対策

夏場にスズメバチがよく来る植物があります。

夏場そこら中で見られるつる植物にヤブガラシというものがあります。この植物の花はとても良くスズメバチ類を呼び寄せます。

葉が掌状でつる植物、見分けも簡単ですからスズメバチが苦手な方はこの植物を除去しておくと良いと思います。

このヤブガラシにはスズメバチの餌ともなるセスジスズメという黒い幼虫も付きます。こちらも夏によく現れるので、参考にしてください。

スズメバチ類はよく飛びます。人間に対して何だこれは?と近づいてきて様子を見たり、汗によってきたり、勢い余って人にぶつかってしまったりすることがあります。

中でも怖いのが服の中に入ってしまうことです。

ぶつかったり服に入るなどの彼らがパニックになる状況は、攻撃に繋がってしまいます。なるべく長そで長ズボンを利用して密閉しておきましょう。

こうした様々な点に気をつけておけば刺されることなくうまく彼らと付き合うことができるはずです。

我々がスズメバチの生息環境にお邪魔しているという気持ちで観察してあげましょう。