蓼食う虫も好き好き

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昆虫採集の服装や注意点、道具セットや長竿捕虫網のおすすめなど基礎情報を紹介(初心者向け)

大人で始める昆虫採集

大人になってから自然の中で虫取りをすると、その戦略性から夢中になる方は多いと思います。

また、そこまで興味はなくとも親子で虫取りを楽しみたいというケースも出てくると思います。

今回の記事ではあまり教えてくれない虫取りの基本~成果を上げるまでの一通りのプロセスを説明していきたいと思います。

昆虫採集の基盤として利用していただければと思います。


事前準備編

昆虫採集において、現場であれがないコレがないというのは避けるべきです。用意すべきものとその理由についてお伝えします。

服は長袖長ズボン

昆虫採集の際には行く場所の環境をまず考慮します。

しかしイレギュラーは発生するので、長袖長ズボンの形を取り、現地で調整するのが基本です。

少なくとも長ズボンは履いたほうがいいです。

アウトドアシーンにおいて安全性の確保というのは最優先事項です。

野外にいけばあなたはその環境に入った動物の1匹に過ぎません。

野外での厄介な害虫としてはマダニ、ツツガムシ、ヤマビル、ハチ類、アブ類、マムシなどが挙げられます。

どれも厄介ですが、身近にいるという点から見るとマダニツツガムシ類、ハチ類、マムシが特に厄介です。

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昆虫には一応おにやんま君などもおすすめです。

マダニ対策


マダニ対策の基本は長袖長ズボンで肌を出さないということになります。

動物が生息している草がある環境ならば必ずいるという気持ちで備えておくのが賢明です。

具体的には河川敷の草地や山地の草地などはよく被害が出る環境です。

ズボンは化学繊維のものがオススメです。彼らが取り付きにくいということが自己検証の結果わかっています。
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ハチ類対策

アウトドアにてハチに遭遇するのは必然です。しかし防御策を理解していれば基本は大丈夫です。

基本的にハチ類は巣に近づかなければ問題有りません。

なので営巣環境を理解することとハチ類を刺激するような香水などを身にまとわないことを意識しておけば大丈夫です。(女性は特に注意)

また、甲虫採集の際に多いのですが、網でハチを攻撃したり、木に急に接近するなどを避ければ問題有りません。

厄介なのはスズメバチよりもアシナガバチの方で、巣を葉の裏などに作ることから事故に繋がりやすいです。

彼らは基本おとなしいです。
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マムシ対策

決定的な対策はありません。山地や草地、河川敷など湿度のある土に入る際には常にマムシがいるかも知れないという気持ちでいることが重要です。

夜間でも活動するため、足元に常に意識を持つなどの自信の意識で回避します。足元を照らせるフラッシュライトの所持がおすすめです。


捕虫網

捕虫網は成果に直結する最優先のツールです。

大人の昆虫採集ならむし社や志賀昆虫などの専門店の物を利用するのがいいでしょう。親子でもそれなりの網を利用するのがおすすめです。

安い網はボロい上に正しい道具の使い方も学べず、採集方法も網を振るだけになってしまいます。

専門店の一式セットの購入


私も最初はこちらを購入しました。

志賀昆虫さんの捕虫網です。柄、網枠、網がセットになっています。

一般的な100均の網は口径が30cmと小さく、何よりも底の長さが短いので虫の上から被せることしかできません。

しかし専門の網は口径36cm~60cmまで販売されており、セットならば適切なパーツを選ぶという面倒な点も無視できます。

口径と長さが十分あるので網を地面につけること無く正しい網の利用を学べる他、振る以外の採集方法も楽しめ、採集がより楽しくなります。

これは他の網では換えが効きません。 

大きく見えますが折りたたみ収納ができるため、移動時には口径10cm程度まで縮むのも助かります。

長竿改良網


長い目で昆虫採集を楽しみそうな場合には釣り用具のたも網(釣り上げた魚を引き上げる網)と捕虫網の網部分を購入して専用のネジで取り付ける方法がおすすめです。

採集を続けていくと必ず長い網が欲しくなります。

この網の要点は玉の柄、つなぐネジ、お好みの網(布と枠)の3点です。柄のネジ取り付け口の口径に制限があり、合うものを探すのが面倒です。

界隈で人気なのは剛剣という柄で、私もコレを利用しています。

何が楽かと言うと先人が利用して情報が出ているので組み立てを間違えないという点です。カーボン60%配合で軽くてしなるいい柄だと思います。

網についてですが、柄と網をつなぐネジが志賀昆虫金属四つ折り式に適応しているので、枠は志賀昆虫金属四つ折り式を選ぶのがおすすめです。網と枠はサイズを合わせましょう。

柄が金属で固く、ハードな使い方をしても壊れません。前述の通りこの枠は10cm程度に畳めるのも便利です。

捕虫網に関して絶対に理解していただきたいのは、金属製なので電線に触れると感電するということです。
感電は死にます。

大人なら分かると思いますが、子供に長竿網は感電の問題からあまりおすすめしません。
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網については自作網の作り方に関する記事もあります。これ一本で取れる幅が莫大となるので、虫好きならばおすすめです。
(現在オスオスネジが在庫切れのようです。)

捕虫網の使い方

しっかりとした網でできる採集方法とどんな虫が取れるのかという点を説明していきます。

ルッキング

採集の基本です。

目でじっくりと探し、見かけた虫を網で捕獲する採集方法です。空中で網の後ろを折ることで脱出できなくさせられます。

スウィーピング


主に葉と花のスウィーピングが有り、葉ではタマムシやゾウムシなど、花ではカミキリムシなどを狙う場合が多いです。

その性質から口径が大きいほど有利です。網を葉先や花に突っ込んでガサガサと揺らし、落ちた昆虫を捕らえます。

長竿を使いたい理由が高い所の葉や花を掬いたいからです。長ければ長いほど掬える範囲が増えて成果に直結します。

ビーティング


網を下において木々を叩きます。小型の虫が落下する性質を利用した採集方法で、甲虫類全般に幅広く利用できます。
私はあまりやりません。

上記3種の採集方法がしっかりとした網を利用することで可能になります。選択肢が大幅に増え、採集の楽しみや取れる相手が格段に増えます。

虫かご

かごという物はあまり使いません。

カブクワなどであれば喧嘩する都合上、100均で売っているルアーケースがおすすめです。

それ以外の虫はミニジップロックがオススメです。

虫毎に喧嘩させずに保存できるので、それらをタッパーに束ねるのが良いでしょう。

蝶の場合には持ち帰り標本にする場合三角紙という専用の道具があります。

フラッシュライト

夜間の採集における必須アイテムです。侮られがちですが、採集の成果に直結する道具です。

安全面の確保にも大きく貢献する道具であり、マムシやスズメバチ類を発見し、夜間採集の精神的な面での安心にも大きく貢献します。

親子での採集なら安全面から、大人の採集ならば安全と長期滞在の観点からそれなりの性能のものを1本持っておくのをおすすめします。

具体的には防水性耐衝撃性が欲しいです。防水性がネックで、せっかくならolightの良いライトをおすすめします。アウトドアや防災向きです。
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オススメライトもあるので興味があればぜひ。よく使う者たちのレビューです。

生態を理解する

昆虫採集の最も楽しい部分です。

生態を理解した上で採集を続けると、自然との知恵比べを楽しめます。

0ベースから仮説を経て成果を上げるというPDCAサイクルなので、意外と様々なところで応用が聞きます。

ここでは私の過去の成果を例に、どのように成果を上げるプロセスを踏んだかという点を説明していきます。

クワガタの例

高尾山におけるミヤマクワガタ採集を目的に紹介します。

採集地は有名産地である高尾を設定しました。アクセスが良くソロで行っても比較的安全だからです。

ミヤマクワガタは6月中旬ごろから姿が見られ始め、7月中旬頃にピークを迎えるクワガタです。

灯火飛来性が強く、特に発生初期の飛来性が強いことから7月上中旬に集中的に外灯採集を行いました。

発生後期は灯火に来る個体数が減るという仮説を立てて樹液に切り替え、9匹捕まえられたこともあります。

その後2次発生というお盆頃からポツポツ始まる発生初期個体を狙って外灯採集を行い成果を挙げられました。

このようにその虫の生態を理解し、現地ならではの情報を盛り込んで行くと成果を上げやすいです。


蝶の例

神奈川の藤野町にのみ生息しているというギフチョウをそれ以外の場所で見つけるという目標を設定しました。

ギフチョウの食草はカンアオイという植物であることから、近隣山地のカンアオイ類の分布を把握し、幼虫が残す食痕などを調査しました。
過去の記録を見ることで、生息に適していた場所であったのかどうかを仮説立てしました。

ギフチョウはツツジ類を吸蜜し、丘になっている環境に現れやすい点や杉林などの多少開けた林床に飛来する性質を把握しました。

それらの情報から場所に当たりをつけ、調査した所県西部にてギフチョウの発見に成功しました。

蝶類は局所的に出現するものも多く、食草と環境を理解すれば遭遇率がぐっと高くなります。

カミキリの例


高尾の人気カミキリ、ヨコヤマヒゲナガカミキリを捕まえることを目標にしました。

食草はイヌブナで、♀は夕暮れ時に産卵のために幹に降りてくるという性質を理解しました。

♂は外灯に飛来する傾向が強いことを把握しました。

採集方法はイヌブナ林に面した外灯での採集を選択し、現地に10度足を運ぶも成果が上がりませんでした。

そのため♀狙いの夕暮れ時~夜間のイヌブナルッキングに切り替えた所同日に3匹出会えました。

まさにwebなどから情報収集をし、現地での調査から得られた情報から修正を加えて生態に合わせた結果成果を挙げられた事例です。

採集とは試行錯誤を楽しむものである


昆虫採集はその場に行って適当に見かけた虫を捕まえるものと思われがちです。

しかし上記の例のように生態を把握して試行錯誤しながら捕まえるということを始めると、一気に面白さが増します。

この仮説がハマって成果を挙げられた瞬間の満足感は日常生活において変わりが効かなく、とても楽しいものです。

昆虫採集は安全の確保さえ出来ていれば失敗は有りません。今回の情報を元に自分なりに思考を重ねてぜひお目当ての虫を探してみてください。ここから虫の基礎を学べばあとは成果を上げるのみですよ!

便利アイテム紹介

草地のマダニや、山地のヤマビル、ブヨやアブなどあらゆる害虫に有効なディートを通常のサラテクトより3倍(10%→30%)含んでいます。化学繊維以外の服であれば是非とも使用したい便利道具です。害虫対策は最優先で取り組みましょう。

蚊やメマトイが多い時期にはとても便利です。視野がやや見えにくくなるデメリットこそありますが、雑木林などで凄まじいメマトイの防除に大きく役立ちます。目に入ると感染症などのリスクも有るため、オススメ。帽子に取り付けるものです。

屋外活動ではUV対策も重要です。プッシュ式で使いやすいので、汗で流れても塗り直しやすいのが◯。
最近の日差しは火傷のように強烈なものになりやすいので、しっかり対策しましょう。

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高尾山ミヤマクワガタ採集編です。読み進めていくと夜間のミヤマを始めとする昆虫の性質が理解できます。
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クワガタ全般はこちらがおすすめです。地域によるクワガタの出現の理解に役立ちます。
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いい網を選んだならばカミキリ採集をしましょう。長竿網を抜群に活かせる楽しい採集ができます。カミキリ全般の採集に関する基礎を紹介!大人も夢中になる戦略性の高さを見てください。

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特にお目当てがいない方は虫の生態記事を読んで面白そうな虫などを探すのも手です。