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神奈川県西部でのギフチョウの発見。石砂山(藤野町)以外にも細々と生息している可能性あり。

神奈川のギフチョウ

今年の話ではありませんが、ギフチョウ唯一の山地であるとされる石砂山以外の場所(藤野町以外)にてギフチョウを発見することができました。

神奈川県においてギフチョウは石砂山において観察できるものとされており、それ以外の情報はweb上ではあまりありません。


ギフチョウの食草であるカンアオイ類は神奈川においてはカントウカンアオイとランヨウアオイが見られますが、丹沢のふもとを始め、付近の山でもそれなりの数を見ることができます。

神奈川県レッドデータによればギフチョウはかつては丹沢エリアにも生息していた記述があり、実際丹沢周辺エリアでは食草のランヨウアオイが多いことからいる可能性にかけて探してみたところ、発見することに成功しました。

石砂山からだいぶ離れたエリアでの遭遇

こちらが遭遇できたギフチョウです。よくあるナミアゲハなどとの勘違いではありません。

似ているといえばまあ似ている?

蝶の出現には食草が必ず絡んでおり、ランヨウアオイの密度が高い県西部地域であれば細々と生息しているのではないかと睨んでいました。

この個体が放虫ではないという検証はできませんし、再捕獲にも至っておらず、結局のところ偶発的なものの可能性はあります。

しかし周辺地域での発見報告は聞いたりしています。


神奈川においてギフチョウは石砂山で見るものという風潮ができていると思います。

そのことがそれ以外の場所にもいるかもしれないという可能性を潰してしまっているように感じます。

確かに絶滅危惧種1B類の昆虫に遭遇するというのは簡単なことではありません。

また、神奈川のレッドデータは2006年のものなので事情も大きく変わっています。

そんな中で出会える保障というのはないのですが、だからこそ出会えたこの1匹には格別の思い入れがあります。

何より自身で産地を開拓したというのが嬉しいのです。

県の論文でのギフチョウの記録は1990年代を最後に途絶えており、情報もwebベースでは僅かにしか出てこないことから貴重な一例になるのではないかと思います。



ご存じの通り藤野町では天然記念物であり、採取は禁じられています。

しかしここは藤野町どころか緑区ですらないため、捕獲するのは問題ありません。

過去の話なので写真は数枚しかありませんが、この時の感動は今も覚えています。こちらのギフチョウは貴重なサンプルとして博物館に寄贈してあります。

ギフチョウについて


ギフチョウは日本固有のアゲハチョウの仲間で一年の内春の3月~4月に出現します。

南関東では石砂山周辺だけが産地であり、生息地の東端であると言われています。

食草はカンアオイ類で地表付近に生えることから薮化すると姿を消してしまい、ギフチョウ自身も適度に間伐された開放空間のある林床環境で見られます。

利用する植物は同じような環境に生えるカタクリや、同時期に咲くミツバツツジが代表的です。



ギフチョウの衰退と要因


さてなぜ今更ギフチョウの話かというと丹沢のシカ類の増加に伴ってギフチョウの食草であるカンアオイの仲間が食べられ始めているからです。

カンアオイの仲間はシカ不嗜好性の植物ということで冬場でも残っていることが多いのですが、シカに食べられるケースをここ最近目にし始めました。

実際植栽のアジサイやミツマタ、ツツジなどの毒があって食べられないとされている植物もこのあたりの地域では食べられるようになっており、食害が激化してきています。

該当地域ではランヨウアオイが比較的多く見られますが、カンアオイの仲間は種子散布の関係上移動がほとんどできません。

そのため、シカなどの食害には非常に弱い植物です。

石砂山でもカンアオイ類の食害が始まっているという話を耳にしたので、貴重なギフチョウが一気に衰退する可能性があります。



神奈川でギフチョウ=石砂山というのが共通認識ですが、今回それ以外の離れた場所で1個体の♀を得られ、しかも産卵もしていました。

このことから察するに細々と県西部でギフチョウが生息しているのではないかと思うのです。

県西部は石砂山を起点に彼らの利用するヒルトップ(丘や尾根)環境が点在しており、風に流されたりして漂着してもカンアオイ類が十分にあると想定できます。

ただこれはカンアオイがシカに食べられなければという前提条件のもとに成り立ちます。

ギフチョウに興味のある方は春に調査がてら登って様子を見てみてはいかがでしょうか?




正直なところ春以降の県西部はヒルとマダニで地獄のような環境になります。

この時期にわざわざ石砂山以外でギフチョウを探すもの好きは相当変な人か熱意のある人しかいないと思いますが、神奈川県産のギフチョウというロマンに出会える可能性はまだありそうです。

環境について


ギフチョウは適度に間伐された雑木林の下層に現れるカタクリや、ツツジ類などの及蜜に訪れます。

環境としては適度に間伐されたスギ林環境にも見られ、今回は杉林林床にて見られました。時間は晴れた日の午前11時ごろで、日時は4月頭とシーズン終盤に入る頃でした。

場所は事前に下見をしていた場所で、尾根や丘を利用するギフチョウの生態に合わせて、山頂付近からちょっとズレた日のさす林道の林床でした。

実は現地では目視での発見情報があり、下見には力を入れていました。

カンアオイ類に幼虫らしき形の食痕を見たり、ナメクジだったりしましたが、当たりをつけた場所で成果をあげられたので私のギフチョウセンサーは間違っていなかったようです。

まとめ


神奈川西部(石砂山)以外の場所でギフチョウに遭遇でき、細々と生息している可能性があります。

しかし食草のカンアオイ類のシカ食害による減少により、急速に生息可能環境が無くなる可能性があるため、興味のある方はぜひ情報収集していただきたいところです。
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