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タマゴタケの味は美味しい? 赤いキノコの探し方と生える環境について

魅惑のキノコ、タマゴタケ

おもちゃのようなキノコ。赤い特有のきのこは類似も少なく分かりやすい食材。

自然の食材に興味を向けるとまず話題に挙がるのはタマゴタケではないでしょうか?

このキノコ、キノコでありながら毒キノコとの見分けがしやすい、探しやすい、味が良いと入門にうってつけのキノコです。加えて味も絶品のおススメキノコです。

タマゴタケは発見に少々コツが必要です。発見に役立つ情報をお伝えします。
(キノコの仲間なので、今回の記事を鵜呑みにせず、図鑑などしっかりとした情報ソースも確認することをオススメします。)

タマゴタケとは?

仲良く生えていることも多いキノコ

タマゴタケは猛毒キノコの数多くが所属するテングタケの仲間の中で食べることができる変わったキノコです。

赤い積み木のおもちゃの様な特有のツヤ感を持った傘と、幼菌の際に地際から出てくるときに卵の殻を被った様なユニークな姿をしていることから間違えることが無く採集できる優秀なキノコです。

タマゴタケはクヌギやコナラを始めとする薪炭林的な環境に出現するキノコです。

なじみ深いシイタケが枯れた木々を分解する木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)であるのに対し、タマゴタケは地中で樹木の根と共生しているとされる菌類です。(共生菌)

共生菌なので木からは生えない

特にタマゴタケは自身の菌糸にマメ科植物と同様に菌根菌を共生させることが知られているキノコで、このキノコの出現には地中を介した複雑な要因が絡み合っています。

しかし薪炭林的な環境の名残はあらゆる雑木林に存在しているため、シイタケなどに比べるとより遭遇しやすいキノコであると私的には考えます。

タマゴタケの味について

私自身はタマゴタケを数えられる程度ですが自身で採取して食べています。キノコに関して気になるのは味と毒性ですよね。

採取したタマゴタケの虫除去中の一枚

このキノコはかなり美味しいです。

タマゴタケに触れてみればわかるのですが、このキノコはかなり崩れやすいです。

そのため、食べる前の食感のイメージは柔らかいものを想像しがちです。例えば似たシイタケとか思い浮かべますよね。

このキノコは繊維感がかなり強いキノコで、シャクシャク感がかなり強いキノコです。縦方向への抵抗性がかなり弱く、噛むと心地いいです。

タマゴタケのホイル焼き。シンプルなのにとても味が濃い。

うま味はかなり強烈です。

タマゴタケを炭火で焼いてみれば傘には汗をかいたかのようにうま味成分がにじみ出てきます。

このまま炭火で焼くだけでごちそう。かなり特有の質感。

バーベキューで開いた貝に醤油をたらし、食べるかのように、ひっくり返して傘に出汁を貯めてこぼれないうちにほおばるのが非常に贅沢な食べ方です。

出汁の質はキノコらしい動物質を感じさせるうま味で、過去やったものではクリームリゾットが良かったですね。

タマゴタケのリゾット風。キノコの色で色が黄色くなる!

タマゴタケは見ての通り赤や黄色の色合いをしているのですが、変なものを入れなくともこの色が料理につきます。黄色いクリーム系の料理となれば色味に違和感もなく楽しめますね。

このキノコのいい点は、傘の部分と柄の部分でそれぞれ可食部位が多いことです。

傘のとぅるとぅる感が溶けるようでうまい。

エリンギやエノキタケなら茎を食べているようなものですしシイタケは傘の部分の割合が大きいですよね。これらのキノコは触感が単一化しがちなのが欠点だと思います。

一方でタマゴタケは傘は大きく柄も長いと2つの食感を楽しむことができます。これはアドバンテージだと思いますね。

私的には量が取れたならば七輪で焼いてみてほしいキノコです。下手なことはせずに塩や醤油で素材をそのまま生かすのがベストだと感じます。

タマゴタケを探すうえで重要なこと

タマゴタケを探すうえで重要な要素としては環境、時期、雨の後の3要素が大きいと思います。

環境

このうち環境面は特に重要です。

キーとなるクヌギの木。あらゆる雑木林にあるタマゴタケのお友達。

共生菌であるタマゴタケの出現には雑木林の特定樹種の存在が不可欠です。

私の観察上はコナラとクヌギを中心とした雑木林で目にするという印象でした。

これに関してタマゴタケの菌根形成を行った研究があり、その報告の中でタマゴタケがコナラ属の樹種と菌根形成を行うことが指摘されていました。

やはりコナラを中心とした環境はマストであると考えられますね。

コナラを中心とした雑木林といえば正直なところどこの雑木林でもそうです。逆に言えば他の要件さえそろえばちょっとした雑木林でも目にすることができると言えます。

時期

時期についてはおよそ6月~9月頃まで目にすることができます。

私の採集は9月が多い。環境により時期も違う可能性が高い。

私見では6月の出現はかなり少なめという印象ですが、梅雨の最中など雨が連続し、その後蒸すと出ていることがあるようです。

私の観察地域では8月下旬~9月中旬ごろ、秋に入り雨が増えて蒸したタイミングで出ていることが多いようです。

ここは地域により変化する可能性が高いと考えられますが、雨の後に蒸すというのがトリガーになっているように感じます。

共生菌であるためか条件が整えば集中的に目にすることが可能です。

この点は嬉しいですね。

雨の後

タマゴタケはシイタケ以上に採集タイミングがシビアなキノコです。

雨後のタマゴタケ。今回の写真の通り地面の湿り気はかなり強い。

このキノコは成長速度が非常に速く、高温多湿な環境に出現する影響からか朽ちるのも速いです。

身近な可食キノコの中では群を抜いて成長速度が速いです。特有の卵の殻の姿から傘の展開までは1日ほどで進んでしまいます。


そのため、雨の後1~2日程度を目安に探してみるのがおすすめです。

雨の直後である場合地面がずぶぬれである場合が多いです。

スリップには十分注意して探しましょう。

タマゴタケの出現環境

タマゴタケですが私の過去の発見事例から推測していくとまず雑木林環境です。

コナラクヌギがあり、雨後に蒸すように気温が上がった位地面に生える。

前述の通りコナラ属の樹木との共生菌ですから共生先の木々は不可欠です。

生える場所なのですが薄暗い場所ばかりです。

具体的には昼間に林床に日が差し込まない程度の暗さの場所で目にすることが多いように感じます。

町田市の事例。キタマゴタケだが似た場所に生えていた。

高尾での例は日が差さず、落ち葉もはけたやや裸地的な環境で、コナラの近くでした。

別の場所ではやはりコナラの近くでササなどがうっそうとして日を遮っているエリアの縁やササたちの中でしたし、茨城の方では林床がかなり暗く低木も生えていないような開けた環境に大量に出現していました。

茨城の例。雑木林の縁にいた。

webでタマゴタケを検索し片っ端からその出現環境の雰囲気を見てみるとやはり暗い雰囲気の場所が多いように感じます。

植物でいえばヤブツバキが生えるようなかなり薄暗い場所でも目にしたことがあります。そうした場所では傘の赤色が不気味なくらい目立って見えるので暗めな場所を探してみてください。


タマゴタケは栽培できないキノコ

見た目がかわいい、おいしい、環境も分かりやすいとよさげなキノコに見えるタマゴタケですが、なんと栽培できません。

こんなに素晴らしい味なのに取らないと食べられないのはもったいない。

なので味わいたい場合には自身の力で採集する必要があります。

この違いは菌の種類に由来するもので、シイタケやマイタケなどが木材を分解して栄養を得るキノコであるのに対してタマゴタケはそうした植物由来の糖を獲得する手段として樹種の根と共生しているのです。

似た例で春のアミガサタケは共生菌で栽培が確立されていない

マメ科樹木にくっつく菌根菌が近いでしょうか? こうした菌の性質の違いで培養のしやすさが違うというのも面白いですよね。


幸いにも採集の際に厄介となる似た毒キノコはベニテングタケ位のものです。

毒キノコとの見分け方

タマゴタケは見分けポイントがはっきりしているキノコですが、類似種との判別間違いは命にかかわります。

ベニテングタケの劣化した個体が似ているとされる。私自身ベニテングに出会えていないので写真がない。

類似種ではベニテングダケとタマゴテングタケモドキが挙げられると思います。

これに関しては参考になる写真を持っていないので写真を上げている別の記事に目を通し、自身で判別すべき点を理解できるようになってから必ず採取してください。

ベニテングは特有の赤い傘の白い点が成長とともに落ちることがあり、特に間違える可能性が高いです。キノコは成長段階で姿が若干変わるということを覚えておきましょう。

黄色いタマゴタケはタマゴテングタケモドキという猛毒がいるので、取らないように。

逆にタマゴタケの特徴としては柄が黄色く傘が赤い、柄に特有のモザイク状の模様があり、幼菌には明確に卵の殻があります。

卵の殻のような物がついているのも分かりやすいポイント。

傘は放射状に割けています。

タマゴタケの菌根接種によるコナラ属およびモミ属実生との菌根形成
遠藤直樹・山田明義(信大農)


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