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可愛いヤママユガに毒性はある?繭はどんな姿? 10cmもの大きさになる巨大蛾の魅力と生態を紹介!

可愛くて人気のヤママユガ

真夏の終わり頃から出現し始める手のひらほどの巨大な黄色い蛾がいます。

国語の授業で懐かしいエーミールの話にも出てくるヤママユガという人気の高い昆虫です。

今回は夏~晩夏に現れるヤママユガの生態的な特性や文化的な歴史とともにその魅力を紹介していきます。

蛾の見方が変わるかもしれませんよ。

ヤママユガとは?


ヤママユガはヤママユガ科に所属する巨大な昆虫です。

翅を広げた全長は15cm定規と同じぐらいあり、虫が苦手な人には恐ろしいほど嫌われています。
(札幌のヤママユガ科の大量発生など)

一方で虫好きからは憧れの虫であり、ヤママユガをコレクションにしている方も多いくらい人気高い種類です。

類似種も大型で、オオミズアオ、クスサン、ヒメヤママユ、ウスタビガなどがいます。

それぞれ出現が1月程ズレており、うまく棲み分けをしている様に感じます。

生態的特性

ヤママユの仲間に見られる特徴を紹介していきます。

ヤママユは成虫になると食事を一切取りません。成虫時の寿命は僅か1週間ほどであり、限られた時間で子孫を残す活動をしなければなりません。

彼らに無駄なことをする時間はなく、その能力はどのようにして仲間に出会うかという点に優れています。

その1つが触覚です。

♂と♀でその形は大きく異なります。

具体的には♂は♀の発するフェロモンを感知するために櫛状の非常に大きな触覚をしています。

一方で♀は紐状の細長い触覚をしていますね。

こちらも細いので♀ですね。

前述の通り口は有りません。

♀は産卵することを目的にしているのでお腹が非常に大きく、個体によっては羽ばたいて浮き続けることができないほどに卵を抱えている場合もあります。

(丸々として可愛いです)

しかし飛べずとも移動は可能なので、雑木林で木の足元にさえたどり着ければ足で登って産卵することができます。

ヤママユの卵は非常に大きく、BB弾より小さいくらいのサイズ感です。

飛べないこともあってか幹に産み付けられていることもあります。

正の走光性


交尾のためには♂♀が出会わねばなりません。

フェロモンも使いますが、彼らは光を目印に集まることもできます。

昆虫には光に対して逃げる負の走光性と、向かっていく正の走光性があります。

蛾の多くは光に向かうことで出会いの場としているのです。

その最たる例が大量発生するマイマイガですね。
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外灯に卵塊を産み付けるため、コレを避けるためLED化されています。

蛾の仲間はフェロモンと走光性を利用して少ない寿命の中で命を繋いでいます。

威嚇の眼状紋

ヤママユの仲間は翅に目玉模様を持ちます。

彼らは大きくて非常に目立つので、身を守る術として蛇の目玉のような模様を持ちます。

これは鳥に効果があることが明らかになっており、ダーウィンの進化論の通り模様があることに意義があります。

特に後ろ翅の模様を隠すようにしており、威嚇の際に見せつけるように羽根を広げることがあります。

迫力があり、ヤママユ好きとしては威嚇されて嬉しい瞬間です。

食草や出現環境について

ヤママユはやや幅広い食性を持ちます。

私のエリアではコナラで目にする事が多く、雑木林環境があれば見られる可能性はあります。

天蚕として飼育されていた過去があり、それには人と関わりの深い里山環境に生えていたクヌギやコナラなどの樹木がエサとして利用できたからだと思われます。

イネを育てる谷戸的な環境や、燃料としての薪炭林が彼らの出現と関連していたのですが、化石燃料への移行に伴い姿を消しています。

私の住む神奈川に今でも残るクヌギコナラ林では、かつてヤママユの仲間が大発生した記録が残っています。

ヤママユと糸の歴史


糸といえば蚕がとにかく有名です。

栄養としての桑の実と、それを資源にして飼育ができる容易さで活用されていたのだと思います。

製紙工場も多く、かつての一大産業でしたよね。

一方でより上質な糸として使われていたのがこのヤママユの糸です。

繊維のダイアモンドと称されるほどのその糸は他の糸に混ぜることで耐久性を大きく向上させられることで重宝されていたのです。

蚕以外にもかつての我々の生活に貢献してくれていた虫がいたんですね。

この繭は冬場にコナラなどの木々を見ていくと見つけられますので、見かけたらそのきめ細かさを確かめてみてください。

ヤママユガに毒はあるのか?

蛾で気になるのは毒性ですよね。安心してください。ヤママユの仲間に毒のあるものはいません。

なので見かけた際には触れ合っても大丈夫です。

噛み付いたり、引っ掻いたりもしませんので、大きさが大丈夫であるならばかなりオススメの昆虫です。


ヤママユガはとにかく可愛い


この虫の魅力はコレにつきます。生きているぬいぐるみのようにとにかく愛嬌があります。

からだは丸っとしており、全身にはもこもことした毛が生えています。

大型なのでちょこまかと動き回ることもなく、虫の造形を見慣れている人には不快感の少ない昆虫です。

日本人的にはモスラで馴染みの深いフォルムでもありますよね。

触れた質感としては猫などに近く、撫でた感覚はハムスターなどのペットです。

手に乗せてみると体を震わす行動を取ります。

これは翅を見せつける威嚇であるとも捉えられますし、飛翔のために体を震わせて体温を上げているとの捉え方もあります。

バイブレーションのようで面白いのです。

まとめ


ヤママユガは昆虫界隈では人気がとても高い可愛らしい蛾です。

昔ながらの薪炭林的な環境と馴染みの深い昆虫で、その繭は糸として利用されるなど、人間生活とも関わりの深い昆虫です。

毒性などはないので触れ合ってみると、ヤママユガならではのぬいぐるみのような大きい姿を堪能することができます。
可愛い昆虫なので、気味が悪いなどの先入観を払って観察してみることをおすすめします。

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同じ仲間のクスサンです。秋に大量発生することが有り、今年は札幌で話題になりましたね。

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晩秋と冬のヤママユはウスタビガとヒメヤママユになります。大変かわいい蛾で、おすすめです。

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ヤママユガの理解には鳥の天敵であるヘビの理解が役立ちます。ヘビを理解すると目玉模様の様々な生き物の見方が変わり面白いですよ。