アオダイショウは最も普通の蛇
身近な蛇で最もよく名が上がるのは毒蛇のマムシやハブだと思います。
しかしよく見かけるという点で名が上がるのは今回のテーマであるアオダイショウでしょう。
家のお庭などにも現れる超身近な爬虫類であるアオダイショウ。
その生態は他のヘビと異なる点も多く面白いです。
今回はそんなアオダイショウの毒蛇擬態の戦略や生態系における役割などを紹介します。
アオダイショウとはどんな蛇?
アオダイショウは大きいものでは2m近くにもなる大型の蛇です。
ヘビの仲間には性格というものが有り、アオダイショウはこちらが手を加えると攻撃的なものが多いです。
何もしなければとても大人しい蛇で、観察するにはうってつけです。
生息環境がとても幅広く、庭のような茂み環境や樹木の上、水辺環境にも現れるなど様々なところで姿を見ることができます。
野外で見かける蛇の割合を表すとアオダイショウとシマヘビというメジャー種で7割近くを占めているというのが個人的な感想です。(環境によりもちろん割合は変わります)
どんな所にいるのか
基本的には大人しい蛇なので隠れ家があるような場所の近くで見つかります。
物をどかした際にその下にいたり、隙間から体をちょっとだけ出して様子をうかがっているなどのケースもありますが、最も遭遇の多いタイミングは日光浴をしている場面になると思います。
生息環境の幅が広いがゆえに探してみるとなかなか遭遇できなかったりします。
餌の問題から鳥類が営巣する低木類が多く、適度な日差しが差し込む環境で目にする機会が多いと感じますね。
樹上性の蛇
アオダイショウは木の上を好む蛇で、エサとなる鳥の雛を狙って低木類の植物や高木の樹木上で見かける機会も多いです。
同じような形をしているヘビの仲間もうまく生息環境を分けているようで、マムシやヒバカリ、ヤマカガシは水辺の隣接地点で見かける機会が多くなります。
アオダイショウやシマヘビ、ジムグリは深い森の林床などで目にする機会も多々ありますね。
生き物には生活圏があり、ヘビの仲間も1度目にした場所の付近では日が空いても再び目にする可能性が高くなります。
これはクワガタ類を樹液から採取した後にしばらくするとまた別のクワガタがやってくるのと似ています。
アオダイショウを目にする場所は彼らの生息に適した環境である可能性が非常に高いといえますよね。
ですから同一個体もいますし、もしかしたら別個体も心地よく生息しているのかもしれません。
食事について
アオダイショウは鳥の雛が大好きな蛇です。巣立ち前の雛はこうした侵略者にはなすすべもなく食べられてしまいます。
猛禽などの外敵に見つからないように茂みの中に小型の鳥は巣を作ることもありますが、真の敵はヘビ類でしょうね。
アオダイショウは木登りにとても長けており、ムササビなどの赤ちゃんを狙うこともあります。
ムササビ飼育箱などを設置したことのある方は想像しやすいと思いますが、あの巣はとても高い所に設置します。
滑空するムササビが十分な飛ぶ高さを確保できるためという点と天敵の蛇に襲われにくくするという点があります。ヘビ類は暗殺者のごとく忍び寄ってきます。
ヘビ側と鳥たちとの知恵比べが自然界では常に繰り広げられています。
アオダイショウには毒がある?
蛇で最も気になるのは毒があるのかという点ですよね。
結論を述べればアオダイショウに毒はありません。
しかし自然界でネズミや鳥の雛などを食べ、そうした生き物の血などを含んでいる口や牙に噛まれれば雑菌が入るというのは容易に想像できますよね。
毒はありませんが感染症などには十分注意が必要と言えます。
アオダイショウは性格の個体差がかなり激しく、逃げる臆病な子もいますが好戦的に噛み付いてくる子も結構います。
私は何度か噛まれても運良く大事にはなっていませんが、ハラハラします。
基本的に手で捕まえるのはリスクしかないのでやめておきましょう。
毒蛇のマムシに擬態する幼蛇
マムシというヘビがいます。身近な蛇で最も危ない蛇で、強力な毒を持つ蛇です。
アオダイショウはこれまでの写真のように青緑っぽい色をしているのですが、特に天敵の多い幼蛇時代には毒蛇となるマムシの姿を真似ています。
例えばスズメバチを想像してくださいと言われれば人はみな怖い感情を抱くと思います。
それと同じで自然界にいる多くの蛇の天敵もマムシのカラーリングを恐れているようなんですよね。
これは人間観察をすると分かりやすく、マムシがいましたという場合に見に行くとアオダイショウの幼蛇であるケースはそれなりにあります。
マムシがいたので処分しておきました(普通ならやめるべきですが)という話が来たので確認したらアオダイショウの幼蛇というケースもあります。
蛇や生き物に興味がない人が騙されてしまうくらいのマムシ感を出しており、正直私も目などを見ないと触れません。哺乳動物にはとても効果がありそうな擬態ですね。
それから捕まえたい場合のプロセスも一応紹介しておきます。
当然ですが蛇を痛めつけて捕まえるなどという行為はやめましょう。
大抵の場合お邪魔しているのは我々の方ですからね。
まず種類を見分けるところから入ります。
身近な蛇の見分けについて
身近な蛇で大型という前提のもと話を勧めます。幼蛇は前述の通りマムシの可能性があり、そんなリスクを取るものでは有りません。
ヘビの仲間は目と模様で判別が可能です。
目玉が丸ければマムシでは有りません。(マムシの目は流石に撮れないので写真はありません)
丸い目で黄色や赤色がなければ毒はありません。(派手な色はヤマカガシ)
この2点だけ覚えておけば本州エリアで毒にやられることは無くなります。
蛇を捕まえた場合には素手ではなく必ず棒状のものを用意します。
頭部を軽く押さえて逃げられないうちに頭を抑えてしまうというのが安定します。ただし掴んでビビっていたりすると抜けて噛まれるので、掴んだ際には抜けられない程度の力で持ちましょう。
アオダイショウは生態系における捕食者で、非常に重要な存在
最後にヘビの仲間が生態系でどんなことをしているのかという紹介です。
よく環境アセスなどの指標とされるサシバなどの貴重な猛禽類はヘビの仲間を利用します。
ヘビの仲間の生息には自身の隠れ家となる雑木林などの木々や低木などのブッシュが必要で、加えてネズミやうさぎ、トカゲ、カエル、鳥などの雛も必要です。
こうしたことを考えると蛇がいる環境がいかに様々な生き物に富む場所であるかというのが分かりますよね。
トカゲ、カエルの存在にはそれより下位の昆虫類の豊富さが不可欠です。
上位捕食者として下位の生物のバランス維持にも買っており、ネズミ類や鳥類の増加抑制にも貢献しています。
日本の環境保全では猛禽類ばかりが取り上げられがちですが、もっと下位の生き物たちにも目を向けて保護していくような視点も必要だと感じますね。自然の中では実に多様な生き物たちが複雑なつながりを持っていますからね。
まとめ
アオダイショウは身近な蛇です。
毒はありませんが幼蛇は毒蛇であるマムシに擬態しており、マムシと間違われているケースも度々見かけます。
これらヘビ類は非常にうまく生活圏をずらしており、観察したい場合にはどんな種類を見たいのか?という点からエサを特定し、環境を逆算するのがコツです。
アオダイショウは鳥の雛を狙う性質から低木類のある環境がおすすめです。
ヘビ類は様々な生き物が絡み合う食物連鎖の中間~上位に位置しており、その存在が場所の豊かさを教えてくれるありがたい生き物です。
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