人気の爬虫類、トカゲ。でも見つけられない!
春以降の人気生物としてトカゲ類が挙げられます。
身近な爬虫類としてなじみの深い生き物であったと思いますが、東京都では絶滅危惧1類に登録されるなど都市化の進む場所では衰退が激しい生き物です。
今回の記事では人気の青い尻尾を持つトカゲや、茶色のカナヘビがどんな場所に潜んでいるのか?場所が分かったらどうやって探せばいいのか?という視点を紹介します。生き物の持つ生態的な面から探してみましょう。
都市で目にするトカゲ類とは?
身近なトカゲ類には2種類います。しかし姿の印象は異なるため、今回はニホントカゲの子供と大人、それにカナヘビを合わせた3種類を紹介します。
ニホントカゲとは?
ニホントカゲは子供と大人で姿が大きく異なるトカゲです。
特に子供は黒い体に黄色の線と、メタリックな光沢をもつ青色が美しい姿からとても印象に残るトカゲです。
一方で大人は茶色一色という大変地味な色合いをしています。このことから2種は別の生き物であると認識している人も少なくありません。
大きさは成長段階により様々なのですが、大人のニホントカゲでは大人の手を広げた端から端位までの大きさがあります。結構大きいです。
その癖動きも素早く、人の目では追いきれないこともある敏捷さを持ちます。
食性は肉食性で、自然界では捕食者として昆虫類をたくさん食べています。
主に草地に現れることが多く、そうした環境にいるバッタ類やクモ類などの中心に食べています。
出現期は暖かい日の3月~10月頃まで比較的長い期間目にすることができます。
東京では絶滅危惧1類に登録され、一部地域での観察はかなり難しくなっていると思われます。
カナヘビとは?
カナヘビは場所にもよりますが私の観察地域ではトカゲよりも数が少ない生き物です。
ニホントカゲと異なり子供~大人まで大きな色の変化はありません。
出現期はやはり3月~10月ころまでで、草地や雑木林的な環境に良く出現します。
利用している生き物もニホントカゲと似ていると思われ、2種が一緒に見られるということも少なくありません。
体長はニホントカゲの大人より小さい位で、大人になればそれなりに大きくなります。動きに関してはカナヘビも速いのですが、トカゲよりもどういう訳か捕まえやすい印象があります。
トカゲがいる場所について
春以降になればトカゲを探す絶好のタイミングになります。
しかしより効率的に探すうえで抑えておきたいポイントがいくつかあるので、理解しておきましょう。
探す日の天候
天候はトカゲ類を探していくうえで最も重要な要素です。
一定の体温が維持される我々哺乳類と異なり、トカゲを始めとする爬虫類は変温動物というカテゴリーの生き物です。
これはつまり体温が周囲の環境に合わせて変化してしまうというものです。
そのため活動する前には太陽の光を浴びて体温を上げなければなりません。
こうした生態からまずは出現環境を想像してみましょう。
太陽の光を浴びるためには草丈の少ない開けた環境に行くのが最も効率的ですよね。そうした生態系の先輩としては植物が例として挙げられます。
実は植物たちは限られた範囲で太陽光の取り合いをしています。つまり茂りの激しい所というのは太陽光が地面まで届いておらず、薄い所はより効率的に地面まで光が届いています。
トカゲたちは前述の通り昆虫類を主食としていますので、草地などがあればそれらが開けている場所(ギャップ)を見てみれば日光浴をしている可能性は高いでしょう。
自然度の高い場所ではトカゲたちは環境条件の変化している場所(ギャップ)によく現れます。
しかし都市化の進む神奈川や東京などの自然では管理されすぎていることからそうした環境を見つけ出すのは簡単ではありません。
ではトカゲたちはどうやってそのギャップを見つけているのでしょうか? ここでも生態的な視点が役に立ちます。
都市部のトカゲがいる所
コンクリートジャングルと化している都市部においてもトカゲ類は十分見つけることができます。(新宿のビル街など緑が無い場所を除く)
ポイントはやはり変温動物であることと、食物資源があること、そして彼らが臆病な性格であることを利用します。
これら3つのポイントを押さえているのがコンクリートと草地から生まれるギャップですね。
実はコンクリートというのは爬虫類が最もよく出現するポイントと言えます。なぜだと思いますか?
真夏のコンクリートを想像してみてください。暑すぎて目玉焼きができそうなくらいの温度ですよね。
つまり上からも太陽光、下からは暖められた熱気ということでコンクリート上はトカゲ類が出現する一大スポットなのです。
では新宿や渋谷の街中にいるか?と聞かれれば答えはNOです。
その他の要因である餌資源と、隠れる環境が足りていません。
例えば川沿い、例えば公園の遊歩道沿いなどなどそうした環境ではコンクリートの通路と隣接して草地がありますよね。
コンクリで体温を上げ、草地にすぐ逃げ込める。そして隠れ場所で餌資源を確保することができますね。これこそまさに都市部でトカゲを見る絶好のスポットです。
また、都市部におけるニホントカゲの出現を調査した研究においては庭の有るような連続した住宅地に生息しているとの話が上がっています。
トカゲは孤立した自然環境では少なく、緑が隣接し続けるような環境があることで出現の可能性が上がると見ることができそうです。
トカゲを庭で見たという方は多いと思います。庭の環境というのは芝生があったり畑地があったりして餌場と隠れ場所に富みます。
加えて人が歩く場所や庭の何かを囲うような形でレンガを始めとする熱を貯める物質が置かれやすいですよね。
そして近隣にも植え込みやちょっとした緑のある環境が続いていれば彼らのいる条件が整います。
こうしたことから庭や畑があるならばそこもよく見られるポイントになるのです。
それ以外にこうした環境で目にする理由としては太陽光を浴びることでビタミンを生成するなどの効果もあります。
ヤモリなどで顕著なのですが、太陽光を十分に浴びれないとビタミンDの不足によりクル病という骨が柔らかくなる病気になってしまいます。そうした事態を避けるためにも日光浴が必要なので彼らは暖かい場所でボーっと暖を取っているんですね。ストーブやコタツにいる我々のようなものです。
トカゲを例としてよくいる場所を紹介しました。
生態的な観点から生き物を探していくというのはトカゲに限らずあらゆる生き物の探し方に共通するものです。
例えばヘビを探したいならば同じ爬虫類の仲間として変温動物や、臆病な性格が共通します。
餌資源が異なっており、アオダイショウならば鳥の雛が好きなことから低木が多い環境だとか、ヤマカガシならカエルが好きなことから水辺の近くのそうした環境など、トカゲで基本を押さえておけばあらゆるものに応用が利く探し方です。ぜひ覚えておいてください。
季節的な出現傾向について
自然の中で活動をしているとその生き物にはよく見かけるタイミングがあると感じます。
カナヘビは私の地域では少ないので語れませんが、ニホントカゲに関しては夏頃の出現がかなり高いと感じます。
これに関して前述の研究において2種の季節ごとの出現傾向が語られているのですが、ニホントカゲは7月上旬~9月まで個体数が他より多く、カナヘビにおいては6月上旬と9月上旬にピークがあると指摘されていました。
個人的な発見の体感とも一致する結果です。もちろんそれ以外の時期にも十分目にすることは可能ですが、データとして多い可能性がある以上出会うのに苦労している方などは参考にしてみてください。
私見を述べると時期よりも環境の方が重要だと思います。
探し方について
トカゲがいる場所を理解したならば次は探し方を知りましょう。
場所が分かるだけでも遭遇の可能性は上がります。しかし探し方を把握すればさらにその可能性を高められますよね。
まず自然下のトカゲには日光浴をして動かない場合と餌を探して動いているときに目にする場合の2択が多いです。
日光浴をしている個体は止まっているので音を出しません。
そのため、トカゲがいそうな環境を前述の3つの要素(変温動物、餌資源、隠れ場所が近い)から推測してゆっくりと動きながら目視していく必要があります。
トカゲは実は大きな耳があり、音に非常に敏感です。いそうな環境というのは何度か実物を見つけられれば体感的にわかるようになってくるので、まずは丁寧に目で日光浴しているものを探しましょう。
条件のいい環境にいけば動いている個体にも遭遇するはずです。
体温を上げるのは行動するためでしたね。行動とは餌の確保です。
トカゲは決して小さくない生き物であるため、動いていると不自然な音がします。
特に落ち葉のある林床下ではこれが顕著であるため、逆に我々が動きを止めて日光浴時のトカゲのように周囲の音に耳を傾けることで彼らの位置を特定することができます。トカゲを捕まえるためにトカゲの気持ちを理解するのです。
動いているトカゲは直射日光が差す場所というよりは、すでに十分な体温を得ているため虫の多い日影的な環境(木漏れ日が差すような)場所にいることが多いです。
どちらの状態でも基本的には隠れ家が近くにあることが多いです。そのためやや忍耐も必要となるので頑張りましょう。
奥の手を紹介
トカゲの探し方に関してはwebなどでは前述の2つに関してざっくりと書かれていることが多いです。ここでは生態を利用した裏技を紹介します。
トカゲはかなり臆病な生き物です。これは彼らが昆虫を捕食する捕食者であるとともにヘビや猛禽類、雑食性哺乳類などに捕食される側でもあることに由来します。
人間は巨大な敵であるため、彼らは逃げます。その性質を利用しましょう。
トカゲがいそうな環境を見かけたらその付近で暴れるのです。走り回ったり草を撫でるように蹴ってみたりしてみましょう。敵が来たと勘違いしたトカゲは慌てて隠れ場所に逃げ込みます。
その行動や音を目視して、いることが分かればバッチリです。
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隠れ鬼で鬼から逃げた人は鬼が違う場所に逃げたか様子を見ますよね。トカゲも同様に追い込んだ後にそこから動かずに待機していると再び様子を見るor日光浴をしにすぐ出てきます。
臆病な性格を逆手に取ったこの作戦は、周りの人からちょっと変な人に見られることを除けば効果的な手法なので試してみてください。
見つけたらどうするか?
爬虫類を始め生き物は動くものにとても敏感です。
トカゲを捕まえる場合には彼らに近づいていると思わせない程度のゆっくりとした動きで近づいていくのがおすすめです。
もちろん素早い手の動きでバッと抑えてしまうというのも1つの手ではあります。しかしトカゲ類は自切と言ってしっぽを自ら切ることで獲物の興味をそちらにそらして逃げる技があります。
そのためトカゲの下の方に触れてしまうとしっぽを切られてしまうんですよね。
自切したトカゲは寿命が短くなると言われています。
生き物をリスペクトする視点から言えば傷つけず扱うのが鉄則なので、ゆっくりと刹那の見切りを楽しんでもらえればと思います。
そうした生き物との知恵比べをする方が対象をゆっくり観察できて学べることも多いと考えますね。
最後にトカゲがいるような場所の例をいくつか紹介しておきます。
あいかわ公園
webで調べてみるとトカゲが多いことが見て取れます。
公園HPの自然情報にもトカゲに関する情報が出ており、現地で観察した結果個体数もとても多いです。
都市部ではトカゲ類が減少しているため、こうした緑の多めな場所にアクセスしてみるのはお勧めです。
小山田緑地
多摩の代表的な緑地公園です。昔ながらの薪炭林的な環境があり、トカゲに限らず生き物がとても多い公園です。
長池公園
多摩丘陵にある公園です。やはり薪炭林環境があり、トカゲ類は目にします。
木漏れ日の森
カナヘビが圧倒的に多いです。トカゲよりもカナヘビの割合が圧倒的に多いのは私が知る限りここくらいのものです。
紹介した地域は一部になりますが、MAPなどで見ればめちゃくちゃ広い森という訳でもありません。それぐらいの規模でもいるということを理解しておけば大丈夫です。町中の庭にいるくらいですからね。
今回の記事では人気のトカゲをその生態的な視点から探してみることを目標に紹介しました。
生き物の行動から見てみれば実に納得のいく探し方ができるということが理解していただけたのではないかと思います。
トカゲに限らず春以降人気の昆虫採集などもこうした生態的な面から見ていくことで面白く体験することができます。他の記事でも紹介していますので、よろしければご覧ください。
参考文献
小規模な都市緑地におけるトカゲ類の生息に関する研究 土金慧子 大澤啓志
pljbnature.com
トカゲとカナヘビの違いや生態系におけるポジション、捕食の関係などについて理解を深めるのにおすすめです。
pljbnature.com
爬虫類を自然の中で見てみたいという方にはこのカテゴリーがおすすめです。
身近なヘビなどを種類ごとに紹介し、本記事のように生態的な面から探し方を紹介しています。