町中で見かけた青とオレンジ色の鳥は誰?
近年都市部において青色の背にオレンジ色の腹を持つ奇妙な色合いの鳥を見かける機会が増えました。
その派手な色合いから外国から偶然わたってきた鳥か?と疑いたくなるような種類ですが、国内国外を含め様々な場所で確認することができる鳥です。
今回の記事では海岸エリアから生息地を広げつつあるイソヒヨドリという鳥を紹介します。
イソヒヨドリとは?
イソヒヨドリは名を冠するヒヨドリと同程度~やや小さい程度のサイズ感を持つ小型の鳥です。
特筆すべきはその色合いであり、初見の人は珍しい鳥を見つけてしまったに違いないと思うはずです。
青(正確には青とグレー)にオレンジ色という対照的な色をしており、非常に目立ちます。
磯の名の通り海に面した岩礁や崖などに生息している鳥でしたが、近年全国的に内陸部まで生息圏を拡大する傾向が見られている鳥です。
そのため10数年前までは目にしなかった鳥が急に表れたという状況が全国規模で起こっています。
営巣場所は海沿いの岸壁、内陸部では建物などを使用していると考えられています。内陸部での適応はとても広いようです。
食性は雑食性で昆虫類や果実を頻繁に利用していると思われ、岡山県のイソヒヨドリの生息状況を調査したものでは鱗翅目(チョウやガ)の幼虫やバッタ類などを利用していました。
海辺の岸壁などに営巣する傾向からか電線やダムの天端などの開放空間で目にすることが多い種類です。
生息域はアジア地域からヨーロッパ地域と非常に幅広く、日本にはその地に留まる留鳥や国内外を季節に応じて移動する漂鳥性のものがいると思われます。
イソヒヨドリ観察の楽しさ
この鳥ですがたくさんいる鳥の中でも動きがトリッキーで面白い鳥です。
まず私の出会う地域では警戒心がかなり薄い鳥であると言えます。宮ヶ瀬ダムが近くにあり、ダムはイソヒヨドリが好むような高低差があり湿度がある環境なので該当地域ではよく目にします。
この鳥なんですが美しい色合いに対して鳴き声がかなり汚いです(笑)鳥の鳴き声には種類があり、私がよく聞く汚い声はいわゆる威嚇の音声なのですが、グウェッといったカエルを連想させるような変な声を出します。
移動がかなり活発で地上~中程度の人工物~電線などを頻繁に移動します。
昆虫の中にはハンミョウといってちょっととんでは止まってを繰り返す種類がおり、このことから道案内人のあだ名があったりしますが、イソヒヨドリも案内人のように少しずつ距離を取るように飛翔します。追いかけっこが楽しめます。
地上に止まれば採食することもあります。一方で電線上にいても採食するシーンに遭遇できます。
身近な例でいえば水際のハクセキレイなどもやる行動なのですが、飛んで獲物をキャッチしてまた戻るという行動を取ります。
狙うとなかなか見られない行動なのですが、なかなかにアクロバティックで楽しい行動です。
前述の研究では獲物を地面にたたきつけて気絶させてから採食するという行動も観察されているようです。私は見たことが無いので見てみたいものです。
こうしたユニークな行動と自慢の色合いでバードウォッチング対象としてもおすすめできる鳥と言えるでしょう。
イソヒヨドリはなぜ都市部へ進出したか?の考察
イソヒヨドリを見つけた方の多くはおそらく海岸沿いや海沿いの岸壁などではなく、街中のなんでもない所であったと思われます。
なぜ彼らを急に都市部でも見かけるようになったかについては、彼らの本来の生息環境に近い環境が都市部にも表れているからではないかと考えます。
生き物の出現には当然要因がありますよね。特に餌資源と繁殖場所の確保というのはあらゆる生き物において最優先の要素です。その要因から見てみましょう。
イソヒヨドリは雑食性の鳥ではありますが、前述の研究において地上徘徊性の生き物を捕食する傾向が強いとされています。
研究中ではブルーベリーなどの果実類を捕食している場面も観察されていますが、捕食の多くは鱗翅目幼虫やバッタ類、ムカデやトカゲなど主に地上にいる生き物が中心であったそうです。
これらは岩礁や海岸沿いであればそういった暖かい環境に形成されるシイやカシなどのドングリ系を中心とした林床で普通に取れます。
しかし、海沿いに近いならばその林になるだけであり、場所が変わってもクヌギやコナラといった雑木林は都市部にも規模は小さくとも普通にあります。
つまり餌資源的には特に海沿いでなければならないという理由は無いように感じます。
そして彼らの生態で欠かせないのが営巣場所ですね。
本来海沿いの崖などで営巣している彼らは、高所に好んで営巣をしていると推測することができますよね。
自然の中では崖などが該当しますが、人工的な環境ではどうでしょうか?
町中にそびえたつマンション、アパート、ビルなどは切り立った高所として十分に利用できそうですよね。
実際に岡山の生息調査の研究では岡山理科大学の構内の建物にて営巣されている写真がありました。
営巣場所の条件が比較的緩く、餌資源の条件も緩いのであれば、本来の環境から離れても問題なく生息することができるように感じます。
より俯瞰的に見るために岩手県のイソヒヨドリ観察記録の例を見ていくと、こちらでは高層建築に付近の草地があることが要因として挙げられていました。
一方で営巣場所となる高層建築さえあれば周囲に草地が無くとも営巣するケースも観察されており、えさ場よりも営巣場所の方が優先度が高い可能性もうかがえます。 営巣場所が決まるからこそ餌資源が必要となるという見方もできますよね。
私自身神奈川のイソヒヨドリはかなり幅広いエリアで見かけており、前述の宮ヶ瀬ダムエリアは周囲が山地でありつつもダムによって切り立つ環境ができています。
別のエリアでいえば伊勢原の鈴川付近の大通り沿い(かなり人工物が多い)でさえ見たことがあります。
ただ共通する要因があり、川(水辺)が隣接している場合がかなり多いです。水辺は餌資源となる地上性の虫も多いと思われるので、近くにあるならば優先的に利用するのかもしれません。
この観察の中から感じていた要因についても岡山の研究にて指摘されており、イソヒヨドリの繁殖、生息が確認されている場所では高層建築と河川が流れている地域が多いと述べています。
これらは本来の生息環境に近い条件を満たすものだと考えます。イソヒヨドリは本質的には崖的環境と地上の餌資源を必要とするものの、環境への対応幅が広いために都市部で似た環境を見出して適応し、海から内陸部へ進出しているというのが今回の結論です。
これに付け加えると都市部の環境はツバメが営巣するように、猛禽類やヘビなどの天敵を人の活動により近づけにくくしている可能性があると指摘されていました。
もしかしたらツバメのような人とかかわりの深い生き物を観察することで学習して都市部へ進出してきているのかもしれません。
最後はただの妄想の話ですが、イソヒヨドリが内陸部へ進出しているのは事実だと思います。皆様も見かけたらぜひよく観察してみてください。
参考文献
2014年岡山市街地におけるイソヒヨドリの生息状況
村上良真1
岩手県内陸部におけるイソヒヨドリの観察記録
金子 与止男
pljbnature.com
似た鳥にヒヨドリがいます。かなり身近なのでそちらも可愛いですよ。