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朝うるさい鳥の正体は何?灰色の鳥ヒヨドリはなぜ朝に鳴くのか?の考察と生態系におけるヒヨドリの紹介。

朝にピーピーうるさい鳥

気持ち良い朝の時間を満喫していると、スピーカーノイズのようにピーヨ↑ピーヨ↑と騒音を立てる鳥の声を聴くことがありますよね。

ヒヨドリはうるさいものの可愛げもある鳥

その声で起こされてしまってイラっとする経験をした方も多いのではないでしょうか?

その癖本人は姿を見せず、うるさい鳥がいるものだという消化不良感で1日が始まります。

このうるさい鳥はヒヨドリという鳥で、我々の生活においてはスズメと並ぶぐらい普通種の鳥です。

今回の記事ではやかましいヒヨドリを紹介し、なぜうるさく鳴くのか?生態系にどんな貢献をするのか?などといった視点を紹介します。
今日からは騒がしいだけの鳥ではなくなるはずですよ。

(朝うるさい鳥にはツピーツピー↑となくシジュウカラもいますが今回の対象ではありません)

ヒヨドリとは?

ヒヨドリはスズメ以上ハト未満程度の大きさを持つ鳥です。

およそ20cm後半程度のサイズ感。シルエットなどは明らかに大きい

鳥の中でもサイズを例えるのによいサイズ感であることから、ヒヨドリ大という物差し鳥として使われたりもします。

灰色の体と目元に入る特有のナイキのような模様が特徴的で、羽ばたいて、翅閉じて滑空、羽ばたいてと~を描くような特徴的な飛び方をすることから飛翔時でも簡単に種の判別が可能です。

食性は雑食性で昆虫類なども食べますが、植物食の傾向が強いのか花の蜜や果物などを頻繁に訪れます。

春には桜の蜜をよく舐めに来ている。人も舐めると美味しい優秀な蜜源

本来は山地性の鳥のはずなのですが、都市部などの自然が少ない場所でもしっかり定着をし始めており、近年ではスズメよりも見かける機会が増えたように感じますね。

鳥としては留鳥であり、1年中日本全国で目にすることが可能です。警戒心は都市部のものは低く、数m程度に近づいても逃げない場合もあります。

安定して見られるという意味ではバードウォッチングの入門種としてもおすすめできるでしょう。

ヒヨドリの出現環境について

ヒヨドリはあらゆる環境に出現します。

人工物も自然度の高いところにも出現する。

植物食性が強いという話をしましたが、蕾や芽なども食べているらしく、そうした植物資源は街中のあらゆるところにあるのでその辺で目にすることができます。

あえて探すことは無いですが、強いて言うならば春はバラ科のサクラなど、夏はエノキなど、秋は赤い実を付ける植物類がおすすめで、冬も赤い実や梅などがおすすめです。

赤い実を見つけたらとりあえず鳥の気配を探してみよう。好みがあるらしく人気のものほど早くなくなる

こうした植物は管理された自然でよく目にするので、公園や植物園などを訪れてみればほぼほぼみることができるでしょう。

なぜあんなにうるさく鳴くのか?考察

自然度の低い街中で生息している我々人間は、鳥との接点も少ないので彼らの生態を知る機会はなかなかありませんよね。

町中でも木々についていることが多い。後はブッシュ(低木)の中などにもいる

自然の中では鳥たちは朝に非常に良く鳴いています。鳥の調査は朝に行われることも多いです。

なぜ朝に鳴くのかは諸説ありますが、明け方は大気が安定しており、声が遠くまで届きやすいとする説、暗い時間に行動することでメスへの健康さをアピールする説、音の通りから縄張りを主張する説などなどのたくさんの要因が考察されています。

キャンプやそうした屋外の施設で睡眠をとれば、鳥の声が目覚まし代わりになるというのはあながち間違いではありません。

つまりヒヨドリが朝方に鳴いているのもある種の鳥のメカニズムと言えるのではないでしょうか?

ヒヨドリは単独でいることが多く逃げないが警戒心自体は強いらしい

ここからは個人的な推測となりますが、ヒヨドリのうるさい鳴き声は縄張りの主張なのではないかというのが個人的な視点です。鳥には複数の鳴き声があるというのはよく知られる事実だと思います。

その中に警告を知らせる声というのがあり、ヒヨドリの場合には甲高いピーヨ↑という鳴き声は敵が現れた時などの仲間への警告の声であるという話を聞いたことがあります。

近づくんじゃねぇ!とでも言いたげにピーヨ↑と鳴く。かなりうるさい

実際に人間がヒヨドリに近づいてみると高い確率でピーヨ↑と声を荒げられます。このことからこの音は威嚇や警告の音であると個人的には考えており、朝に鳴くのは縄張りの主張なのではないかというのが私の視点です。

なぜ人が心地よく寝ているタイミングで鳴きだすのか?という多くの人のイライラポイントについては、ヒヨドリの鳴きだし時間を調べた研究が面白い結果を導いていました。

写真は夕暮れ時のもの。日が出る前の薄明時が無くタイミングと思われる

それによればヒヨドリの鳴きだし時間の中央値は日の出前の23分ほどであり、季節により鳴きだしの時間が変化することなどが指摘されています。太陽の登る時間は変わっていくので当然ですね。

鳴き声は繁殖期前半に当たる1,2月,5,6月,11,12月あたりが特に多いようです。

新緑の時期はピーク時の30%程度の鳴き率

一方で繁殖期後半に当たる3月4月、7月8月あたりでの鳴き声の割合は繁殖期と比べると半分程度~75パーセント程度まで減少します。

人間は不快な記憶は残りやすいので、ヒヨドリという鳥は年中うるさいというような印象を受けますが、データとしてみると繁殖期の前半に鳴く割合が大きく増えるようですね。


傾向の1つとしては繁殖期に関連しているものなのではないか?という説が考えられそうですね。

春の6時台。日の出から90分程度のラインで、確かによく鳴いていた

また、日の出前の鳴きだしから90分程度の間はよく鳴くようです。鳴く時間がかなり長いので我々の睡眠時間と丸被りしてしまうのでしょう。

また、ヒヨドリは特に同種間における縄張り主張が強い鳥であることが分かっており、種の平均的な縄張りは14000㎡だと該当研究にて言われています。これでは街中で生息環境が被ってしまうのも納得がいきますね。

テリトリーを張っているのか厳重警戒なヒヨドリ。本当に同種ばかりと喧嘩している

例えばヒヨドリの縄張りに侵入してきた鳥との争いの割合を見ると、対♂ヒヨドリの割合が80パーセントを占めています。このことからも同種への攻撃性が高いことが裏付けられています。

この際に警戒音声としてキー、キー、(研究での表現。おそらくピーヨ↑と同じ)と鳴くことが指摘されています。

時期的には桑の実ができる辺のタイミングで最高潮のピーヨ↑を迎える

そしてそれらは雛を育てる期間に増えていくようです。子育て中に警戒の度合いが上がるのはカラスなどにも見られますが、まあ生き物として当然ですよね。

ヒヨドリの縄張りが14000㎡とかなり広いことを想定すると都市部では過密なくらいの生息数なのではないでしょうか?

ヒヨドリサイドにも事情はある。夜明けに繰り広げられるバトルなのかもしれない

その環境下で同種攻撃性の高いヒヨドリが朝の薄明中に行動することで、縄張りの主張をするためにピーヨ↑ピーヨ↑と鳴き、我々はそうしたヒヨドリの繁殖活動の一端をうるさい目覚まし音声として聞いている。

というのが今回の私からの仮説です。この説であればうるさいのもある種許せる気がしてきますね。


今回この記事をご覧いただいた皆様はぜひともヒヨドリが鳴いている時期に注目して、検証してみてください。



特定植物の受粉や種子運搬に貢献する鳥

ヒヨドリの鳴き声についてある程度考えた後はヒヨドリ本来が自然の中でどんなことをしているのか?というのを見ていきましょう。

あらゆる果実と関わりが深いのが鳥類

知っての通り鳥類というのは植物の種子散布に貢献し、加えてお花の蜜食いのヒヨドリは受粉にも貢献する鳥です。

そんな種子散布への貢献の事例を見ていきましょう。

植物と鳥は餌をあげる代わりに種子を運んでもらうという共生関係にあると推測ができますよね。つまり種子散布をしてもらう植物側の果実には傾向が見られ、赤色や黒色のものが多いです。

庭木に多いマンリョウやセンリョウ、ナンテンなども赤い実をつける

例えば様々な鳥が利用する例としてはカラスザンショウやミズキ、クマノミズキ、アカメガシワやエノキなどが挙げられます。

これに限らず野外で結実しているものであれば種類はさておき鳥を見ることはとても簡単です。

屋外でこうした色の実を見かけたら鳥が運んでいるのかも!と考えてみてください。今回は山地の普通種オニシバリという植物の例を紹介します。

11月に伸びてくるオニシバリ。丹沢地域ではシカに食べられないため結構多い

オニシバリは山地に見られる植物なのですが、やや変わった生態を持つ植物で、冬季~初夏まで見ることができます。

他植物が多数現れる時期に活動しないというこれ単体でもかなり面白い植物なのですが、この植物は赤い実を付けます。

つまり鳥散布の可能性が考えられますよね。

道?と思いきやこちらは獣道

オニシバリはジンチョウゲ科の植物、つまりは毒を持つ植物です。それゆえシカやイノシシなどの動物が増えた昨今の山では動物たちに忌避され、もともとの生息地では少なくない数を見ることができるようになっています。(神奈川の丹沢側の話です。)

オニシバリの果実採食者を記録する研究ではこの植物の付近に自動撮影のカメラを設置し、この実を食べに来た鳥類を記録しています。

その中にはオニシバリに止まるヒヨドリの姿が撮影されており、明確に採餌する場面が残されたようです。

種子の例。確かマユミだったような

これによれば丹沢でオニシバリを利用する鳥はヒヨドリとカワラヒワの2種がおり、ヒヨドリは果肉を、カワラヒワは種子を食べると指摘されており、当地における重要な種子運搬の役目を持っていると考えられます。

ヒヨドリからすれば幅広い行動域の中の僅かなオニシバリを利用しているにすぎないのかもしれませんが、オニシバリの側からすれば丹沢において種子運搬に貢献してくれる貴重な2種類の鳥ということでとてもありがたい存在でしょう。

例えば絶滅危惧種のアオジが主な種子散布者で、しかも専門食いだったりするとかなり大変そう

その存在が絶滅危惧で数の少ない鳥ではなく、普通種の鳥であるということはとても助かりますよね。

また、異なる種間の競争を見る対象としても最適で、種子食いのカワラヒワと果実食いのヒヨドリの間でオニシバリをめぐる戦いが繰り広げられていることがわかりますよね。

2月に花が咲くオニシバリ。ジンチョウゲの仲間らしい花期

同研究ではカワラヒワ個体群の密度が増加すると本来熟すことでヒヨドリの餌となれた種子資源の減少が推測されており、逆にヒヨドリ個体群密度が高ければ未熟種子は食べられずにヒヨドリを介して遠くまで種子を運べると考察されていました。

オニシバリの花。後ほど赤い実がつく

もし自然界で2種の食べる植物がオニシバリしかなかったと仮定すれば大群で過ごすカワラヒワがすべてのオニシバリを食べてしまい、ヒヨドリは死んでしまうでしょう。しかし実際の自然ではオニシバリ"も"利用することができる2種の鳥であるため、うまく資源を使い切らない程度に競合しているのですね。

マイナーな植物ですが、かなり印象に残るものです。特に形。

オニシバリの名はこの記事で初めて聞いた方も多いかと思います。しかしこうした植物を利用した食物資源の利用というのはあらゆるところで起きています。

だからこそ多様性が重要となってくるんですよね。そうした事例としてとてもよく扱えそうなのでオニシバリの事例を紹介しました。

ちなみにですがおそらく当該地区において最も貢献しているのはシカだと思われます...。シカは本当に多様性を破壊しますね。

今回はヒヨドリが貴重な運搬役となっている例を紹介しました。赤系の実ではヒヨドリ以外にも多数の鳥がこうした貢献を行ってくれています。なんだか見え方がちょっと変わりませんか?





ヒヨドリと生態系

ヒヨドリが種子運搬に貢献している話をしました。もう少し視野を広げていってみましょう。

椿とヒヨドリは特に平地において仲良しな関係

ヒヨドリは種子をつくることにも貢献しています。代表的なのがツバキの仲間ですね。

これはヒヨドリに関しては根拠がないので私の主観が大きい部分ですが、ツバキ科の樹木に来ている鳥というのがいます。

おなじみのメジロ。ツバキを好んで訪れる鳥の代表種

1種はメジロですね。メジロはツバキの選択性が高い鳥で、確か三宅島のツバキを訪花する鳥を調査したものでは80%程がメジロであったと記憶しています。

メジロに次いで見かける機会が多いのがヒヨドリであると個人的に考えています。

冬場の平地のツバキに行けば、メジロかヒヨドリがいるというくらいこの2種はよく目にします。

ツバキの仲間は蜜源の中心部に雄しべを集中させている

ツバキ科はその特有の集合したおしべ(集約おしべ)により蜜を得ようとすると顔が花粉だらけになってしまう賢い花です。

個人的ベストなヒヨドリの写真。花粉にまみれたヒヨドリらしい魅力が溢れている

事実として写真のような花粉まみれのヒヨドリはよく目にします。ツバキは鳥に受粉を手伝ってもらうような形に進化しているのでヒヨドリとのかかわりも深いだろうというのが私的な視点です。

もちろん彼らは桜などのバラ科にもよく来ますよね。お花見の時期に花を破壊して回る彼らを目にするはずです。

舌の長さなどいろいろな問題点はありますが、多少なりとも受粉に貢献しているのではないでしょうか。

樹皮についている何かをつまんでいたヒヨドリ

冬場には冬芽なのか樹皮について虫なのか不明ですがそうしたものを食べている場面にも遭遇します。昆虫類の捕食は鳥と昆虫が何万年もの歴史の中で築いてきた関係と言えます。体の小さいものほど多くの子孫を残すように昆虫は食べられることを前提として多くの卵を産みます。

アブラムシやカメムシなど爆発的に増えてしまうかも

逆に言うと鳥たちがいなくなると小さな虫たちの数はそれこそとんでもない数に増えてしまうかもしれません。目に見えない生物資源の増減なので我々が日々感謝することはありませんが、ちょっと鳥に感謝したくなりませんか?

ヒヨドリ?ではないか何かを掴んでいたハヤブサ。上位捕食者

またヒヨドリ自体は捕食する場面を見ることが多いものの彼ら自身も捕食されることがあります。ご存じのヘビや猛禽類が彼らの天敵ですね。

記事投稿直後では高病原性鳥インフルエンザのようなウイルス系も天敵かもしれません。通年の捕食対象という意味ではやはりタカ類が強いと思われますが。

特に平野部や都市部において進出が進むオオタカやツミのような小型の猛禽類に狙われているのか、市街地で彼らの足や羽、すごい場合には血肉を見たことがあります。

自然界は敵だらけ!かく言うヒヨドリも虫からすれば敵!

町中で見られる鳥というのはカラスやハト、ヒヨドリ、メジロやスズメなどなど種類がかなり限られがちです。
このうちカラスは賢いので逆襲にあうケースもありますしね。

そういう意味では都市部の生態系を維持するための重要な鳥であると言えるのではないでしょうか?

農作物を荒らしたりそのうるさい鳴き声から姿も知られずに嫌われてしまうヒヨドリですが、掘り下げてみると実にいろいろなことが分かりましたね。

町中であの大きな声を聴いたならばぜひその姿を探してみて、君がヒヨドリくんかぁと観察してみてください。ちょっとかわいく見えてくるはずです。

ヒヨドリのカラーリングが違うイソヒヨドリもいるので探してみてね

参考文献
ヒ ヨ ド リの 生 活 史 に 関 す る研 究 繁 殖 生 活(1965,'66年 度)羽 田 健 三*・ 小林 建夫*

ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis の鳴き出し時間のバラツキ比較
(大磯、仙台、密陽)と鳴き出し時刻の照度推定
大坂英樹

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