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高尾山アオタマムシ採集記 枯れたモミの木で探す高尾の人気昆虫

高尾山の代表種アオタマムシ


高尾山の昆虫を挙げてくださいと言われればミヤマクワガタ、ヨコヤマヒゲナガカミキリ、そして今回のテーマであるアオタマムシが名を連ねることでしょう。

特に7~8月の昼間の昆虫においては圧倒的な人気を誇る虫です。

昨今発売されたタマムシハンドブックによって話題沸騰中の昆虫です。

今回の記事では高尾の大人気昆虫アオタマムシ採集のプロセスを紹介していきます。

アオタマムシとは


アオタマムシはタマムシ科の代表格であるヤマトタマムシよりやや小さいタマムシです。

成虫の出現期は7月中旬~8月中旬ごろで大型の割には短いです。

アオタマムシとヤマトタマムシ

色はアオの名の通りやや青緑色の光沢をしており、個人的にはヤマトタマムシよりも美しいと思います。

東京神奈川では数少ないタマムシであり、これは幼虫がモミという針葉樹を利用し、成虫はイヌブナというやや標高のある環境に見られる樹木を利用することが関わっています。

産地は高尾山があまりにも有名ですが、一応丹沢方面のやや標高のある山でも記録があります。

高尾山の虫といえばアオタマムシという方も多いはずです。それほどの人気がある美麗種です。

食草はモミとイヌブナ


アオタマムシは幼虫がモミという針葉樹を利用し、成虫はイヌブナの葉を食します。

モミ、イヌブナ共に500m程の標高から見られる可能性が出てくる植物で、特にイヌブナが東京神奈川では少ないです。

モミ帯の代表的な昆虫ネブトクワガタ

高尾山ではヨコヤマヒゲナガカミキリに代表されるように中腹以降にイヌブナが非常に多く、ネブトクワガタがいるようにモミもとても多い環境です。

そのためアオタマムシにとても適した環境です。

アオタマムシの探し方


アオタマムシは♂と♀で探し方が異なります。一般的に行われているのはモミの立ち枯れ木で♀の飛来を待つという探し方です。

♂はイヌブナの樹冠(高いところ)を飛び回るため、相当長い長竿網と樹冠を狙えるような場所が必要です。

ケーブルカー駅前がそのような場所だったのですが、タマムシ屋が殺到することでケーブルカー付近の採取が禁止されたという話があります。

個人的にも特定の種類だけを乱獲するような採集方法は辞めるよう伝えておきます。

基本的には♀を狙っていくことになります。♀は夏の午前中から午後15時頃までモミの枯れ木に飛来した個体を狙います。

高尾山はとても広い山なので事前の下見はとても重要で、モミの枯れ木がどこにあるかというのを把握しておくことが重要です。

特にシーズン中の良いポイントは大抵先行者がいるため、穴場となりそうな環境を見つけておきましょう。

待つことが中心の採集となりますが、一応良さげな木であることを示すサインが有り、夏のカミキリであるオオヨツスジハナカミキリがアオタマムシが来る良い枯れ木のサインとなります。

脱出痕

下見において意識して欲しいのはモミの枯れ木の鮮度です。枝は枯れているものの脱出痕がないものは鮮度が良いため狙い目です。

他の枯れ木性の昆虫と同じくボロボロになりすぎているものには来ません。脱出痕があるものは1年以上立っていますが、古くなければ全然来ます。

その際には痕の形を見ておきましょう。タマムシ科の脱出跡は完全な丸ではなく楕円のような形をしたものが多いです。

しかしカミキリ類であっても脱出痕があるならばタマムシ科が利用している可能性はあるため、待機してみましょう。

時間について


ヤマトタマムシは暑いお昼すぎぐらいがピークになりますが、♀のアオタマムシは朝早くからでも見つかります。
じっくりと午前中から狙い、条件を観察していくのがおすすめです。

観察の際に重要なのはモミの立ち枯れに日差しが差し込んでいるような物を選ぶということです。

高尾山においてはイヌブナもモミも密度が高いため、枯れ木もとても多いです。

故に毎年新しい枯れ木も生まれているため、自分だけのポイントを開拓できれば十分チャンスはあるでしょう。ただしとても多い虫ではないので、そこは注意です。

高尾山とモミを取り巻く環境

高尾山はその立地から特殊な温暖的な環境であると言われています。

アオタマムシの食草であるイヌブナ

イヌブナは本来は更に標高があるような場所に見られますし、モミ利用のネブトクワガタは南方系の種類で寒い場所ではなかなか見られません。

高尾山は冷気が麓に集まりやすく中腹の気温が比較的高いそうで、そうした特殊な環境がカシ類などの南方系樹種の豊富さにも貢献し、豊かな自然を作り出しているのかもしれませんね。

高尾山に行くと驚かされますがとても太いモミが多いです。

確かに他の500mクラスの山ではイヌブナが僅か程度で、モミもここまで多いことはあまりありません。

針葉樹と広葉樹共に利用するアオタマムシやネブトクワガタにとってはとても良い環境でしょうね。

高尾山におけるモミの分布について

モミがよく見られる道を紹介していきます。どんな場所に生えているのかを理解して、その後は自分だけのポイントを開拓していきましょう。

稲荷山コース

稲荷山コースはとてもモミが多いです。

尾根沿いの道を進むため植物が見分けやすく、2023年に見た感じでは枯損木も程々に見られました。

モミから丸状の脱出痕が見られることも多く、アオタマムシがやってきそうな気配を感じます。

稲荷山コースはトイレや出店などの休みスポットが少なく、他の道への分岐もないことから稲荷山で張り込むしか選択肢がなくなるのがたまに傷ですね。

4号路

かなり人気の高いポイントです。

道沿いにモミがとても多く、特に吊り橋先の場所では大抵緑色の虫網を持った先行者がいるメジャーポイントです。

どんな風に採集するのか現地の人を観察してみるのもいいと思います。

4号路で人が見ているポイントの雰囲気を抑えて、他の場所で探すというのがおすすめですね。

1号路

1号路は人が多いので虫網を使うのは厳しいです。

しかし枯れているモミは意外にも多く、上空に張り付いたアオタマムシが産卵のために下に降りてくるのを手づかみするというアオタマムシ採集らしい楽しみ方ができます。

彼らは気が付いたら隣に来ていることが多く、網に頼らない採集も是非体験してみて欲しいです。

まとめ


アオタマムシは高尾山の超人気昆虫です。

採集方法は主に♀をモミの木で待つというものが基本となり、モミの立ち枯れが毎年発生することからポイントの開拓には実際に現地に足を運ぶ必要があります。

採集の際には他の枯れ木生昆虫をサインとして利用でき、オオヨツスジハナカミキリはいいサインとなります。

とても美しいタマムシで、採集方法も地味ですが現地にいるととても楽しいいい虫なので興味のある方はぜひ探してみてほしいですね。
その際には乱獲のようなことはしないようにしましょう。

おすすめアイテム

アオタマムシを求めるタマムシ好きの方はとっくにご存知だと思いますが、タマムシハンドブックはあまりにもオススメです。

実寸大のサイズやナガタマムシの側隆線など、手元で判別に使えるだけでなくお家でルーペ片手にじっくり楽しめます。

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高尾山ではアオタマムシよりも難しいと思われるアオマダラタマムシ探索です。見つけられませんでしたが、興味のある方に役立つ情報だと思われます。タマムシ科採集の基本にもぜひ。
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タマムシ科の代表格ヤマトタマムシの捕まえ方です。これさえ理解すれば確実に遭遇できます。
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高尾山の代表的な虫に興味がある方にオススメなのがヨコヤマヒゲナガカミキリです。アオタマムシに並ぶ程の超人気昆虫で、全カミキリ屋の憧れの虫でもあります。
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モミ利用のタマムシとしてはトゲフタオタマムシがいます。真冬に採集するちょっと変わったタマムシ採集が楽しめます。やり方を紹介。