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冬に挑むトゲフタオタマムシ採集記。 モミとスギの2種類の針葉樹を利用するタマムシ。(下見編)

銀色のタマムシ、トゲフタオタマムシ

冬にこそ見つけやすいトゲフタオタマムシというタマムシの仲間がいます。

トゲフタオの写真がないので似たサイズ感のクロホシタマムシをイメージで張ります

夏に緑色の光沢を放つヤマトタマムシがあまりにも有名ですが、タマムシの仲間はおよそ230種もいます。
その中でも銀色の光沢と♂は足の付け根にトゲを持つ面白い特徴があります。

残念ながら今回の探索では出会えませんでしたが、比較的新鮮な採集が楽しめるので興味のある方は挑戦してみてください。私も今期もう何度かやります。(トゲフタオの写真はありません)

トゲフタオタマムシとは?

トゲフタオタマムシは体長2㎝に及ばない程度の虫ですが、タマムシとしては大きい部類に入ります。

トゲフタオタマムシが利用するもみの木。神奈川では大山や丹沢の一部が有名産地

成虫は針葉樹のモミを利用することが明らかになっており、スギなどのめくれがある針葉樹皮下で越冬することが知られています。

この性質から新成虫の出現は晩夏以降となっているようで虫取りのハイシーズンには採集できない変わった虫です。

♂の真ん中の足には特徴的なとげがあり、見つけられれば迷うことは少ない種類であると言えます。

冬の間でも採集ができるタマムシとして魅力あふれる種類ですが、生息地は山地によっています。

冬の採集で大切なこと

トゲフタオタマムシを採集する上では冬の山地にアクセスすることになります。

冬の山地で殆ど動かない採集方法なので寒い

神奈川をベースに考えると平地と山地では1度~2度程度温度が違うことがあります。

また、山地に足を運ぶことになりますがトゲフタオの採集中はスギの樹皮を剥がすことになり、あまり動かないことから非常に寒いです。

登山とは異なるものになるので着こんでいくのがおすすめです。

成虫越冬性のタマムシ

トゲフタオタマムシのような成虫越冬性のタマムシは珍しいです。

タマムシはタマムシハンドブックの影響か注目を集めていますよね。私自身もその口ですが、多くは春~秋程度の出現期間です。

チビタマムシの仲間はトゲフタオと同様に秋に成虫が出現し、成虫越冬

チビタマムシの仲間には成虫越冬するものも多いですが、彼らも樹皮下で越冬をします。
アオマダラタマムシのように樹皮内で成虫となり翌春まで内部で過ごすものもいますが、基本は春~秋に目にする昆虫ですね。

それゆえ冬場というのはトゲフタオの樹皮採集かアオマダラのアオハダ枯損木採集をするケースが多いと思われます。
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この2種に関しては明確に冬場でも成果を上げられる可能性がある採集方法なので、昆虫に興味のある方はぜひ挑戦してみてください。

なお越冬性の昆虫としてオオムラサキはとても有名な虫で、多くの研究がなされています。一方でトゲフタオタマムシに関してはかなりマイナー寄りの虫であり、情報もあまり出ません。

越冬性の虫は温度変化の少ない北側にいることが多いのですが、トゲフタオにも同様の傾向が見られるのかは不明です。

モミとスギが重要

トゲフタオはモミの木を利用して育つ昆虫です。しかし冬季の採集ではスギを見ていくことになります。

スギやヒノキのめくれた樹皮下に越冬することが知られる

つまり探すためにはモミの木が見られてかつスギが必要です。

この点においては神奈川などは条件が良く、スギ人工林とモミが程よく生える環境というのが点在しています。

神奈川はスギ人工林があまりにも多いので数自体はいそうなもの。大山は有名な産地

県西部においてはやはり記録があり、かなり安心して挑むことができますね。

トゲフタオに関しては越冬場所にスギを利用していますが、これはスギを好んで潜伏しているのかそれともカメムシなどの越冬のように寒さをしのげる場所に潜んでいるのかは不明です。

もみの木の周辺にあるスギのめくれを見ていく。カメムシなどが潜む程度の隙間があればよい

モミのある環境の付近にめくれの多いスギがあることが多いために利用しているだけで、個体群密度がある程度あり他にもめくれた樹皮があるならば見つけることができるのではないかと思います。

ただ雑木林においてはスギやヒノキなどの密度が圧倒的に高いので、基本的にはスギを見ていけばokです。

モミは針葉樹であるため、初心者目にもかなり分かりやすい

挑戦したい方の中にはモミが分からないという方もいるかもしれません。モミは他の広葉樹とは異なり針葉樹の仲間です。

つまり葉が細長いんですね。樹皮はボロボロで白みを帯びている傾向にあります。時にはチョークで描いたような樹液の後も残っています。

モミの樹液は油分の関係か固まると蝋のように白くなる

そうした木を見つけたら葉が細いか確認し、落ちている葉の先端が2つに分裂していればモミです。珍しい樹木ではないので山地であれば普通に目にすることが可能です。



樹皮剥がしで探す

スギやヒノキの幹はかなりめくれています。山中のこうしためくれを剥がしながら見ていくことになります。

めくれた樹皮をペリペリ剥がしてみる

何度か挑戦してみた経験としては幹がギュッと張り付きすぎていると何もいません。適度な暗所ともぐりこめる程度のゆとりがあるめくれがベストです。

これに関しては感覚的な部分も大きいので、現地でやるしかありません。カメムシの仲間やハサミムシなどが出てきます。

隙間からハサミムシが出てきた! 力を入れずにめくれる程度の樹皮がベスト

彼らも同様に樹皮をこじ開けてまで入り込むパワーは無いようなので、とにかく虫が入り込む樹皮の感覚というのを覚えるのがコツな気がしますね。

めくれの規模は樹皮の大きさで変わってきますが、細いものからはあまり虫が出てこないように感じます。比較的大きめのめくれを見ていくのがいいでしょう。

冬の雑木林は暗いことも多い。手元が照らせるライトの携帯を勧める

樹皮の裏は暗いため、小さめのライトがあると便利だと感じましたね。

忍耐力の勝負である

トゲフタオの採集に挑戦してみるとこれはできる人とできない人にはっきり分かれるなと感じます。

産地の特定、植物から環境を特定、日当たりなどの考慮など分析は楽しい

自分自身で情報収集をするような方はこの採集に向いています。とにかく樹皮のめくれ具合や方角、モミからの距離など考える要素が多く地味ながらとても楽しいです。

あとスギをめくるときのべりべり感が楽しですね。一方でタマムシに興味が無かったり、何人かで行くときに熱量に差が有ったりするとかなりつらいと思います。

写真下部の汚れはイノシシによるもの。味方次第では生き物の痕跡も多数見つけられる

寒い、成果が上がりにくい、地味、副産物が無いなどかなり渋い採集となります。

様々な甲虫類が取れる夏のスウィーピングとは異なり、超地味な採集となる

トゲフタオを採集したいという方はそもそもが結構なタマムシ好きや虫好きだと思いますが、夏にやるような長竿網を持ってスウィーピングをするという採集ではないので注意は必要かもしれません。

スギの樹皮下で過ごしている虫たち

スギの樹皮下からはたまに虫が出てきます。

当たりではなくとも外れではないという感じで一喜一憂することができます。

カメムシの仲間でもうれしくなれるのはこの採集の利点かもしれませんね。

クサギカメムシの死骸と思われる。カメムシ類は隙間に入ってそのまま死んでいるものが多い。

越冬性の寄生バチの仲間でしょうか?めくると普通に動き始めました。

まさかのくぼみにどんぐり!
エサキモンキツノカメムシやヤニサシガメの仲間なども出てくる

トゲフタオには今回は出会えませんでしたが虫の潜む樹皮下の雰囲気を掴めました。何度か足を運んでトゲフタオを皆様に紹介したいものです。part2もお楽しみに。

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