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トゲフタオタマムシ採集記2 極寒の樹皮めくり(失敗編)

トゲフタオタマムシを求めて樹皮を剥がす

前回の年末の失敗を基に再度トゲフタオタマムシを求めて山へ行ってきました。(1月頭頃の話)

真冬の山の中へレッツゴー

今回の結果もトゲフタオには出会えませんでしたが、どんな樹皮裏に虫が潜んでいるのか?という点に関してはなかなかに情報を取れました。

一言だけ言うならばこの採集の寒さを舐めてはいけないというのが正直な感想です。


今回は採集記です。

県西部にて採集開始

モミの巨木が複数あるところが重要なのでその周辺を重点的に探す

年末にいそうな気配と、いたという情報を得ていた場所に再びアプローチしてみることにしました。

モミが多く、神奈川でもアオタマムシの記録があるようないい場所なので、今でもトゲフタオはいると思います。

そんな期待を胸に山へ来たわけなのですが...?

樹皮をペリペリ、山地の日陰の中でやっていくがかなり寒い

とにかく寒いです。

今年は暖冬であり、前回の年末時はたまたま気候に恵まれていて暖かい日だったようです。


今回は防寒着をガチガチに着込んでおり、そもそも上に登り続ける気はありません。

よさげな太いモミの周囲に粘着するつもりで採集に来ました。

周辺の樹皮下でよく出るヤニサシガメ。虫が出るということはタイミング次第でトゲフタオもいるはず

装備はヒートテック×2重ね。うち1枚は3倍温かいというものです。

ズボンのタイツは2倍温かい×3倍温かいで6倍温かい仕様です。(そうなるかは不明)


山に登れば5分後には汗冷えで大変なことになるでしょう。でも今日は動かないので大丈夫です。

懸念点は私の使用している登山靴がもはやボロボロで使い古したタイヤのようにグリップが効かないことです。

冗談じゃなく滑落の危険性があるので、今回は斜面環境には立ち入らないことを徹底します。

ハートマークのエサキモンキ。出てきたらちょっと嬉しいカメムシ

前回見込みを立てていた場所があるのでそちらで樹皮剥がしと行きます。現場はモミの大木があり、モミを囲むようにスギがたくさん生えています。

記録がある場所で良条件。期待しないほうが難しいシチュエーションでしょう!


私自身トゲフタオの採集経験がかなり浅いので感覚をつかむつもりでやっていきます。 一応ターゲットとなるトゲフタオの情報を置いておきます。

スギの樹皮下をペリペリするのが探すコツ。

トゲフタオタマムシは秋ごろに出てきた新成虫がスギやヒノキなどの樹皮の下で越冬するタマムシです。成虫はモミを利用し、越冬が針葉樹ということで必然的に2種が生える環境を探していくことになりますね。神奈川では県西部丹沢地域を中心に記録があるようです。


個人的に気になっている点は越冬性昆虫の中にはオオムラサキの幼虫のように北側に嗜好性を持つ者がいます。

越冬する都合上温度変化などが少ない方がよいのですね。樹皮下で越冬する虫にこうした傾向が見られるのかも探っていければよいと感じています



ではスギの樹皮を探していってみましょう。

ゆるい樹皮下にたくさんいたカメムシ。トゲフタオはいない

現地で樹皮を見ていくとひとえにスギの樹皮と言えどもめくれ具合というのが様々なことが分かります。

結論を述べてしまうと虫たちは程よく緩んだ樹皮下にいることが分かりました。

人が布団に潜り込むように虫たちも入りやすい樹皮の下に集まるのでしょうね。


樹皮下はカメムシパラダイス

樹皮をめくるとカメムシが出てきました。

エサキはカメムシの中でも当たり枠

元気の多い最初の内はどんな虫が出てきてもうれしいものです。(しみじみ)

今回の地域ではクサギカメムシをたくさん見ることができました。

樹皮めくりでは甲虫っぽいものが出てくるだけで期待が持てるというものです。

最初はだいぶ勘でめくっている感覚だったのですが、次第にここは虫が良そうだなという勘が働くようになってきましたね。

樹皮下に手が入るくらいの緩さが昆虫を見つける鍵らしい

成長を感じる瞬間は楽しいものです。

ハートマークも出てきましたよ。

出現する種類はだいたい限られていることがわかった

エサキモンキは同じカメムシでもなんかお得な気持ちになれますね。ダブルエサキモンキも達成しました。



一匹で越冬しているものもいれば複数で越冬しているものもいます。

その違いの差は不明ですが、カメムシ類の香りにはフェロモンの効果もあり、いい環境を見つけたカメムシが仲間にここ良い場所だよなんてお知らせを出して集合しているのかもしれません。

複数出てくるたびにちょっと腕が上がったと感じて嬉しい

例えばすごい大きなめくれの裏には複数のカメムシが潜んでいました。フェロモンは同じ名前の種にしか聞かないのか、それともカメムシの仲間であればある程度通用するのか気になるところではありますね。

カメムシは累計30程度は出したと思われる

クサギのお祭り状態です。寒すぎてみんな死んだように動きません。実際のところこうした越冬個体の中には死んでいるものもいます。それだけ過酷なんでしょうね。

樹皮をめくり、めくりにめくります。

エサキ、クサギ、ミナミアオ?、ヤニサシガメばかり

今回私はカメムシを採集しに行ったと錯覚してしまうくらいカメムシしか出ませんでしたね。

今年は秋のカメムシが多かったからか樹皮下のカメムシもたくさん見ることができました。

出現度合い的にはクサギ>エサキモンキ>ヤニサシガメ>ツヤアオという感じでした。

今回の採集ではトゲフタオには出会えなかったのでカメムシの越冬生態を観察しに行ったと思うことにします。

スギ樹皮下に生息するトゲヤドリカニムシというカニムシ

唯一新しい発見はカニムシの仲間に遭遇したことです。土壌中に生息していることは知っていたのですが、どうやらこのカニムシはスギやヒノキなどの針葉樹の樹皮下で生息する種類だそうです。

3匹のカニムシを発見することができ、しかもカニムシ事態を初めて見ることができたのでこれはいい収穫でした。

見たところかなりサソリ感が強い生き物ですね。足は4本あり、ダニの仲間が近いものだと思います。
この仲間にはマダニを捕食するものがおり、自然界におけるあまり聞かないマダニの天敵なのだと思います。

大型カニムシの一種。5mmくらいある

カニムシを発見した後は大きな発見は無く、カメムシをひたすら掘り返していました。

前述した越冬方向の傾向に関してはあまり関係が無いように感じています。それどころか南側によくいたように感じましたね。サンプル数が少ないのでたまたまでしょう。

指先の感覚もなくなり、自分は何をやっているんだ?と悟りを開き始めた

そんなわけで
最初はトゲフタオとるぞと意気込んでいたわけなのですが、2時間ほどの滞在で参ってしまいました。いかんせん寒さが強烈な日でした。


雑木林は日陰環境になっているので寒さはさらに強烈です。山なので風もあり、体感気温は2℃くらいでしょうか?手がかじかんで赤くなります。

動いたら暑いくらいの着込みレベルじゃないとキツイ

また、体が芯まで冷えてしまうと鼻水が止まりませんね。最後の方は鼻水たらしながら樹皮をめくる妖怪のようになっていたことでしょう。



寒さ対策は今回のもの程度では全然足りないという印象でしたね。

これから挑戦する人はゆるい樹皮を中心に探してみましょう

しかし虫の潜む樹皮の感覚に関してはかなり磨くことができたので、また次の機会にトゲフタオを発見したいと思います。

もしこれからトゲフタオに挑む方は山に登る場合暖かい装備を持ち込んで到着先で着ることをお勧めします。

本当に寒かったので雪山登山挑むくらいの装備でもいいんじゃないかと個人的には思いましたね。そこさえしっかりしておけば楽しめるはずです。
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今回見つけたカニムシの詳細とカニムシ類の面白いトピックとしてマダニを食べる生態を紹介しています。
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前回のトゲフタオはこちら。暖かくてよかった時の採集記です。


もしプチ拷問気分を味わいたいならば、似た条件で挑戦してみてください。