真夏の高尾といえばアオタマ!
2022年に初めて高尾のアオタマに挑み、はや2年。偶然とれた2年前に比べ昆虫採集の経験も増えたことから久々に高尾のアオタマを探しに行くことにしました。
高尾山の真夏の虫といえばアオタマムシで、ミヤマクワガタやヨコヤマヒゲナガカミキリなどと並ぶ人気昆虫の1種と呼べます。
アオタマ採集は大変暑い中に行うことになりますが、モミの幹に気が付かぬうちに張り付いているシルエットを見かけた瞬間に全ての苦労が報われた感覚を味わえる癖になる採集です。
アオタマ採集に関する記事は最後の関連記事でどうぞ。
7/22 アオタマを求めて訪問
梅雨明け直後の7/22日にアオタマを目標として高尾山を訪れました。
高尾は虫が豊富なので、サブターゲットとして夜のミヤマ採集に使える樹液ポイントの開拓、ヨコヤマヒゲナガカミキリがイヌブナのヒコバエを後食している様を見つける、エゾゼミの出現具合の確認、ミヤマカラスアゲハの捜索などを並行して行いました。
アオタマに関してはオスはイヌブナの樹冠を飛び回ることが明らかとなっており、メスはモミの立ち枯れに産卵しに来ることが分かっています。
この内ケーブルカー周りではイヌブナの樹冠を見ることができるため、オスの姿をみることはよくできます。
しかしながら高尾登山電鉄のアナウンスにてケーブルカー周りやリフト周りでの採集は禁止のアナウンスが出ているので、必ず守りましょう。(特別保護地域ではないので昆虫採集自体は禁止ではありません。)
観察や生態写真ならケーブルカー周り、取りたいならばモミの立ち枯れを探すことになります。
中腹到着直後に樹冠周りを見てみると、飛んでいるオスと思われるアオタマを発見。早々に姿を見れたことで期待が高まるとともに、とりあえず捕獲0目視0がなくなった安心感があります。
残念ながら唐突すぎて写真はありません。
中腹からモミを探していきます。モミは高尾の中腹以降に普通に生えていますがルートにより出現の度合いは変わってきます。
メジャールート沿いなどは人の通りも多いため避けたほうがいいでしょうね。
まずは2年前にアオタマを捕まえたモミを見に行きます。2年ぶりに見てみるとかなりボロボロになっています。しかしこれくらいならまだ来そうです。
この木にはモミを利用するオオヨツスジハナカミキリが来ていました。この虫が来る程度の鮮度のモミであればおそらくアオタマムシは来ると思われます。
最近ヤマトタマムシが芯材を食べるということを知ったのですが、アオタマも古めの材にも来ることから同じ性質があるのかもしれません。
下見を基に立ち枯れ木を回る
高尾山はモミがとても多く各ルートにも点在しています。
木自体が多いため、行き当たりばったりで探すと良い条件の木にはなかなか出会えません。
昨年にヨコヤマヒゲナガカミキリのつきそうなイヌブナを探しながらアオタマの来そうなモミの枯れ木を探していました。
ここはいいなと思う場所を見つけておいたのでそこに来てみました。
去年の状態から木が折れています。しかし周囲にモミとイヌブナが有り周りにも数本モミの立ち枯れがあります。
日差しが強く差し込まないのが懸念点ですが、様子を見てみましょう。
うーん 今はいないようです。しかし羽脱孔などはなかなかにあります。時間次第では来そうですね。 他の場所も見てみましょう。
エゾゼミの声を発見!
モミ帯に入るとともに機械音声的なギギギギギーという音が聞こえてきました。
巨大なモミの樹冠でエゾゼミが鳴いているようです。
サブターゲットであるエゾゼミの声を達成です。今季は夜にエゾゼミやアカエゾゼミなどを狙ったスウィーピングもしていく予定なのでお楽しみに。
アオタマムシを発見
エゾゼミの声を満喫しつつ最初に当たりをつけたポイントを見に戻ると!
い、いるー!
アオタマムシがモミの立ち枯れの幹を歩いています! この知らずのうちになぜか張り付いていて心臓が跳ね上がる瞬間というのがアオタマムシの醍醐味です。
彼らは羽音などなぜがあまり立たずに気がつくと目の前くらいの幹に降りてきているのです。大きい昆虫であるために幹にいればすぐわかるのですが、本当に気がつけません。
微妙に距離があるので生態写真はこんな感じで幹についています。
早速捕獲していきましょう。アオタマムシは網で下から掬い上げるように取るのがおすすめです。
上から落とそうとするとどうしても抜け落ちてしまいますし、モミに来ている個体は激しく動かなければあまり飛びません。
アオタマムシ。ナガタマムシでは味わえないサイズ感とヤマトタマムシでは味わえない単色の美麗種。
今回は1匹目をスムーズに捕まえられましたが、高尾山では情報等なしに捕まえられる虫では有りません。
2年前は興味で取りに来たら取れてしまいあまり良くわかりませんでしたが、今見るとこの虫の美しさがよく分かります。
アオタマムシは色彩の個体差が激しい虫です。オスは青みが強いと言われていますが、メスは赤みの混ざった物が多いようです。
大きさも幅があり、サイズと色でアオタママニアが多いのも頷けますね。
まさかのアオタマパラダイス!?
採集している方なら分かるかと思いますが、条件のいい木には日差しなのか風なのか不明ですが飛来するタイミングというのがありますよね。
ちょうどその場所のベストコンディションに来れたようで、2匹目のアオタマが飛来しました。
実際には枯れ木の横の木に来ている個体が目に入りました。早速捕獲です。
こちらの個体はよく見るサイズのメスですね。タマムシハンドブックによれば体長は28mmほどが最大となるようでこの子は20mmいかない位のサイズ感です。
1匹目と2匹目は色合いがとても似ており、サイズ感の違いくらいしかありませんね。
そして更に5分後くらいに3匹目が飛来。捕まえた余裕から写真を撮ることもできました。
3匹目は2匹目の半分ほどのサイズで赤みがかなり強い個体です。
おそらく成虫になりたての個体なのでしょう。クロホシタマムシやアオマダラタマムシにも似たような傾向は見られ、時期の経過とともに青みが強くなっていきます。
真っ青な個体も見てみたいものです。
その後捕まえられなかったもののモミのやや上部の枝を飛ぶアオタマを発見。
この日に見つけたアオタマムシは1時間ほどで5匹。
イヌブナのオスが1、モミの枯れ木で4です。
アオタマが来ていた木の感覚
さて立ち枯れにアオタマは飛来します。
今回の観察で得られた情報をお伝えしますと、一般的にタマムシに言われる日差しが立ち枯れに当たることはアオタマにおいては絶対に必要というわけではないようです。
完全日陰になると影響がありそうですが、弱い日ざしが入るような場所でもアオタマは来ていました。
材の鮮度については今回のものは樹皮の辺材部が部分的に剥けてきて芯材部が露出しているくらいのものに来ていました。
これは2年前の個体でも同様であったため、使えそうですね。
また、当たり前ですが羽脱孔のあるものは見たほうがいいですね。
しかし羽脱孔のあるモミの立ち枯れは結構多いので、最後には諦めずに真夏に貼り付ける人が成果を挙げられるという形にはなってくると思います。
そのためには個体密度が高く、採集者の少ない自分だけの木を発掘できることが大事なので、高尾に訪れてその年の状態の良い木を見つけてみてください。
アオタマムシは個体数はとても多いわけではありませんが、頑張って探せば見つけられる程度にはいます。
何より見つけて手にしたときの光沢感がとても素晴らしく、感動できる生き物なので昆虫好きの方にはぜひ一度は挑んでいただきたいですね。
真夏はゲリラ豪雨に注意
午後から雷予報なことは知っていたのですが、この日は高尾周辺が強烈なゲリラ豪雨に襲われました。
高尾山スミカという場所をSNSで知っていたのでここのクリームソーダを飲む予定だったのですが、眼の前の空間に落ちる雷と特大の雷鳴とスコールのような雨を見ながら飲むとても記憶に残る1杯となりました。
場所醍醐味で700円ですが、いい空間だったのでまた利用したいと思います。昼間の採集ではこういう楽しみもあるといいですよ。
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2年前の情報がベースですが、高尾にて初めてアオタマムシを捕まえたときの記事です。モミの木を見やすい場所などの情報が落としてあります。
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アオタマと同じかそれ以上に人気なヨコヤマヒゲナガカミキリの採集記です。
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2024年のミヤマクワガタ編です。夏の高尾の良い虫たちを探すのはとても楽しいですよ。
アオタマムシに役立つ道具
今回は志賀昆虫網を持っていきました。コンパクトなのでカバンにしまいやすく移動に便利です。アオタマも長竿があれば便利なのですが、昼間の交通量が多い場所で大きい網を利用するにはちょっと気が引けます。真夏は酷暑となりつつあるので空調服の量をおすすめします。体感温度が5度位は違いますし、日陰ならば更に涼しいです。アオタマ以外にも広く使えるので大変おすすめ。この商品である必要はありません。夏の採集では移動時など日傘は本当におすすめです。折りたたみを使っていたのですが、光の反射に基づいた色合いのものにしてから更に手放せなくなりました。傘なしと比べると4度くらい体感気温が違うと思います。昼の採集におすすめ。