幻のアオマダラタマムシ

アオマダラタマムシは関東圏ではあまり多くはないタマムシの1種です。
ヤマトタマムシよりも小さくクロホシタマムシよりも大きいというサイズ感の非常に人気が高い昆虫です。
中型の良いタマムシのため、私も2023年から探し求めていました。
初年度は高尾で食草探し、24年にイヌツゲでそれらしき虫の飛翔と死骸を見つけ、そして3年目となる今年にはなんとか成虫を見つけてやろうという意気込みで初夏を迎えました。
アオハダの多い雑木林
アオマダラタマムシはモチノキ科の樹木を利用するため、雑木林に生えるアオハダが自然下での関東における食草としては最有力候補です。

エリアによっては同じくモチノキ科のイヌツゲに多くの羽脱孔が見られる場所もあります。
東京神奈川での分布はいるところにはおり、いないところには全くいないという局所的な分布になると想定されます。

アオハダ自体はいたるところで見つかるのですが、肝心のアオマダラが見つけられることはほとんどこれまでなく、姿をなんとか見たいと思っていました。
そこで今季ヒラタの記事でも同じ虫仲間の方に、アオマダラをつまんだという雑木林を紹介してもらい見て回ることにしました。
第一陣は失敗
5月の中旬頃に第一陣として出撃したのですが、天気はあいにくの曇りでした。

タマムシのセオリーは晴れた暑い日に日が当たる木に来るというものがあるため、第一陣ではアオハダのポイントを覚えることにしました。
そして晴れた6月の上旬に再び行ってきたのです。
快晴のアオハダを巡回する
この日は計11時間行動した日で、日中の一部と夜にはヒラタクワガタを求め、日がいい時間帯にはアオマダラを求めて件の雑木林を訪れました。
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(同日の採集)
日差しが強く風は涼しい素晴らしい条件で、きっと遭遇できるような気がしていました。
雑木林を進み、オサムシやゴミムシをつまみ、道中の松の枯れ木でウバタマムシを観察します。

話によればウバタマムシはアオマダラタマムシと似たような性質があり、オスが木に張り付いてメスの飛来を待っているというものです。
アオマダラタマムシがこんなふうに木に張り付いているというのはあまり想像ができませんが、この状態のウバタマムシはかなり大人しく近づいて写真も平気で取れてしまいます。
この松がある場所の付近にはアオハダが多く、なかなかに良さそうな場所だなと前回訪れたときに感じていました。

イヌツゲでの経験を活かし、細めではなくやや太めの木。サイズ感としては鍛えた大人の腕(上腕二頭筋)ぐらいの幹を見ていきます。
地上からおよそ4mほどの葉に隠れた幹を見てみると...なんだかモリチャバネゴキブリのようなサイズ感の虫がいるような、幹の凹凸のようにも思えるような...?
動いたから虫か...? 角度が悪くて上翅も見えないから角度を変えてみて...
!!
ほんのりと太陽の光を受けて緑色に輝いているかもしれない! 長竿網でうまく落としてみると!

ついに出会えた念願のアオマダラタマムシ! 想像していたよりも実物は大きく、その体にある美しい模様はまさにまだらにふさわしい斑点と、レリーフ感。
3年探した虫との遭遇に感無量となってしまいました。
これまで求めてきた虫はシーズン中には出会えることが多く、分布が局所的なアオマダラタマムシのように長期間出会えなかった虫を探し求めて遭遇できたのは初です。

最初の一匹目は手が震えるぐらい嬉しかったですね。
嬉しいのもつかの間で、その木には1匹目がいた個体のすぐ上に2匹のアオマダラタマムシがおり、感動する前にその個体も捕まえる必要が合ったのです。
アオマダラタマムシはアオタマと比べると網への反応も鈍く捕まえやすかったですね。クワガタのように網でつついてネットの中に落とすというやり方が効果的でした。
いやはや3年かかっただけ合って過去の虫の中でも比にならないくらいの嬉しさがありますね。
アオマダラタマムシの追加を求めて

今日は条件が良いのかここの環境が良いのか、アオマダラタマムシはいい洞に次から次にヒラタがやってくるように、条件のいい木で個体を取るとそのスペースに別の個体が移動してくるというような行動も見られました。
ウバタマのような待ち行動をやはりしているらしく、警戒心もそこまで高くありません。
初回の発見で上部にいたため、そうした場所にばかり目が向いていると写真にいい個体がいるとの報告がありました。
なんとアオマダラタマムシが目線よりもしたの低いところで張り付いて、待機していました。

webのアオマダラタマムシ採集記で見ていたような光景に自分が遭遇できるとは。
網で捕まえて手の中で見る姿も良いものですが、自然の中で本来はこうして生活しているというような素晴らしい姿が見られるとより嬉しいですね。
しかし逃げないですね。もはやにらめっこしているようなものです。そしてハンドキャッチ。

釣り堀とかでヤマメやニジマス、鮎のつかみ取り何かを見るとなんでわざわざ手で取るんだよと思ってしまいますが、このときばかりは手で取れるって最高じゃん!と手のひらをくるりと返してしまいましたね。
手づかみアオマダラ。あのときの感覚は忘れることはないでしょう。

結果的には総数で言えば20以上はいたのではないかと思われます。潜在的には相当数がいると見られ、まさに局所的な分布の面白さと難しさを体験することができました。
ここで感覚を得られたので、自己開拓したポイントでも見てみたいですね。
アオマダラタマムシの面白さと出現事情
ここからは今回のアオマダラタマムシ観察における個人的に意外だった点を話していきます。

まず天気ですね。このポイントは今回行ってわかったように個体数自体はかなりいるようなのですが、少し前に曇りの日に行ったときには全く遭遇できませんでした。
今季は虫の発生が遅れているようなので、もしかするとアオマダラのピークも遅れていたのかもしれませんが、タマムシらしく天気の条件は重要なのかもしれません。

それからこれもよく言われる通り、太めのアオハダの幹にいることが多かったですね。

イメージとしては2lのペットボトル容器ぐらいのサイズ感が人気なようで、500mlペットボトルぐらいのものにもついていることは多かったですね。
そして意外な点として、タマムシ科には枯れ木や新鮮な材に飛来する傾向のものが多いと思いますが、アオマダラにおいては個体数が多い場所ではアオハダが部分的に枯れていなくてもついていることが多かったです。

てっきり部分枯れしたアオハダの幹にいると思っていたのですが、そうではないようですね。
付く位置は様々で地際から40cm程度から7mぐらいまで見られました。おそらく枯れた場所の位置や日当たりの条件などで変化しているものと思われました。

それから太陽光ですね。アオマダラは意外にも直射日光下ではあまり見られず、太陽光や枝先から漏れた木漏れ日が幹に当たっていた付近の木陰となる場所にいることが多かったです。
クロホシやムツボシのノリでガンガン日が当たる場所にいると思っていたので、びっくりでしたね。

そして時間については16時ぐらいでも全然見つかりましたし、飛来してきてもいました。午前中や日中のイメージが強いタマムシの仲間ですが、今回は日が傾き始めても次々見つけることができました。
こんなふうにじっくり数を見て色々と物思いにふけることができるぐらい初遭遇が充実した物になり、今年であえて嬉しかった虫のナンバーワンがもう決まってしまうかなというぐらいいい時間を過ごすことができました。

アオマダラタマムシはその採集体験も含めて記憶に残るいい虫となってしまいましたね。
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