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北海道のオサムシ図鑑のレビュー。マニア向けだが持っておいて損はない図鑑

北海道産オサムシの図鑑

今年の8月に北海道のオサムシにスポットを当てた図鑑が発売されました。

8月に発売されたばかりの図鑑

その名も北海道のオサムシ図鑑です。オサムシ好きの方や北海道の生き物、固有種のオオルリオサムシの情報などで気になる方もいるかなと思いますので、購入後の正直レビューです。

オサムシ好きにはお勧めできるが当然ニッチ

まず一通り読んだ結論としてはこの本はオサムシの生態を含めた姿を見たいという方向けのものです。

標本、写真どちらも半々くらいでターゲット層がオサムシ好きの中でもちぐはぐに見える

ジャンルとしてはビジュアルブックになるようです。

例えばむし社の図鑑のようにたくさんの標本だけがズラリ、というものではありません。

ルリオサやアイヌキンのカラバリを求めるというよりは、産地別の傾向やそもそもの分布域などの把握に役に立つものです。

私の感想としては北海道といえばオオルリオサムシとアイヌキンオサムシなのでこの亜種をもっと掘り下げてくれればうれしいなと思いました。

複雑な亜種についての分布がわかるのは大きいが、購入後ではバグズデザインのもののほうがビジュアルブックとしては良さそうに見える

正直なところではルリオサ周りの分布事情や亜種の事情、大まかな出現エリアの割り当てなど新しい知見となるところも多く楽しむことは十分できます。

ルリオサとキンオサも標本数はそれなりに多いですし、何点か掲載されているこれらのオサムシの生態写真の部分は標本と合わせてこんな感じなんだととても素晴らしいものです。

もちろん亜種の色の基準などを見ていくのにも役立ちます。

右上のような標本の写真が後半はずらりと並び、ルリオサとアイヌキンは何枚かの写真もある。ここはとても良い。

後述しますが本の後半の標本が種類ごとにずらりと並んでいる部分は図鑑としての利用価値も高く、オオルリオサムシやアイヌキンオサムシをこれから知りたいという方や採集に行きたいという場合には亜種ごとの分布やラベルでエリアが分かりますので有用かなと思います。

私のように標本として集めている場合でも基準となるカラバリや変異の特性なども読めますので、この点はとても嬉しいものです。

エゾマイマイやコブスジアカガネオサムシ、セアカなどの北海道で見られるものや北海道で記録があるオサムシ類の知識は非常に増やせますね。

北海道のオサムシの基本が抑えられるという意味では非常に良いビジュアルブックです。


しかし価格に対しての満足度が高いかと言われるとちょっと微妙です。という話をします。

北海道オサムシ図鑑の不満点

この図鑑は3500円程します。

山渓、野に咲く花などの植物シリーズ、日本の野鳥などは4000円台。当然図鑑と銘打てば比較対象である。

自然のジャンルで言うと必然的に比較対象は山渓の図鑑辺りが並んできますよね。ニッチなものは値段が高くなるといえばそうなのですが、
山渓と比べると情報量はとても少ないかなと思わざるを得ません。

巻頭から末尾まで見ていけば虫好きならば30~40分位は読めるかもしれませんが、そうでない人ならば10分もかからずに読み終わるのではないかなと思います。

これは賛否両論になることを前提としつつ私見を述べると、私は図鑑には情報を求めるタイプの人間です。

この本は開幕から1ページの見開きでオオルリオサムシの生態写真を含めた写真が大々的に掲載されており、これが全ページの1/3程度を占めています。

図鑑と現地のストーリーを掲載するある種のストーリーブック的な展開です。

見開きの写真で全ページの半分は図鑑の情報量としてはどうなのか

だいだい的な写真を載せた後に北海道オサムシの図鑑という感じで続くのですが、私にはこれが合いませんでした。

掲載されている生態の写真は素晴らしいです。

ルリオサの幼虫がカタツムリを捕食している様子、川の水辺で見つかったルリオサの一枚、苔むした山地で薄暗い中光沢を放つルリオサの姿など確かにいい写真は多いです。

生体が載っているものは特に標本での紹介でのルリオサやアイヌキンの所のものは素晴らしい。やや大きめな写真で見開きほどページも取らず、生きている姿が読める

オサムシ好きならばおお!と思いつつ私は写真も素人ながらやっていますので、これ取るのは苦労するなぁと思います。

ただ、北海道の自然を伝えるための風景的な写真が多く、冬はこんな感じで、原生林の姿があってというようなルリオサの環境を伝えるための写真も多いです。

あくまでオサムシ類を見たい私からすると風景写真多すぎるだろうという風に思ってしまいました。

写真は見開きを占めているものも多いので、見開きではなく1ページに一枚とかだともっと写真の枚数も増やせてこんなシーンに出会ってみてぇ~!となるんでしょうけどきっと見開きにすべき理由がなにかあったのだとは思います。

例えば「夏の水辺」みたいな感じ。あまり好きではない。

ストーリー的に必要なのはわかりますが、どうなんでしょう。

私は他にもオサムシ類が自然下で活動している写真が載っていてくれた方が嬉しいなと思いましたね。

いかんせん価格が安くはなく、高級図鑑の山渓に並ぶもので必然的に比較してしまうため、数十分で読み終わってしまい読了感はボリュームがもっと欲しいなぁと思ってしまいました。

ルリオサ関連の情報でほほぉーという点と、うーんという感情が入り混じっていました。

後半の部分はとても良いです。今後も使う機会があると思います。

後半は情報も多く良いのですが、前半部には個人的には疑問が残りますね。

いい写真を撮るには労力がかかるというのはとても分かります。張り込み、ようやくとれたその生態の姿は非常に価値があるものです。

秋の空。みたいな。出来たらオオルリ以外にもコブスジアカガネとかセアカでも生態写真があればよかったなぁ

そうした生態の写真が多くてこの値段なら納得がいくものですが、正直なところこの価格でその内容はもっと詰められるものがあるんじゃないかと思いましたね。

とはいえ北海道でマイナーなオサムシ類を集めた図鑑は貴重なものです。オサムシ類や綺麗な虫が好きな方は手に取ってみてもいいのではないかなと思います。

その際にはネット通販は使わず、例えばインセクトフェアのような昆虫イベントに足を運んでこの本の中身を見てから購入することをお勧めします。

個人的にはやはり界隈で有名な人が推薦しているものは気を付けるべきだなと思いましたね。
〇〇推薦みたいなもので大当たりの記憶はほぼないです。

写真家と採集者やコレクターでの視点の違いというか重要視するポイントの違いが学べました。

そのうち日本産オサムシ図説やバグズデザイン様の面白そうなオサムシブックも購入してレビューしたいと思います。

あくまで何かに属さない一自然ブロガーの意見ですので、この本に興味がある人はこんな意見もあるんだな程度にとどめてください。

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図鑑として情報量がとにかく多い山渓の図鑑。価格は4000円ほどしますが、読み通すのが大変なぐらい詳細がわかる迷ったらこれを変えな図鑑です。