高尾でヨコヤマヒゲナガカミキリを採集するなら
高尾山のヨコヤマヒゲナガカミキリ(以下ヨコヤマ)採集は外灯ですると言うのが通説とされています。
今季10度に渡る夜高尾外灯採集でのヨコヤマの不発から、外灯採集への不信感が生まれました。
そこでヨコヤマの生態に合わせたイヌブナルッキングをした結果、念願のヨコヤマにしかも3匹も遭遇することができました。
(誇張ではなくちゃんと3匹取れました)
今回は高尾のヨコヤマ採集ではイヌブナルッキングをすべき理由を説明していきます。
高尾山のヨコヤマヒゲナガカミキリ
8月24日、秋の気配漂う夜のイヌブナの根本にてヨコヤマに遭遇することができました。
ブナの樹皮に擬態すると言われている大理石のような美しい模様は、イヌブナの樹皮にいるとあまりにも目につくというのが初見の印象でした。
金属光沢を持っているわけでもないのに、今まで見てきたカミキリやタマムシなどよりも輝いて見えました。
高尾のヨコヤマ採集においては外灯下で拾うケースが多いと思われますが、生態を理解して出会うことにより彼らの自然下での生き生きとした姿を感じることができます。
何より自身の力で見つけることができたという感動がとても嬉しくなります。
ヨコヤマヒゲナガカミキリの生態について
ヨコヤマはイヌブナの生木を食べるカミキリです。
昼間は木々の高い所に生息し、日没頃になると♀は産卵のためにイヌブナの根本に降りてきて産卵行動を取るとされています。
♂に出会うためには交尾のタイミングを狙うか、外灯が現実的な選択肢となり、♀の場合には産卵のために降りてきた根本にいる個体をルッキングで捕まえるというのが王道です。
イヌブナにおいては日没直後の黄昏時が採集においていいタイミングと言われていますが、日没付近で探せる時間は限られており、この点には疑問を持っていました。
そこで今回は黄昏時~夜間においてもイヌブナのルッキングを行い外灯は一切無視した所、3匹の成果を上げることに成功しました。
この日の活動時間は17:30~21:15の僅かな時間でした。
ヨコヤマ探しのポイントについて
ヨコヤマヒゲナガカミキリはイヌブナのヒコバエを後食すると言われています。
故に第一回のヨコヤマヒゲナガカミキリ採集記では新成虫出現時期の7月下旬の黄昏時に、イヌブナのヒコバエを見ていくという採集方法を選択しました。
pljbnature.com
時期の進んだ今回は産卵のための根本にポイントを絞り、ひたすらイヌブナの根本を見て徘徊しました。
結果として3匹ともイヌブナの地際30cm以内の根本にて目にすることができました。
外灯採集は受動的な採集であり、ルッキングの精度などの実力もありますが、出会えるのかどうかには運の要素が大きくなりがちです。
一方で生態に合わせたイヌブナルッキングはこちらから彼らの生活圏に入っていく能動的な採取方法です。
運も含まれますがヨコヤマのいそうなイヌブナの雰囲気や場所などの情報が自身に積み上がっていき、成果が上がらなくても次に生かせる情報を得られるというのがやっていて楽しかったです。
方法のポイントはシンプルで、黄昏時から夜間にかけて根気よくイヌブナの根本を見ていくというものです。
しかし外灯採集にはない事前に付きそうな木(根本が太い、カミキリ加害痕、脱出痕)の選定をしておくなどの採集における戦略性がとても楽しめます。
根本が太い
生木に産卵するヨコヤマは根本の太いところに産卵することが知られています。
今回見つけたヨコヤマも例に漏れず、ぶっといイヌブナの地際30cm程度の所で発見しました。
私が示せる例は僅か3例だけですが、3匹とも根本にいたことからイヌブナルッキングにおいては1つ考慮してもいいのではないかと思います。
カミキリ加害痕
例えばナラ枯れで衰弱した木に枯れ木性のカミキリやタマムシの仲間が来るように、彼らは樹木が放つ何かしらの傾向を汲み取っています。
推測でしかありませんが、イヌブナにおいて他カミキリの加害痕があるものにはヨコヤマも来るのではないかと推測します。
今回の例ではやはりどれも幹にカミキリ加害による樹液が流出していました。
脱出痕
ヨコヤマは地際に産卵する性質から成虫の脱出痕も地際で見つけることができます。
その形はゴマダラカミキリなどと同じく丸い形をしており、イヌブナの地際を見ていくと見つけることができます。
衰弱ブナ科に相次いで産卵するシロスジカミキリのように、既にヨコヤマらしきカミキリに加害されているイヌブナはヨコヤマが次いで訪れるのではないかと推測しています。
ルッキングにおける採集時間について
1匹目と2匹目は黄昏時の終わり際で19時の前後でした。
3匹目は20時前後でした。
落とせそうな情報はこれくらいです。参考になれば幸いです。
ヨコヤマを採取して(感想)
このブログの高尾山昆虫採集記では人気のミヤマクワガタを扱ってきました。実はミヤマはサブターゲットであり、本命はずっとこのヨコヤマの初採集が目標でした。
夜高尾に計11回通い、戦略を練ってイヌブナの根本でヨコヤマの姿を見つけたときの感動はこれまで出会った虫の中でも一番のものでした。
ヨコヤマは簡単には出会えず(もしかしたらルッキングでは楽なのかも?)、しかし高尾においては外灯とルッキングの選択肢があり、出現時期による翅の色彩の変化も楽しめ本当にいいカミキリです。
写真でも大理石のような美しさは分かりますが、実物の放つ艶は本当に金属光沢を持つ虫に負けていません。
この記事や私の採集記で、高尾の昆虫に興味が湧いた方にはぜひこのヨコヤマヒゲナガカミキリという高い壁に挑戦していただき、その素晴らしい美しさを自身の目で確かめていただけたらと思います。
ヨコヤマヒゲナガカミキリとのたわむれ
8月下旬ではボロの個体も多く、跗節が欠けていたり触覚が欠けていたりします。採取では完品を求めている方もいますが、野外で生きてきたそれらしい姿もwild採集の醍醐味だと思います。
ヨコヤマは顔が可愛いと言う人がいます。確かにつぶらな目をしていますね。前回のセンノキや、ホシベニカミキリなどと似た目をしているなという印象です。
樹木にくっついて生活しているヨコヤマは縦方向にしがみつくと落ち着くようです。逆に平面が嫌いなようで、平らな所に置くと落ちつかず、歩き回っていました。
カミキリらしく頻繁に飛翔します。白っぽいカミキリと言うのがよく分かりますね。
艶感が凄いですよね。一応昆虫ゼリーなどで飼育できないのか試してみましたが、ゼリーは食べませんでした。
記念に噛まれても見ましたが、痛いくらいで皮膚がめくれたりはしませんでした。
今回の採集でなんとなくコツを掴むことができたように感じます。今年の夜のヨコヤマ採集は終了にしますが、来年はヨコヤマの傾向を探って行けたらなと思います。
最後に手を振ってくれているようなヨコヤマヒゲナガカミキリの姿にて、高尾山ヨコヤマヒゲナガカミキリ採集記をおしまいにしたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
全11回の情報が詰まったヨコヤマ採集記。よろしければぜひ。
pljbnature.com
7月下旬の調査編
pljbnature.com
8月中の現地調査編。似たセンノキカミキリとの遭遇です。
pljbnature.com
高尾山の人気昆虫編ということでアオタマムシもぜひ挑んでみてください。
pljbnature.com
高尾山昆虫観察記一覧です。夜の高尾を訪れるならぜひ。