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ダンゴムシの食べ物は自然下では落ち葉? 土壌改良に大きく貢献するが、鉢植えや庭にはいけるのか?

ダンゴムシと土


ダンゴムシと言えば知らない人はいない生き物です。

足が気持ち悪いなどのマイナスイメージが強い生き物ですが、土壌生態系や土づくりにおいてとても重要な生き物なんです。

今回は落ち葉などを分解して栄養を返す分解者としての側面と土壌改良に貢献する面の両方をお伝えし、鉢植えや庭に導入できるのかお伝えします。

土壌生物ダンゴムシとは?


誰もが知っている多数の足を持つ生物です。

主に湿度のある土壌に生息し、落ち葉や花だけでなく死んだ生物などの有機物全般を分解し、土中に返します。

土壌において分かりやすいのは、カブトムシが発生する腐葉土の生成であると思われます。

土壌は菌類やカビなどの目に見えにくい生き物が多量に存在するのでダンゴムシだけの貢献ではないのですが、落ち葉をかみ砕いてウンチにし、それを繰り返すことで有機物に富んだ土作りに貢献します。

ミミズやダンゴムシが繰り返し食べることで土の堆積が1.5倍2倍に~膨らむといわれています。

(土壌動物が作った肥沃な腐葉土)
ダンゴムシは有機物の残る残渣を食べます。餌などがなかったりした時なのか不明ですが、時たま雑草も齧っています。

もし親子でダンゴムシを見つけたい場合には背丈の高い草むらや落ち葉の堆積している雑木林などを掘り返すことで簡単に見つけることが可能です。

落ち葉や死んだ生物などを分解し、土壌も改良


よく言われる肥沃な土壌の団粒構造を作るには、植物の根と土壌動物からなる根圏への理解が必要不可欠です。

しかしこれはなかなかに複雑です。

雑木林では毎年落葉樹(クヌギやコナラ)が冬季に葉を落とします。

毎年葉が落ちてしまえば落ち葉は堆積する一方ですが、そうはなりませんよね。

目に見えない土の表面下でダンゴムシやミミズといった大型の土壌動物が365日落ち葉を分解しています。

落ち葉というのは栄養分でいうとかなり乏しい食料です。

秋に紅葉という現象が起こりますが、葉を落とす前に植物は葉に残っている窒素などの栄養を吸収してしまいます。

そのため落ち葉は出がらしの様に養分が抽出されてしまっているのです。それでも冬季の貴重な栄養で、利用しない手はありません。


栄養に富んだ土1gには何十億もの生き物が生息しているといわれています。

しかしそれらにとって植物の遺体である落ち葉の硬い外角を作る成分であるセルロース(葉食生物の糖としての栄養源)は堅すぎるのです。

(人が触っても硬いですよね)
ダンゴムシやミミズも落ち葉そのものを最初から分解できるわけではありません。

彼らは腸内に堅いセルロースなどを分解する共生菌をもっており、牛の反芻のように食べて出して(うんち)を繰り返すことで落ち葉から炭素や窒素などの必要な栄養分を取ります。

様々な生き物が協力していくと、段々と形が崩れてきます。

そして土中の生き物たちも分解されて吸収しやすくなった栄養分を求めて菌糸などをのばし集まります。

土中ではこういった栄養の循環が起こっており、植物もまた自身にない栄養を求めて土中の菌糸と結びついて不足しがちな栄養を集めます。

いわゆるアーバスキュラー菌根菌(AM菌)が代表格です。

この際に光合成によって生成した糖類を土中に放出しており(多いものでは60%近くを土中に出しているとも)様々な元素や多糖類が根を中心に集まってふかふかの土ができています。(かなりざっくりとした説明です)

心当たりで例えれば、多様な雑草が生えた場所の土が異様に柔らかいという例が当てはまります。

ダンゴムシが分解したものは地中のネットワークを通じて栄養だけでなく、土の水はけや吸収など物理的な改善にも貢献しているのですね。

ダンゴムシは庭か鉢植えか


ダンゴムシは自然下の様々な死体を栄養に還元してくれる生き物で非常に有意義な生き物なのですが、かといって鉢植えのような場所への導入はよくないです。

私のベランダのツツジです。

土中の根圏生成のために鉢植えですがマメ科やカブなどのリビングプランツを植えて栄養の競合や水の乾き具合などのデータ集めに協力してもらっています。

ツツジの花がらや、剪定残渣、時折植えてあるクローバーをちぎって漉き込み、リンが豊富な骨粉油粕をあげています。

ダンゴムシなどの土中生物は夏になると活性が特に上がり、一年間で50~60㎝位の高さの落ち葉を分解してしまいます。

鉢植え環境ではダンゴムシの分解速度に残渣の提供速度が間に合わないため、メインの植物にも食害が出る可能性があります。

今回はダンゴムシがいなくても1cmチョイの残渣は無くなってしまいました。ダンゴムシがいた場合には数日でなくなりそうです。

庭環境には不快でなければおすすめ

脚が多くて不快でなければダンゴムシの管理はとても楽ちんです。

庭であれば乾燥した植物の残渣を土に漉き込んでしまえばどこからかやってきて分解し、定着してくれると思います。

私も試作として今年はツツジの植え込みに花がらや落ち葉、枯れ枝などを置いて土の改善をしてみました。

その結果、撒いて1月ほどで表層のダンゴムシ類が増加し、土を掘るとミミズがいるようになりました。

一番大きい実感としては生物多様性の増加ですね。

土に有機物が供給されて豊かになったことで、ミミズを食べにアナグマが来るようになりました。

畑で見ればアナグマの来訪はマイナスなのですが、これまでは来ていなかったので面白いなと思います。

また、土表面の有機物増加に伴ってアリの個体数も増えました。

ツツジ類をアリが頻繁にパトロールしてくれるため、ツツジグンバイなどの被害が減少し、葉を食べる幼虫ルリチュウレンジハバチの被害が激減しました。(90%減)

6月時点では昨年はツツジの天敵であるベニモンアオリンガの被害がひどかったのですが(40%くらい食われていた)、今年は6月時点で5%ほどと目に見えて効果を感じましたね。(体感です)

ただ夏以降暑さでアリの巡回がなくなり、結局40%くらいはやられました。

ダンゴムシたちにより落ち葉が分解されていくと有機物と土や土中の微量元素がくっつきあって根を中心とした土壌団粒が形成されます。

(カビ類も実は有機物を分解する重要な存在です。)

この団粒は湿度が100%に近い非常に湿潤な環境で、水分保持に大きく貢献します。

私の鉢はダンゴムシの導入はしていませんが、マメ科のリビングマルチにより土中の環境を改善してみた結果、水持ちが明らかによくなりました。

具体的には朝夕一回ずつ上げなければ乾いていた土が1日上げなくても大丈夫に変化しました。

団粒の形成にはミミズやダンゴムシが大きく貢献します。

しかし分解が早いとはいえ良質な腐食土がたまるスピードは非常に遅く、年に1~2mm程度しかたまりません。

(春に積んだ分は目の荒い鹿沼土を抜けてしまったようです)

土壌の改善は正しい方法で取り組んでも長期戦になってしまいますが、ダンゴムシやミミズや根圏を理解することで改善していくことが可能です。

今では土壌改良剤などもあります。

土壌改良材はそれ自体が作用するのではなく、今回紹介した土壌動物の活動を活発にするものです。

市販の腐葉土などもダンゴムシを活用することで排水性や水分保持など物理的にも栄養的にも改善が可能です。

もちろんいなくても菌類が頑張ってくれますが、分解速度はだいぶ違うでしょうね。

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土壌と地表を結ぶフン虫の紹介です。見た目が美しくとっつきやすい虫ですね。記事中ではオーストラリアの牛肉生産はフン虫のおかげであるといったちょっと人に話したくなるようなコラムも取り入れています。

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フン虫のかっこいい部門代表です。外国産カブトムシの小型種という印象のいい虫です。

参考文献 生きている土壌(エアハルト・ヘニッヒ)