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ボンド草の正式名称はコニシキソウ! 毒性のある白い液を出す植物の駆除にはアリが鍵?

白い液を出す有毒植物


植物にはそれぞれユニークな特徴を持つ者がいますよね。中でも毒のある白い液を出すとされる通称ボンド草(正式名称コニシキソウ)はとても印象強いです。

今日はボンド草の種類の紹介とその毒性の検証、蟻をうまく利用する生態などを紹介します。毒は強いのでしょうか?




生態的特徴

ボンド草は白い液を出す植物の通称です。

一般的にはコニシキソウのことを指していますが、白い液を出すという特徴はトウダイグサの仲間にたびたび見られる特徴の1つです。

科として有毒な植物であるため、哺乳動物の食害などに会いにくく、平地から山地まで意識してみると意外と目にします。

発生は7月頃から始まり、荒れ地や畑地、コンクリの隙間などなぜそんなところから生えてきた?と突っ込みを入れたくなるような場所からも発生します。

この科の植物はアリをうまく利用するものがおり、種子の散布や自身の防御のためにありに来てもらうための戦略を取ります。

毒性

ボンド草は毒があるというのが通説とされています。

確かに同じ科の代表種であるトウダイグサは明確に毒の成分が解明されており、人体に有害であるとされています。(テルペン類)

ボンド草には身近な種としてコニシキソウとオオニシキソウの2種類があります。どちらも外来種であり、日本のトウダイグサ科とは異なる毒の性質があるかもしれません。

2種の毒性に関しては面白い研究があり、一部紹介しますと、綿羊の飼料にコニシキソウとオオニシキソウそれぞれを粉砕したものを0,5,7,10,15,25,50,100%配合し綿羊の探索時間(餌が食べられるものか判別)及び採食の傾向を図った実験があります。

コニシキソウで100~10%のもので忌避され、オオニシキソウでは100%のものは忌避されましたが、75%含有までは食べられたという面白い結果が出ています。

ここから推測するにコニシキソウはオオニシキソウよりも哺乳類への経口毒性が強いと推測することができます。

対象が羊ではありますが、含有飼料への忌避効果が見られた以上何かしらの毒性分は含まれているので、あまり素手では触らないほうがいい植物といえるでしょう。

webの情報を見ればかぶれる、水泡ができるといった情報も出ています。

そこで実験として僅かではありますが手にボンド液を塗りつけて見たところ痒みや水泡、かぶれなどの症状は出ませんでした。

弱毒性の毛虫のように人の体質によって効果が違うのかもしれません。


類似の植物

オオニシキソウ


コニシキソウと同じ性質で同じく外来種です。背丈は大きいと50㎝近く立ち上がり、10㎝がせいぜいのコニシキソウと比べるとだいぶ大きいです。

葉や茎を切ることで同じくボンド状の白い液を出します。草地の雑草としては普通種で、夏の時期であればコニシキソウと同様に普通に見ることができる種類です。

ナンキンハゼ

トウダイグサ科の樹木です。

こちらも外来の樹木で、紅葉がとても美しいためによく街路樹や庭木として導入されます。コニシキソウと形は異なりますが、葉の付け根に蜜腺を持ち、アリをおびき寄せるという戦略を取ります。

似たような戦略はいくつかの樹木で見られ、身近なものでは桜が分かりやすいです。

こちらも枝などを折るとわずかながら白い液が出ることから有毒植物であるとされています。

ナツトウダイ


山地で見られるトウダイグサ科です。シカの多い環境でも下草として食べられずに残っているところから、やはり哺乳類に対する毒性を持っていると思われます。

かなり変わった蜜腺を持ち、三日月状が面白いです。

アリとの共生関係

コニシキソウはアリとうまく共生しています。

トウダイグサ科の植物は花の蜜が多かったり、アリをおびき寄せるために蜜腺から蜜を分泌したりします。

コニシキソウにおいては花の蜜が多く、種子散布の際に種においしい部分をつけることで種の運搬もアリに頼っています。

(アリに種子散布を頼る)

毒の成分を持つために食害には強そうなものですが、アリを寄せているとなるとこの毒の成分は虫には効かないタイプのものなのかもしれませんね。

駆除するにはアリが鍵

あらゆる場所で発生するコニシキソウは前述のアリによる種子散布が影響しています。

畑、コンクリの隙間、そういった場所はよくアリたちが巣を作りますよね。エライオソームというおいしい部分をつけた果実をアリに運ばせることで、コニシキソウの仲間は移動し、発芽するのです。

コニシキソウを引き抜いたらアリの巣を破壊してしまった。という事例は結構あるはずです。 

これこそが隙間的な環境や端でよく目にする理由です。

コニシキソウは幅広い環境に適応できる強い植物です。

この植物だけを除去しても周囲にコニシキソウが残されていればその種をアリたちが再び運ぶことでまた出てきてしまうのです。

アリたちは生態系において大切な存在です。アリを根こそぎ倒すということはせず、外来の植物であるコニシキソウを根こそぎ除去する方が環境的にも良いと思います。(侵略的外来種などではないです)

その際には、彼らの対哺乳類と思われる白い毒液に苦労させられるはずです。これもまた1つの戦略ですね。
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蜜によりアリを呼び寄せるカラスノエンドウとの共生関係も面白いですよ。
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話の途中で出てきたエライオソームを持つ代表的な植物がスミレです。よくコンクリに生えてますよね。
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ギンリョウソウもエライオソームを持ち、ゴキブリに運搬を頼る植物です。不思議ですよね。