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鮮やかなオレンジ色のツツジはレンゲツツジ! 強力な毒性を持つツツジを紹介

珍しいオレンジのツツジ

春の代表的なツツジの中でも別格の鮮やかさを誇るのがレンゲツツジです。

南国チックな色合いのレンゲツツジ。美麗種

南国を連想させるかのような美しい花を見て庭木として欲しくなったり、あの美しい花はどんな種類なの!?と疑問を持つ方も多いことでしょう。

今回の記事では高山帯の代表種であるレンゲツツジを紹介します。

レンゲツツジとは?

レンゲツツジはツツジ科の低木であり、同じツツジの仲間であるクルメツツジ(小輪)やヒラドツツジ(大輪)と比べ、その毒性の強さが話題に挙がることが多い1種です。

新緑と映えるツツジ。これで毒性が強いのが面白い

春のツツジには常緑性のものが多いですが本種は落葉性であり、冬季には全く葉を付けません。

花期は平地では4月中~下旬頃とクルメ系に比べるとやや遅いタイミングで咲きます。一方で本来の自生地である高山帯では6月頃になって咲き始めます。

つまり4~6月頃まで楽しむことができます。

純オレンジなツツジは他にはない

オレンジ色のツツジを付けるものは珍しく、例えばピンクベースに赤が強くてオレンジっぽく見える(ヤマツツジ)や赤ベースだけど個体の色彩変異によりオレンジっぽく見える(オンツツジ)ものこそあれど鮮やかなオレンジ色を見せてくれる種という意味では代用の利かない1種です。

ツツジ科の中でも観察目的で圧倒的におすすめできる種類と言えます。

品種としては黄花種のキレンゲツツジがいます。

レンゲツツジの毒は強力?

厚生労働省の自然毒のリスクプロファイルによればシャクナゲ類にはグラヤノトキシンという有毒成分が含まれており、血圧低下などの急性症状が現れると指摘されています。

サラダに入っていたら確かに映えそうではあるが、花での食中毒事例がある

この症例の中にレンゲツツジの生花にドレッシングをかけて食べたところ1時間後に視覚異常や嘔吐の症状が出たとの記述があることから哺乳動物に対する毒性はかなり高いと思われます。

諸外国の事例はシャクナゲ類によるものだと考えられますが、同じ毒を持つものから得られた蜂蜜で中毒を起こす事例も確認されており、ツツジ類の花蜜をすうという行動も避けた方がいいですね。

特にレンゲツツジに関してはしっかりと花の蜜をすった家畜や児童が中毒したと名指して記述されています。

ミツバチなどよく訪れているものの、その蜜にも毒性がある

花1つで中毒を起こすのですからかなり強そうですよね。

この毒性の強さに関してレンゲツツジの山羊に対する治療法と予防法という古い論文(1953)の中でその毒は開花時の葉と、花にあることが指摘されています。

高原に生え、シカ不嗜好性であるためかつては群落を形成していたとされる

高原環境に生えるレンゲツツジは放牧地と重なるケースも見られ、放牧中の山羊が食べたレンゲツツジを例に中毒症状が見られています。
それによれば 「中毒にかかった20頭の山羊はいずれも放牧2時間内外で畜舎に戻り2~3時間後に全部発病している.従ってこの時期には少量採食しただけでもかなり高率に発病するものと思われる」(酒 井 義 正・渡 辺 昇.1953)と記述されています。

自然毒のリスクプロファイルにて花を食べて中毒を起こした事例があるように山羊においても少量の摂取で中毒を起こしている様が記述されています。

美しいものには裏があるということか。他のツツジではここまでの毒の話は聞かない

山羊の例を見ればその症状は神経毒による呼吸困難を代表的に流涎や発汗、39℃程度の発熱などなど様々な症状が現れることが指摘されており、起立困難なども現れるそうです。

こうした事例を実際に文字でも見ておくと、ツツジ類の蜜を舐めるという行為が結構危険なものであったことが分かりますね。

レンゲツツジは特に毒性分が強いと言われますがグラヤノトキシンはツツジ科の植物に広く含まれているとされます。(程度は不明)

ツツジの仲間は毒があるとされるが、種別の程度は正直不明

このトピックを読んだならば避けるべき行為であることがよく分かりますね。

一方でそんなレンゲツツジの若芽が食害されるという事例も山梨県では観察され始めています。
進化論で語られるようにツツジ毒に抵抗性の強いシカが現れていたりするのかもしれませんね。


高山帯の代表的なツツジ、しかし平地でもいける

レンゲツツジのお花はあまりにも美しいので、育ててみたいという方も多いかと思います。

レンゲツツジは庭木としていけるのだろうか? 高山性のものは難しいものが多いが?

高山種の植物を平地で育てるとうまくいかない場合が多いのですが、レンゲツツジに関しては平地でも問題なく咲かせることができます。

例えばツツジの仲間でとても人気の高いゴヨウツツジ(シロヤシオ、アカヤシオ)という種類がいます。

この植物は平地になると何か要因があるらしく花付きがかなり悪くなります。

同じ高山帯でもレンゲツツジは乾燥にだけ注意すれば十分育てることが可能です。高山帯の植物は雪が分厚く積もることにより逆に保温され、寒風などから身を守ることが知られています。

水切れによる枝枯れ、寒風による枝枯れが多いのでそこに注意

平地の場合そうした雪により守られていたガードがなくなってしまうので、冬場の乾燥した風に気を付けましょう。

また、観察している限りではツツジらしく水切れには弱い印象です。他のツツジと同じく根の張りはかなり弱いようです。幹を動かすことで簡単に抜けてしまう事例などを体験しました。

レンゲツツジの観察をしていて特に要因として挙げられそうな要因はこの2つですね。平地でも問題なく開花してくれる代わりにちょっと弱りやすいといった印象でしょうか。

しかししっかりと花芽を付けてくれれば他のツツジよりも鮮やかな美しいオレンジを見せてくれます。頑張りがいのある植物だと思います。


引用文献
山 羊 の レ ン ゲ ツ ツ ジ 中 毒 の 治 療 と 予 防 法 (酒 井 義 正*渡 辺 昇)

pljbnature.com
常緑ツツジの花つきに関して、花数を増やしたい方や咲かない方に花数を増やす方法を紹介しています。一見の価値あり!