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ミニトマトのような実をつける植物。道端に生える有毒植物、イヌホオズキの仲間

雑草にトマトがついている?

イヌホオズキの仲間の未熟果

秋は果実がなる時期です。町中を歩いていると、草地でもないのに生えている丈夫な植物に、黒や緑色の小さなトマトがついているのを目にするはずです。

甘い果実にも見えるこのトマト状の果実、実はイヌホオズキの仲間で有毒な植物です。

その毒は発芽したジャガイモに含まれるソラニンという成分で非常に強力なものです。

今回の記事では身近に生える美味しそうな有毒植物、イヌホオズキの仲間を紹介し、どんな植物なのか紹介します。

イヌホオズキの仲間とは

イヌホオズキの仲間は野菜でおなじみのトマトやナスと同じナス科の植物です。

ナス科らしい葯がくっついた花

在来種もいますが我々が目にするもののほとんどは外来種のアメリカイヌホオズキやテリミノイヌホオズキになります。

これらの判別は複雑で面倒なので、有毒植物としてイヌホオズキの仲間というカテゴリーで紹介していきます。

実はトマトみたいに複数付く

風船のような果実をつけるホオズキは日本人におなじみだと思います。あの植物も同じナス科で、似た要素は科が同じくらいなのですが、イヌホオズキと名付けられています。

イヌナズナやイヌザンショウなど植物につくイヌはあまりいい意味ではなく、使えない、役に立たないなどの意味があります。

使えないホオズキと考えるとちょっと悲しいですね。

ナス科らしくバナナのような特徴的な花を多数つけます。

バトミントンのシャトルにも見える

バナナに見える部分は花粉を蓄えている葯(やく)という部分で、一部のナス科は葯が密集することでバナナのように見えます。

花色は白や紫が多い印象です。

開花期は夏~秋ごろで果実は9月~冬頃まで見られます。

実は最初は緑色ですが、熟すと黒っぽくなってきます。

見た目はおいしくなさそうですが、子供が口に入れないよう注意が必要です。

コンクリや舗装路沿いでよく目にする

出現環境は幅広く、畑地や舗装路の林縁、コンクリ沿いなどでよく目にします。

これには理由があり、外来種の植物の侵入経路としては工事作業などで持ち込まれた砂などに種子が混入しているというケースがよくあります。概念的には埋土種子が近いでしょうか。

植物の種は土中で光がなくとも休眠状態に入り、土砂のかく乱などで日が差したり地温が上がると発芽します。

そのため街中はこうした外来種が入りやすくなっているため、見かける機会が増えます。


外来種のアメリカイヌホオズキ

ナス科の外来種であるイヌホオズキの仲間はなぜここまで市街地に生息を広げたのでしょうか?

見かける外来種は大抵花つき、実付きが良い

まず日本に定着している外来種はタフであるという視点を説明します。実は定着していないだけで日本にはたくさんの外来種が入ってきています。

その多くは四季や降雨量などの本来の生息地と異なる環境条件に適応できず死んでいきます。

トマトのような実をつける外来種、コミカンソウ。

その条件下でも適応できた選ばれし外来種たちは多くはないため、似たような外来植物を目にする機会というのは多くなります。

特に都市部のコンクリート環境は過酷で、空中湿度は低く空気も木々のある環境と比べ汚染されています。そのような環境に適応できるものは多くはないのですね。

定番の外来種ヨウシュヤマゴボウ

結果的にオシロイバナやヨウシュヤマゴボウ、アメリカイヌホオズキといった特定種が街中では見られます。

トマトのような実はナス科

イヌホオズキの仲間を始めとするナス科の植物は丸い実をしています。この特徴的な果実から比較的種の特定は簡単です。

ナス科の実はかなり特徴的で分かりやすい

ナス科の一部の植物が丸い実をしているのは種子散布の戦略です。


野外で目にするナス科植物は多くが丸い実をしています。

つる植物も多いナス科は丸い果実を落下させることで実を遠くに運び、種子を運搬する戦略をとります。

秋のナス科、ヒヨドリジョウゴの赤い実

これは重力散布と呼ばれる散布方法で、かなり多くの植物が行う戦略です。

足を持たず動けない植物が種を飛ばすために進化の過程で生み出したものと考えると中々素敵なものに見えます。

とはいえ落ちた実は食べられることもほとんど無いようで、熟した後は乾燥によってはじけて散布しているようです。

イヌホオズキは有毒植物

ナス科植物は野菜として食べていることから毒がないものと捉えがちです。

しかし自然下に生えている多くのナス科植物は毒があります。

イヌホオズキの仲間は食中毒でおなじみのジャガイモの芽が持つソラニンという成分を含んでおり、全草にこの成分が含まれているとされています。

全草に毒があるので注意

イヌホオズキ類の毒性についてはあまり多くの情報は出てこないのですが、家畜に与える飼料への有毒植物混合の事例によるとイヌホオズキの新芽や果実にソラニンが含まれているという指摘があります。

家畜へは運動失調、痙攣、昏睡などが起きるということで、やはりソラニンは強烈な毒ですね。

まとめ


イヌホオズキの仲間はミニトマトのような果実を付け、花はバナナのような物がついています。

その実は有毒でじゃがいもの芽でよく中毒を起こすソラニンという成分が含まれており、誤飲すると痙攣などを起こす可能性があります。

外来種としてメジャーな植物で身近な場所でも容易に観察ができるナス科の植物です。


参考文献
牧草・飼料作物および雑草に含まれる有毒物質と家畜中毒

pljbnature.com
同時期に見られる外来種の有毒植物です。ブドウのような美味しそうな植物で、誤食の事故に注意が必要です。
pljbnature.com
有名な2種の外来種を例にその種子散布の戦略などを紹介しています。ブタクサはなぜ花粉症のもとになるのでしょうか?
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