春に目にする身近な黄色の花、誰?
春にはそこかしこで黄色のお花を目にします。
似たようなものも多くこの花はなんだ?と疑問に思う方も多いことでしょう。
今回の記事では春に身近で目にする黄色いお花をピックアップし、生き物とのつながりや彼らの戦略などを紹介していきます。
これをきっかけとして植物に興味を持ち、図鑑などから自然の世界に踏み入ってみましょう。
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春は黄色いお花が多い?
まずマメ知識として春には黄色いお花が多いです。これは植物側の戦略であり、受粉をより成功させるための戦略であると考えられます。
農研機構のHPによれば植物の黄色色素は3種の色素によるものが大きいと指摘されており、それぞれカロテノイド、フラボノイド、ペタレインの3種の色素に由来することが分かっています。
このうち花の色に由来するものはカロテノイド類によるものが大きく、カロテノイドは可視光線(虹の7色)の特定域の波長を反射するためにその色に見えます。
カロテノイドは黄色の色を反射しているので、紫外線などは吸収していると考えられます。
我々の眼に黄色に映るお花は、紫外線を視認することができる虫からすると別の色に見えており、これにより訪花性昆虫に蜜源があるとアピールしているのですね。
一方で、サンプルはありませんが紫外線透過フィルターなどで花を見ると同じ色に見える花でも中心部と外周で色が違う場合があります。
これに関して明確な根拠となる出典元を見つけられませんでしたが、フラボノイドは紫外線を反射するとの記述が多く見受けられました。
黄色いお花は別の黄色の色素を利用して訪花性昆虫により効率的にアピールしているのだと思います。
こうした知識を押さえておくと、植物観察がより楽しくなるはずです。
草本で黄色のお花をつける植物たち
特に目にする機会が多いと思われるものを紹介します。草だけです。
たんぽぽ
身近で目にする代表的な黄色の山野草です。
キク科の植物であり、外来種のセイヨウタンポポと在来タンポポを目にします。
セイヨウタンポポにはクローン繁殖のものと有性生殖のものがおり、在来タンポポにもクローン繁殖のものと有性生殖のものがいます。
外来種=クローン、在来種=有性生殖との記述が目立ちますが、実際にはそうではないので気を付けましょう。
在来タンポポでも有性生殖の割合は低く、ある研究では13%程度との報告があります。
過去に行われた調査ではセイヨウとの雑種であると思われていた雑種タンポポが実は在来タンポポ同士の交雑によるものであったとの話もあり、実際身近で目にするタンポポが外来と在来どちらの雑種であるかの判断は難しいようです。
しかしかく乱の大きい環境に入るセイヨウと、里山環境を好む在来種のように2種の生態を比較していくと都市部に多いのは外来タンポポであるというのはあっていそうです。
一般的にはセイヨウは花を支える部分である総苞片が反り返る特徴があります。少なくとも純在来のカントウタンポポは反り返っていないので、見つけたら裏返してみましょう。
花は虫媒花で虫が良く訪れます。種は風散布によるもので、クローンによるものは綺麗な丸条の種を付けます。一方で有性生殖のものは受粉の有無で種が変わるので、部分的にかけたような不均一な種を付けます。
身近でありながら外来種問題などの視点を学べるいい題材です。
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やや難しいですがタンポポの交雑をまとめた記事もありますので、興味が湧いたらぜひ読んでみてください。
カタバミ
開けた日当たりのいい環境で目にするお花です。
花は1㎝程とかなり小型なのですがとにかく草地だけでなくコンクリ場や花壇などあらゆる場所に適応しています。
花弁は5枚で中心に穴のようなものが開いています。
この特徴からキク科のお花に比べればかなり特定が簡単な種類です。
花後にボトルのようなかなりしっかりした実を付けます。
乾燥によりこの実は破裂し、周囲に種を撒き散らかします。ちょうど理科の実験で扱うホウセンカのような種子散布の仕方をしていますね。
この手の種子には粘着力があり、色々な場所に張り付きます。その後はおそらく軽い水などに寄って流されることで平地や隙間などに潜入しているものと思われます。
カタバミはヤマトシジミという蝶の食草でもあります。この白いシジミチョウはコンクリートジャングルの世界でも目にしますが、その出現はタフな種子散布戦略を持つカタバミのおかげです。
また、全草にシュウ酸を含んでいます。シュウ酸はホウレンソウやルバーブなどでもお馴染みの酸味を感じる成分ですが、これによりシカの食害に合わないなどの生存に有利な戦略が見られます。
この酸を利用して、酸化した10円玉を綺麗にする草花遊びが楽しめます。
汚れた茶色い十円玉を用意したら、カタバミの持つハート型の可愛らしい葉をお団子状に丸めてみましょう。汁がにじむぐらいお団子にできたら十円をごしごししてみれば楽しい実験の完成です。どうなるかは試してみてくださいね。
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カタバミを利用するシジミチョウの詳細です。
ヘビイチゴ
日当たりのよい環境~林縁などの半日影で目にする黄色いお花です。
5枚の花弁を持つことからカタバミに似た雰囲気を感じるかもしれません。しかしバラの仲間は桜に代表されるように花の中心部のおしべの数が多いのが特徴的です。
有名な話ですがイチゴの種はあの粒粒ではないという話があります。花後に基部(花托)が膨らんできて果実のように見せているのですが、イチゴの真の果実こそがあの粒粒であるというのは有名な話ですね。
知っていたら役に立つわけではありませんが、植物の作りを理解すると人よりも多くのへぇ~という部分を味わえるので面白いですよ。
果実は明らかにおいしそうな見た目をしていますが、動物などに食べられている気配がありません。
同時期に目にするクサイチゴやモミジイチゴが動物に食べられているのを見るに美味しくないのだと思います。
良い評判を聞かないので私自身は食べたことがありません。私はカメムシは食べたことがあるので、私的なランキングではカメムシより下です。
興味のある方は動物の糞尿や、除草剤に注意して食べてください。
ヘビイチゴにはより湿気を好むヤブヘビイチゴもあります。どちらも味についていい話は聞きません。
ハハコグサ
およそ年明けから目にするキク科の植物です。
全身に柔らかい白い毛を待とうというユニークな特徴があり、撫でてみれば上質な素材を感じさせる質感が楽しめます。これにより種の特定が簡単なお花です。
早い時期に出ることから分かる通り春の七草の1種、ゴギョウとはハハコグサのことです。
これ単体で味わったことがありませんが、全草が柔らかいので食感は良さそうです。
雑草と聞くと聞こえは悪いですが、やや日当たりのよい環境にて普通に目にします。
お花はブロッコリーを連想させるようなユニークな見た目をしています。キク科のお花にはタンポポのようにしっかり開くものとハハコグサや後述のノボロギクのように開かずに終わるものがあります。
これは筒状花(とうじょうか)と呼ばれるキク科に特有のお花であり、キクの仲間には筒状花のみのもの、舌状花(ぜつじょうか)のみのもの、筒状と舌状の両方を持つ者がいます。
ハハコグサは筒状のお花のみなので、タンポポのように広い面積を持つお花にはなりません。
しっかり開かないことでどんな利点があるのかは不明なのですが、筒状花は名の通り筒状で細長いので、これにより訪花性昆虫を選択しているものと思われます。
密度が高いためか結実率はかなり高いようでよく綿毛を見せてくれます。
ノボロギク
日当たりのよい開けた環境で目にするキクの仲間です。身近な筒状花の代表的な存在で、革質の強い葉も相まって分かりやすい種類です。
食べられるものが多いキク科の中では珍しい有毒植物であり、類似のベニバナボロギクとの誤食の話を目にします。
ノボロギクは株立ちが立派なのですが、これにより芯を食べるような植物(ヤマクラゲなど呼ばれる)のように食べられると勘違いしたり、キク科のお花として分かりやすい特徴があるために間違って採集されていると思われます。
葉が一見するとやや硬い春菊のように見えるため、分からない方は類似の植物には手を出さないようにしましょう。
コンクリ沿いなどの荒れ地や道路沿いの空き地などへの侵入が目につきます。こうした攪乱の大きい場所で目にする者は外来種が多いので、意識してみましょう。ノボロギクは外来種です。
類似種には花の形が似たダンドボロギクやベニバナボロギクがありますが、どちらも外来種です。しかしこの2種は食べられます。
外来種で似た3種、内1種が有毒と食中毒にうってつけの条件がそろっていますね。
ジシバリ
日当たりのいい環境に出現するキク科の植物です。
背の低いタンポポとして勘違いされているケースがとても多い植物でもあります。
ジシバリとタンポポは舌状花の花をつけるという特徴があります。これにより花の雰囲気は非常に似ているのですが、葉まで見ると全然違うことが分かります。
タンポポはいわゆるロゼットという形で地面にべたりと張り付くような姿をしていますが、ジシバリはヘラのような薄い葉がフラッと立ち上がっています。
シロツメクサやムラサキサギゴケのように地上を這うランナーという地上茎を這わせ、地面に接したところから根を下ろすという戦略を持ちます。
このため、周囲の地面を丸ごと掴んでいるような印象を受けることからジシバリ(地面を縛る)との名がつけられています。
舌状花であることから虫人気の高いお花です。
種は風散布であるため、綿毛状になります。
ブタナ
開けた攪乱の多い場所で目にする外来種のキク科植物です。
大型のタンポポとして勘違いされていることが多く、このことから舌状花を持つことが分かります。
花の雰囲気こそタンポポに似ているものの、背丈は約60~70㎝近くなることや、花をつける花柄が非常に長いこと、地面に張り付くように開く葉、革質のある独特の質感などなどからブタナは簡単に見分けられます。
異常に大きいタンポポ風の花を見つけたならばブタナを疑いましょう。
荒れ地や工事跡地、道路沿いなどの環境で普通に目にするようになりました。
葉は踏み付けなどに非常に強い作りをしており、花茎が折られやすいことを除けばとても強い植物だと考えられます。特に種子が綿毛で風散布なため、高い位置からブワッと種を飛ばせるのは強みですね。
由来はフランス語では豚のサラダを意味するそうです。
ノボロギクと違い食べることができる外来種ですね。昆虫人気も高く、群生することが多いことから初夏のセセリチョウの仲間やハエアブの仲間などいろんな虫を目にします。
菜の花
葉の花には色々な種類があり、アブラナ科の黄色いお花をつけるものの総称として使われます。
代表的なものとしてはセイヨウアブラナやカラシナ、河川敷に生えるハマダイコンなどなどを見かける機会が多いです。
春の重要な蜜源であり、チョウやハチを始めとする様々な生き物が利用します。
代表種はモンシロチョウで、アブラナ科を中心にライフサイクルを持つ昆虫です。
アブラナ科の植物の総称であるため、アブラナ科特有の上下に2枚ずつの花を付けます。
アブラナやカラシナは美味しい植物でもあるため、河川敷などを始めこの時期には採集している人がいます。
類似の毒草などもないので安心して取れるのが嬉しいですね。
ケキツネノボタン
湿度のある環境に生えるキンポウゲ科の植物です。
葉をちぎると乳液のような白い物質を出し、これに毒があるとされています。ゴム手袋の使い捨てなどがあれば試してみましょう。ある意味ボンド草と言えるかもしれませんね。
キンポウゲ科の多くにはトリカブトに代表されるように毒をもちます。
ケキツネノボタンは全草に毛が多いキツネノボタンのことを指しています。水田の畔や水路の湧きなどで目にします。
花は黄色い花びらが5枚、中心にはイチゴの仲間を連想させる緑のふくらみがあります。めしべが密集して球形状に見えています。キンポウゲ科は変わった形の花が多い植物です。
ケキツネノボタンは違いますが、キンポウゲ科は花弁のように見える部分がガクであるケースが多いです。例えば春の有名なキクザキイチゲやユキワリイチゲの花弁に見える部分はガクです。
身近なキンポウゲ科として姿を観察するのに適しています。
哺乳動物には有毒であるものの昆虫類は平気なようで、ケキツネノボタンには花粉を食べるコメツキムシの仲間や蜜を求めてスジグロシロチョウなどが来ていました。
春の山菜であるヨモギに葉の雰囲気が似ています。株立ち具合などは全然違うのですが、葉だけを見て香りをかいだり、花などを意識しないと間違える可能性があるかもしれません。注意してください。
ヨモギはこの記事で学べます。
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春の紫色の山野草はこの記事から。身近で見るあれだ!と驚く位には身近な植物をピックアップしています。