山地で熱い外灯採集。チャンスは減ったがまだできる!
外灯採集は紫外線に嗜好性を持つ虫の性質を利用した採集方法です。
都市部の街中でできる場所は限られますが、それでも河川敷付近や一部の公園などでまだできるところもあります。
今回の記事では外灯採集をどのようにやったら効率的なのか?という点や効率を落とす注意点、外灯の見分け方は?などの初心者が外灯採集をするうえで疑問として湧いてくるであろう問題をまとめて解決します。
外灯採集とは?
外灯採集は文字通り外にある灯に飛んでくる虫を捕まえる採集方法です。
虫が灯に飛んでくるなんてそんな馬鹿な という視点の方もLED化が進んだ昨今は出てきそうですが、多くの虫が外灯には引き寄せられてきます。
外灯採集のいい所は運次第で成果を上げられるということです。
樹液採集やルッキングなどは採集経験の差が明らかに出てしまいますが、外灯採集は探し方さえ覚えておけばみな平等のスタートラインに立てます。
ある程度採集している人でも飛んでくる虫のランダム性により全く飽きがこないのが外灯採集です。初心者でも楽しめるので今回の要点を押さえて夏は楽しんでみてくださいね。
一方で問題としては外灯のLED化により、自然下で外灯採集ができる場所というのは減りつつあります。山地や河川敷のそばなどを自力で動いてよさげな外灯を見つける必要が出てきます。
事前準備について
外灯採集は荷物も知識もさほど必要はありません。しかしこれがあると助かるというものを紹介していきます。
まずライトです。外灯を回るのにライトがいるのか?と思うかもしれませんが、外灯採集をする場所では外灯以外の明かりが一切ないという場合が多いです。
山地であることから獣やマムシなどの毒蛇のリスクが当然あります。怪我をすればすぐに対処できないかもしれません。
そんな危険を察知するためにもライトはいいものをお勧めします。
正直なところ山地の暗さは町の比ではありません。
時間などに余裕があれば一度お持ちのライトで夜の山地(車でいいです)によって見てください。
楽しく安全に昆虫を見つけるためにも私はライトはいいものを使うことをお勧めしています。
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おすすめライトなども紹介しています。
夏に昆虫採集をやる予定がいくつかあるなら、ライト次第で見落としは相当減るので考えてみてください。安全と成果につながります。
次に欲しいのがつつく棒ですね。
後述しますが外灯採集では高い木にクワガタが張り付いてしまうケースが多いです。
これを取るためには長い網か長竿で叩く必要があります。見つけたクワガタを眺めて終わりたくない方は選択肢に入れておきましょう。虫好きならばこの機会にいい網を検討するのもいいですね。
長竿網を使う記事では必ず注意していますが、外灯には電線があります。長竿を伝って感電死するリスクがあるので、この点を理解し子供には使わせないなどの工夫が必要です。夢中になりすぎると死にます。
服装は長袖長ズボンです。蚊などの害虫、荒天による気温の変化などに対処するためです。あとは飲み物や軽食、クワガタを持ち帰るためのルアーケースなどがあればいいですね。
灯火採集とは違うの?
似たものとして灯火採集というものがあります。
やることは同じなのですが、県の条例などに違反したり迷惑をかけないという当然の条件の下で自分で光源を設置して採集することができます。
ポータブル電源などの電源と水銀灯や白色灯などのライトを照射して外灯の代わりに照らします。
神奈川や東京では一部の山地ぐらいでしかできない上に初期投資がかなりかかります。
なので初心者向きではありません。外灯採集に挑戦してみて、思ったより楽しいなと感じた人は後々挑戦してみるといいと思います。私は持ってないのでこれについては書きません。
外灯採集ができる場所について
具体的なポイントについては控えますが、ポイントを発見するための視点を記しておきます。
候補地としては様々なものがあり、例えば道沿いの外灯、自動販売機、コンビニなどが王道な要素だと思います。ダムの周辺も良い場合は多いですね。
これらは山地や雑木林沿いにもぽつりとあることが多く、そういった場所では秘かに虫が来ている場合があります。
ポイントの発見は現地では大変なのでMAPなどを活用してみましょう。
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難しいのは外灯とはいえ虫が来るものと来ないものがあるという点です。私的な観察では白色灯とLEDでは絶対に白色灯の方がいいです。しかし白色灯の外灯は今では稀なのでLEDで探すことになります。
その強度は外灯に来ているハエやカメムシ、蛾などの量で分かる場合が多いです。山地の場合には月の差し込み具合やどの斜面に向いているか、外灯のある雑木林の木の種類なども影響してきます。
いずれも虫が来ている外灯というのは成果が上がっている場合が多いので、参考にしてください。
例として高尾山のものを上げますと高尾の外灯には24か所くらいポイントがあるのですが、このうち2か所ほどの外灯には特に虫が来ていました。
スジコガネというコガネムシの仲間なのですが、普通種の虫がよく来ているということは虫にとって良く見えている光の可能性が高いです。
外灯に来るヨコヤマヒゲナガカミキリを狙う人はその2つの外灯を集中的に見ていました。
虫が全く来ていないものは期待がかなり薄いため、見なくても良いと思います。少しでもいたら気を抜かずに観察しておきましょう。飛んできたクワガタは意外とすぐ飛んで行ってしまうことも多いのです。
昨今では自販機もLED化しています。LEDは光の作りの影響で虫には見えにくい光とされています。しかし虫が来ないわけではありません。外灯採集はちょっとした非日常のワクワク感も楽しいので、興味があれば訪れてみるのがいいですよ。
外灯採集のおススメ時期
お目当ての虫がいる場合にはその虫の出現期です。
カブトムシやクワガタを外灯で狙いたい場合には私的な外灯経験からいくつかの注意点を上げておきます。
昨年私は同じ場所で7月上旬~8月下旬まで観察を繰り返しました。
まずクワガタとカブトでは時期が違います。
クワガタは6月上旬~8月下旬位まで外灯でも観察できました。カブトムシは7月中旬~8月上旬程度しかいません。
このうちピークと感じたのは7月上旬と中旬です。ミヤマクワガタが目当てだったのですが、この時期だけは初心者でも見つけられそうなくらい個体数を感じました。現地には10数人の親子がいるのですが、外灯は運と述べたように皆様遭遇出来ている雰囲気でした。
クワガタには羽化直後に紫外線の嗜好性があるという話を何かの記事で読んだ記憶があります。単純に個体数が多いだけなのか真偽は不明ですが、樹液採集と変わらずクワガタ目当てなら7月上旬と中旬の僅かな時期を狙いましょう。
カブトムシは7月下旬頃が一番いいと思います。下旬とはいえ7月の最終週位を目安にするといいでしょうね。早すぎるのはいいですが遅すぎるのはダメです。
樹液では平地性のコクワやノコギリは6月下旬頃に大賑わいしているケースも見られます。一方でミヤマは6月下旬ではまだ早いという感覚があります。
狙いたい種毎にタイミングや採集方法も変わってくるので、おすすめな種類を知りたい方はこの記事を参考にしてみてください。
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注意点としては標高が挙げられます。例えば奥多摩、例えば山梨。住んでいる地域の気候で判断するとまだ十分な季節になっていない場合があります。
過去に残暑だしいるだろうと新潟に8月下旬に行ったことがあります。
まあ遅い時期なんですが夜がもう秋のヒンヤリ感でした。標高差や地域差は想像しにくいので基本的には早めに行動しましょう。早めなら間に合います。遅かったら一年待機です。
影響を与える要因について
外灯採集をする中で気になった注意点を述べます。
月齢
三日月や満月など月の形と出現の時間は日によって変化していきます。
外灯採集では新月に行うのがベストとされています。月の出現は紫外線を反射しているので虫たちが月に惹かれてしまうのです。そのため新月に近いほど条件としてはいいものと言えます。
ただこれは新月でないとダメという訳ではありません。夜の空に月が無ければそれは新月と同じものです。
具体的には満月の後数日間、下弦の月と言われるタイミングでは月の上り時刻が遅いため、条件よく探すことができます。
下弦の月は真夜中に月が出ます。
実際の採集は日没程度から行われますから、下弦の月より少し早いタイミング。月齢17(カレンダーがあります)程度であれば21~22時の採集もできると思います。
月齢は新月前後と、満月直後~下弦の月にかけて意外と広く好条件が整っています。活用してください。
ということは曇りなどの条件も月の影響なく採集ができるということですね。
風
体感的には月齢以上に影響を受けます。
山地では平地と異なり荒れていることがあります。晴れていても強い風がある場合には昆虫の飛来は期待できないです。風が強い影響で木にしっかりしがみついているのか気配を感じなくなります。
さらに言うと耳から得られる情報がなくなるので昆虫の飛来や動物の存在なども感知しにくくなり、単純に怖いです。
逆に言うと移動性が少ないということで樹液には向いているように感じます。
今はゲリラ豪雨予報のMAPアプリやアメダスのような予報もあります。なるべく悪天候は避けた方がいいですね。
探し方について
基本的な探し方としては外灯直下を見る場合が多いです。
物にぶつかった甲虫が落下して止まったり徘徊している場合があります。
また、差をつけるポイントとしては外灯周辺の木々を見ていくというものです。
クワガタの木といえばコナラやクヌギです。これは樹液を見る場合の話であり、外灯の場合には外灯周辺の樹木や低木全てを見るべきです。
外灯に来ている虫は樹液に来ているわけではありません。紫外線で月と勘違いしたクワガタが外灯をふよふよ飛び回り、どこかにしがみついているのです。
普段見ないツバキだろうがアオキだろうが、モミジだろうが周辺の樹木は根元から枝先までしっかり見てください。
あとは外灯の下でのんびり待つのもおすすめです。待って徘徊して、待ってを繰り返すのが良いと思います。外灯に来た虫を空中でキャッチするのはとても癖になり楽しいものです。
もし強力なライトがあれば暇つぶしに虫に照射してあげるとこちらに引き寄せられたりします。蛾の仲間をライトで地面に撃墜するのが暇つぶしです。
マナーについて
自然を使わせていただいているという考えのもと、ゴミを置いていったり必要以上に持ち帰ることが無いようにしましょう。
良い外灯では予想以上に採れる場合もあります。そこで次年度以降のクワガタの出現を考えて自生できることが自然相手には重要です。
自然は自分次第でそれはもちろん大量に取ることはできます。しかしそれが過剰であれば資源の数にも影響します。
観察に徹し、必要な子だけ世話できる子だけ持ち帰るのは、クワガタに限らず自然相手なら必ず持つべき視点ですね。
基本的な外灯採集のやり方や要点を紹介しました。注意点として挙げた月齢と風にだけ気を付ければ、ポイント選択を間違えなければ中々に楽しめます。
身近な種だけでなく、オオクワガタの主要な採取方法でもあるので侮れません。
まずはミヤマクワガタ辺りから試してみるといいと思いますよ。
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夏の昆虫採集の基礎はここから。初心者が成果を上げるための情報を網羅していますが、いかんせんボリューミーです。お暇な時にどうぞ。
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外灯入門として高尾山はおすすめです。持ち帰りなどはなるべく抑えて観察を楽しみましょう。
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河川敷周辺ではヒラタクワガタが飛んでくるなんて事例も過去にはありました。
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樹液採集に挑みたいなら初心者向けの樹液採集と、木の種類で差別化するこの記事が役に立つはずです。