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10月のミヤマクワガタ採集。必要なのは下見と運

秋のミヤマ。採集の可能性はある?

10月は、相当辛いが採集経験アリ。9月までなら全然狙えそう

夏にクワガタ採集を行い今年も楽しい採集ができた。夏の採集には満足した。

そう思っている方は視点を変えて採集時期などに注目してみると楽しいです。

今回の記事では10月に見つけたミヤマの例をもとにその採集可能性を紹介していきます。

ミヤマクワガタとは?

ミヤマクワガタは主に6月下旬~7月中旬ごろに現れる大型のクワガタ虫です。

6月下旬に捕まえた小歯ミヤマ

こげ茶色のボディに金色の毛を持ち、頭部には特有の耳状突起を持ちます。

関東圏では比較的珍しいクワガタで、その出現は面積のある森や、やや標高のある場所になるため、平地で目にすることはあまりありません。

それゆえ希少性が高く、夏には多くの方がミヤマ目当てに採集地を訪れます。

高尾山外灯採集のミヤマ。7月は楽しいほど目にする

成虫のピークはおよそ7月中旬ごろまでと思われ、シーズン開始初期には外灯などの明かりに訪れます。

8月頃から二次発生がズルズルとはじまり、9月頃まで続きますが、このころには初期発生の個体は息絶えていることが多く、8月中旬を目安に発見の機会がぐっと減ります。
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そのためコクワなどと比べると短期集中の採集が必要なクワガタといえます。

成虫は気温により発生回数が変わります。暖地では年1度発生し、寒地では2年に一度発生します。

活動期間について

私の夏期間の高尾山における定点調査によるとミヤマクワガタは6月下旬~7月中旬がピークであることが分かりました。

梅雨明け直後が樹液も多くベスト

特に梅雨明け直後の7月上旬~中旬が最適なタイミングで、この時期はクヌギやコナラ、カシ類も樹液を良く出しており、ミヤマ採集の最適期です。

8月に入ると樹液の発生が弱くなってくることからミヤマも一気に数を減らします。

高尾においては標高が高いからか8月下旬以降はほとんど目にしなくなりました。
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一方で神奈川県西部を事例に取り上げると、西部のミヤマ生息の末端では夏休み期間に人が多いことから逆に7月8月は取れないという現象が起きます。(昼の話)

9月に入ると人が来なくなるので、この時期から急に見つかるという現象が起こります。
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過去の採集経験では9月中旬にかけて続けて4匹ほどミヤマを採集したことがあることから場所次第では9月以降も細々と採集可能なことが推測できます。

10月のミヤマ出現について

2023年10月20日にミヤマクワガタを採集することができました。県西部の下見をしていたエリアで、夏季は非常に良く樹液が流れていました。

こちらは過去の事例のミヤマ。10月14日に取れた大型個体のもの

樹種はクヌギです。まさかこの時期にミヤマがいるとは思いませんでしたね。見ての通りこの時期のワイルド産はボッロボロです。

色は黒く、顎は欠け、跗節もないと言うのがある意味古い時期の証明になります。

同地区では過去に10月14日にミヤマを見つけており、全く無理な話ではないということが分かります。運よく遅いミヤマに遭遇するにはどうしたらよいのでしょうか?

70mm近い神奈川では相当レアな個体。ボロボロに風格がある

この9月や10月の時期には7月と異なり、精神論根性論のような強い意思が必要です。10月のミヤマをなんとしても見たいと言うような方以外はやらないほうがいいです。

正直、捕まえた私がなぜいたんだ?と思うレベル

まずこちらは過去に採れた10月のミヤマクワガタです。ギリギリ70㎜ないくらいの大型で、この地域でも見られる基本型なので放虫の線は薄いのではないかと思われます。

2次発生ミヤマゆえに大型個体である可能性があるのもうれしい点です。

基本型と思われるミヤマ。神奈川ではフジと基本が殆どで、一部山地にエゾ型

さて9月上旬は樹液もまだ出ているので普通の感覚で採集できますが、それ以降になると樹液の出る木はかなり絞られてきます。

そして同様に採集者もほとんどいなくなります。

樹液が少なくなれば虫たちは樹液の有る木に集まりますね。

今回の10月ミヤマも下見していたエリアで唯一樹液が出ている木についていました。

秋ではこのような発酵樹液は無い

採取者が少なく、樹液の出る木が限られていることから念入りに下見をしておけばもしそのエリアで生きているミヤマがいた場合に逆に目にしやすいということが考えられます。

特に10月に入ると樹液を取り合う昆虫類もほとんどいません。

カブトムシは昼間も活動しますがその行動を妨げる要因となっているのはスズメバチ類であるという話が今年話題になりましたね。

10月に入ると樹液にスズメバチもいなかった

昼間のクワガタもスズメバチに追い払われるケースは多々あります。

しかし秋の時期に樹液ではスズメバチ自体があまり来ていないので、代わりに一番強いミヤマなどの虫が樹液を独占しています。

夏場ならこんな分かりやすいクワガタは取られてしまいますが、親子も業者ももはやいない時期です。

特殊な時期の採集に必要なもの

さて9月10月の採集成功のコツについてみていきましょう。

高尾は有名産地だが標高が高いのでだめかも

前提として必要なのはミヤマクワガタが実際に採れている、密度の高いエリアを選択することです。

全体の数が多ければ長い期間生存している個体の数が多くなりますからね。

秋の採集をしたいという方はおそらく夏も採集をしているはずです。その場合にはその下見情報がそのまま使えます。

夏にそこそこ成果を挙げられているなら十分に期待できる

ただし樹液の状況は9月以降大きく変わってしまうので、もし夜に行く場合にはその前に状況を見ておいた方がいいですね。

この時期は採集者がほぼおらず。樹液の邪魔となる虫もいないので昼間でも取れることがあります。私の10月の2例は昼間でした。

ミヤマは低温でも比較的活動できるクワガタなので、9月頃であれば夜にも目にすることができるかもしれませんね。

今年はデータが取れませんでしたが、9月以降にミヤマが生存しているエリアで、樹液流出の木が減ったタイミングで暖かい夜に現地を訪れれば意外と遭遇できるのではないかと考えます。

検証は来年になりますが、面白そうなデータが取れそうなので今後検討していきたいと思います。

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ミヤマクワガタの寿命についての考察と死亡条件になりそうな要因を考えてみました。

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来年に向けて情報収集もしていきましょう。神奈川採集の基盤としておすすめです。
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ミヤマ採集の基盤として高尾山での実際の採集記もおすすめです。全8回。

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冬以降も使える採集地の探し方。