蓼食う虫も好き好き

知っているとちょっとお得で日々の観察が楽しくなる自然の魅力を発信します。画像の無断転載は禁止です。

アキアカネの食べ物とは?アブラムシを食べる赤とんぼ類はなぜ赤いのか?

秋に目にする赤トンボ。何を食べている?

夏か秋かどちらか?

10月頃に入ると赤トンボでおなじみのトンボたちを頻繁に目にします。

良く観察すると彼らの出現は草地や水辺などの環境によくいることが分かります。

昆虫類の出現は餌資源とのかかわりが深いので、赤トンボの出現にも餌が関わっていることが推測できます。

今回の記事では赤トンボの生態と出現環境から見る食べ物などを紹介し、観察に役立つ知識を紹介したいと思います。

赤トンボと減少の背景

止まっている姿が印象的なトンボ

赤トンボは秋にかけて体が赤くなるトンボたちの通称です。

代表種としてはアキアカネとナツアカネの二大トップがいますが、一応ミヤマアカネなど他にも種類がいます。

私的には最も美しいと思うミヤマアカネ


今回は特に目にするアキアカネとナツアカネに絞って紹介します。

赤トンボに見られる特徴としては初夏に成虫になった彼らは暑さが苦手なのか標高の高いところで夏を過ごすという特徴が見られます。

7月頭に見つけた黄色い赤とんぼ。避暑中

これは私が新潟の湯沢高原に行ったときに気が付いたのですが、赤トンボの仲間が7月の初めだというのにたくさん飛んでいました。

赤トンボを始めトンボ類に共通する話ですが、トンボというのは羽化直後と成熟した後で色合いが異なります。

同時期なのにこんなに色が違う!

赤トンボ類は特に高標高地にいるときには茶色と黄色を混ぜたような地味な色合いをしています。

ナツとアキの2種は特に似ており、判別できない場合もあります。

3本線の真ん中が尖っているので多分アキアカネ

胸部写真のために露出を増やした写真を用意しました。胸模様はどうなっているでしょうか?アキっぽいですね。


ここから食事により成熟すると赤くなります。

水田=赤とんぼが浮かぶぐらい馴染み深い

赤トンボ類は人の稲作文化に合わせて進化してきたトンボであるとされ、秋の黄金色の稲穂と並んで表現される田んぼの代名詞的存在でした。

その生態は見事に稲作と合致しており、例えば卵は春の入水時期とともに孵りますし、ヤゴの期間は稲の中干し期間までに終わります。

そして稲刈りの時期に再び産卵に帰ってきます。

稲作文化の歴史は3000年と長い

数千年の人との生活の中で、適応した形なのでしょう。

進化論的な視点で見れば稲作がもとにある中で中干期間までに成虫になれない個体が淘汰され、稲の生活環ぴったりの生態になったと捉えられますね。

このように共に過ごしてきた赤トンボたちは農業の近代化により急激に数を減らしているのが現状です。

麓が水田ばかりの越後湯沢。高地には赤とんぼ類がたくさんいた

特に農薬類は残留しやすく、ミヤマアカネのような流水のある環境を好むトンボに比べ、秋以降の水が動かない水田に残留し春の田植えのタイミングで農薬が撒かれることから影響を受けやすいと言われています。

ミヤマアカネとアキアカネは生息環境が異なる

この農薬の使用には品質追及の近代化農業の影響が大きいと思われます。

稲作で発生するカメムシ類により稲が食害されてしまいます。

出穂に加害するカメムシ類は農薬使用の原因

お米の品質評価方法はなかなかに厳しく、現行での最高グレードを獲得するにはカメムシなどの被害を受けたまだら米の割合は1000粒に対して2粒までしか認められていません。

農家の方もカメムシ類防除のために必死なので農薬を使わざるを得ないのが現状となっており、薬剤はカメムシだけに聞くわけではありませんので田んぼを中心とした水生昆虫類に多大な影響を与えています。

特に穂を出すタイミングの被害が重要なので、農薬は早期にまかれています。これに赤とんぼのヤゴの時期が重なります。

アキアカネ

前提としてアキアカネとナツアカネは胸部の模様により判別が可能です。

個体差も激しく、結構判断が難しい

逆に言うと模様を見ないと判別は難しく、都合よく模様が見られるとも限りませんので2種に関してはザックリと紹介します。

アキアカネは胸部の黒模様が3本あるのですが、このうち中心の1本が剣山のようにとがっています。

アカネ類の色の差は観察が楽しい

初夏に羽化した個体は高地へ移動し、秋になると降りてきます。

羽化直後は黄色~茶色で成熟するにつれて真っ赤になっていきます。

ナツアカネ

名前にナツと入っていることは夏にも目にすることができるトンボだからです。

遠出の写真は判別不明なのでナツということで

夏に平地でやたらと止まるトンボを目にした場合本種の可能性が高いです。

しかし夏の期間は前述の通り性成熟していないので、赤トンボだと認識することができません。

ウスバキトンボ。成熟前の赤とんぼによく間違えられる

また、同時期にはウスバキトンボという赤トンボの顔をしたトンボの割合が圧倒的に多いため、昆虫に興味のない方がその存在を把握するのは困難だと思われます。

これらの2種は秋になると同じ環境に合流し目にするようになります。これに食性が関わってきます。

赤トンボが見られる環境

赤トンボはどんな場所で目にするでしょうか?場合によっては街中でも目にしますよね。

エサのアブラムシは草に付く。イネ科の草地はよく目にする

彼らは食事をするために飛んでいます。赤トンボの多くは草地や河原、水辺に隣接する湖畔林的な環境などでよく見かけます。

大型のヤンマ系と比べれば彼らの口は小さいです。そのため蚊の仲間やカゲロウの仲間などを積極的に捕食していると推測されます。(後述)

アブラムシは身を守るためアリを呼び寄せ共生する

また、秋は植物が良く育つ夏の後に訪れますよね。植物の汁を吸って育つアブラムシが多数成虫になるのもこの時期です。

とある研究によれば秋の赤トンボ類はアブラムシ類を良く捕食していると指摘していました。

アブラムシが作る生態系と赤トンボの赤色の由来?

アブラムシと問われればおそらくあの虫はいる価値があるのか?と首をかしげてしまう人も多いことでしょう。

園芸趣味の方などはこういったカメムシの仲間が大嫌いなはずです。調査してみるとどうやらとても有意義な効果をもたらすようです。

葉を黄色く見せるカロテノイド

ちょっと複雑な話を含みますが、ニンジンが黄色に見える黄色の色素としてカロテノイドというものがあります。

秋の黄葉の物質でもおなじみです。

カロテノイドは黄~赤色の天然色素であり、光酸化を防ぐ物質です。

光酸化は用語として分かりにくいですが、身近な例で言えば肌にできるシミですね。

黄色から赤に変化する赤とんぼ類の由来はなにか

昆虫類も当然紫外線の影響を受け、酸化していきます。それを防ぐためにカロテノイドが欲しいのですが、動物はこれを他生物からの摂取でしか補給できません。

存在意義の分かりにくいアブラムシ。思わぬ形で貢献している可能性

唯一特殊な例としてハダニ類やアブラムシ類にはこのカロテノイドを合成する遺伝子を染色体内に持つことがつい最近明らかになりました。

秋にはアブラムシ捕食量が多いらしい。確かによく飛んでいる

同研究によれば夏の高地における赤トンボのカロテノイドは12%、秋の赤トンボ類のカロテノイドの由来は44%近くがアブラムシ由来であることが分かったそうです。

これにより赤色色素を合成し酸化を防いでいると仮定すると、意味のなさそうなアブラムシは昆虫を守るUVカットクリームのように効果的なのかもしれません。

指に止めればじっくり観察可能!

食物連鎖を通じてこうした防御機構を昆虫たちが備えていると仮定すると、研究などのない昆虫界でよくもまあ見事な機能を作るものだと感心しますね。

まとめ


アキアカネやナツアカネを中心に赤とんぼと呼ばれるトンボは、初夏から秋の終わりまで長く観察できるトンボです。

色の変化が面白く、初夏の黄色い姿から秋には真紅とも言える真っ赤な姿へ変わります。

その要因としてはアブラムシが持つカロテノイドが関与している可能性があり、アブラムシを中心とした食物連鎖の見え方がとても面白くなる事例になるかもしれません。

秋には草地でよく目にするので、今回の記事を参考に観察を楽しんでください。

参考文献
アブラムシと赤トンボの深い繋がりの発見 アブラムシのカロテノイド生合成遺伝子の機能解明
水田地帯における赤とんぼの衰退と保全に関する課題 生息地利用の視点から

pljbnature.com
途中で紹介したウスバキトンボです。アキアカネたちとは逆でほとんど止まらない旅をするトンボです。
pljbnature.com
考察シリーズです。オニヤンマくんがなぜ虫に効くのか?という点を昆虫の面白い話と交えて考察します。