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アサギマダラが好む花は? 秋に山地で見つけるコツとその生態を紹介

大人気の蝶アサギマダラ発見のポイント

実物は写真以上に目を引く

昆虫になじみのない方でも蝶の仲間は美しい見た目から興味を持ちやすいです。

中でもアサギマダラは毒蝶である点や旅をする点など面白い生態を持つことからテレビなどで特集されることもあり、なじみ深い昆虫だと思われます。

今回の記事ではそんな人気のアサギマダラがどのような蝶で、出会うためにはどうすればいいのかという点を紹介していきます。

アサギマダラとは?

アサギマダラはタテハチョウの仲間に所属する蝶で、オオムラサキと並ぶ超巨大な蝶です。

運良く接近する機会が!

色合いは非常に特殊で、薄い水色のような色に赤茶のような?色合いが入る蝶です。

大きさは大人の手のひらを広げたくらいで、アゲハチョウの大型種と同等かそれ以上に大きいです。

食草はキジョランという植物を利用します。山地のつる植物であるため、名前も聞いたことがない方がほとんどだと思いますが、高尾山が有名産地です。

花がないと滅多に止まらない印象

成虫は5月頃~7月頃と9~10月頃に目にします。定点的に止まるわけではなく、移動の途中の栄養補給として様々な植物を利用します。

幼虫は毒々しい見た目をしており、食草のキジョランの葉裏で目にすることがあります。(見つけたら写真を載せます)

毎年見かける場所もあれば偶発的に訪れる場所もあり、一期一会の出会いが楽しめるとても素晴らしい蝶です。

成虫は旅をする蝶としても知られており、2000km近い距離を飛翔したとの記録もあります。

技術的に飛翔は撮れないが、一目で分かるふわっとした飛び方

熱帯地方育ちのウスバキトンボと同様に飛翔には特有の癖があり、羽ばたきよりもトビのように気流に乗るのがうまい蝶です。

移動中のアサギマダラを目にするとゆったりと滑空するように上昇と下降を繰り返しているのが分かります。

食草キジョランについて

アサギマダラを探したいなら食草のキジョランが山にあるかどうか確認するのがおすすめです。

キジョランはかなり変わった植物で、類似の植物がほぼありません。

高尾山リフトのキジョラン。とても絡みつく

植物としてはつる植物で、葉は大きいものでは20cm以上になります。やや光沢感があり、つやつやしています。

出始めは木質なのですが育つにつれて他の植物に絡み、登っていきます。

密度の高いエリアではフジのように良く絡んでいるので探してみましょう。関東圏でおすすめなのは高尾山です。

ここではあらゆる場所でキジョランを見ることができ、その葉の欠けた後を見つけられれば幼虫にも出会えます。

毒蝶

アサギマダラを紹介していくうえで欠かせないのが毒を持つ蝶だという点です。

止まっていると翅を開いてくれない

キジョランを始めとするキョウチクトウ科の植物を利用するアサギマダラは、その葉を食べながら自身に毒の成分を蓄積していきます。

良く知られているようにキョウチクトウ科はかなり強い毒を持ち、同じくキョウチクトウ科を食べるキョウチクトウスズメは人間も口にしたら死ぬと言われるほど強力な毒を持ちます。

この蓄積により幼虫はもちろん成虫にも有毒成分があり、鳥などの天敵からの捕食に影響を与えていると考えられます。

これは自然界の擬態を考えると効果がはっきりとしています。

カバシタアゲハというチョウはアサギマダラにそっくりらしい

例えば多くのクロアゲハの仲間がジャコウアゲハという毒蝶に擬態しているように、南方系の種類の蝶にはアサギマダラに擬態しているものがいます。

残念ながらそれらの蝶は私の行動圏では見れないので写真はありません。

こうした毒を持つ生き物への擬態はベイツ擬態と言われており、ジャコウアゲハ擬態のクロアゲハのように自然界ではあらゆるところで目にします。

秋と初夏の2回観察チャンス

アサギマダラを探そう!と意気込んでもなかなか目にすることはできません。

今回は秋のもの。6月頃もよく目にする

アサギマダラの出現期間はおおよそ決まっており、ここ神奈川東京エリアにおいてはおおよそ5月の中旬ごろ~7月頃と10月頃に目にする機会があります。

出現割合はどちらも同様ぐらいですが、初夏と秋では利用する植物が当然異なります。

秋のイチオシ、センダングサ

訪花性昆虫に来てほしいお花がねらい目です。

花粉運搬を昆虫に頼っている花は虫たちに様々な形でアピールしています。

紫外線領域が良く見える虫たちの目に特によく映っているとされるのは白や黄色のお花で、アサギマダラもこれらの色のお花に来ていることが多いです。

春に蝶が来る花といえばウツギ

特に初夏においては白い花の代表格アジサイ科のウツギ類、秋においては黄色い花でキク科のセンダングサがどこにでも生えていておススメです。

私の地域ではあまり豊かな自然が残っていないのでセンダングサの仲間に来ていました。結構好きなようで、長い時間滞在していましたね。

センダングサは他にも虫がたくさん来る。正直すごい

キク科ならいいのかもしれません。

花以外の条件も重要で、晴れた風が強すぎない日がベストです。

初夏なら適当な日付でも大丈夫ですが、秋は日によっては寒い日もあります。

晴れ間が指すと同時にやってきた

そのため秋程太陽光と風当たりが重要になってきます。

環境も重要で、食草となるキョウチクトウ科が山地に生えることからその出現は山に沿ったエリアに限られます。

もちろん移動中にふらりと寄るケースもあると思いますが、見たいなら山地を選択しましょう。

山地で条件が良ければ秋の七草でもあるフジバカマやヒヨドリバナといったキク科のお花が人気ですね。

これは話によると彼らのフェロモンが関係しているらしく、フジバカマやヒヨドリバナが持つ毒性分を基に雄の性フェロモンを分泌するようです。

自然界における毒素の利用としてはヤマカガシのヒキガエル毒利用に次いで貴重な事例と言えますね。

旅をする蝶と旅の記録

長い道のりで栄養補給は不可欠

アサギマダラは旅をする蝶としてとても有名です。その最高記録はこれまでのもので2500kmとされており、はるばると旅をしていることが分かります。

旅は渡と言われ、冬鳥が冬に日本に訪れ、暖かくなると北に帰っていくようにアサギマダラも熱帯方面への移動だけでなく熱帯から日本に来るものがいることが明らかとなっています。

捕まえたら広い翅に文字が書かれていないか確認

こうした情報は古典的な方法ですがある場所で捕獲したアサギマダラにマーキングを行い放蝶し、それがどこで捕獲されたかというもので記録されています。

私は経験がありませんが、野外で見かけたアサギマダラに検体番号のようなものが書かれているようです。

いつか遭遇出来たらここにいたよと報告したいものです。

これらの記録は論文としてはあまり残されていませんでしたがいくつか調査してみたところ鹿児島の種子島から東京の八丈島で捕獲されたものが出てきました。

鈍い飛翔の蝶なのに移動距離はとんでもない

これによれば種子島から八丈島への850kmの距離を10日もかからずに移動してきたと指摘されています。

アサギマダラの方向選択制などは不明ですが、手のひらほどの小さなチョウがこれだけの距離を短期間で移動するというのには驚かずにはいられませんね。

風を利用して滑空するように飛ぶアサギマダラ特有の飛翔がなせる業でしょう。羽ばたいてばかりの普通の蝶では無理な芸当だと思われます。

君はどこまでたどり着くのか。がんばれ

もしもアサギマダラを見かけたならば心優しい気持ちで長旅がんばれーと応援してあげてください。

目の前のこはもしかしたら台湾や香港などの長距離移動の偉業を成す子かもしれませんからね。

まとめ


アサギマダラはとても毒蝶やその擬態、旅をする性質から自然を知らない方にもよく知られている蝶です。

食草が山地に多いことから出現は山側になりますが、渡りを行っている最中には思わぬ場所でも遭遇することが可能です。

春は白色のウツギ、秋は白のヒヨドリバナやフジバカマ黄色のセンダングサなどで目にしており、晴れた風の強すぎない日に出会える可能性が高いです。

時期は5月中旬~7月頃と10月頃のおおよそ2回ほど観察チャンスがあります。

とても美しい蝶なのでぜひ探してみてください。
pljbnature.com
蝶がたくさん来るセンダングサの紹介です。秋の昆虫採集にもおすすめです。