クチナシで見つかる緑の巨大幼虫
庭木でも人気のクチナシは常緑植物で年中緑があり、お花の時期にはいい香りを楽しませてくれます。
そんな植物を食害する幼虫がいます。
オオスカシバという蛾は蛾の仲間としてはマイナーな部類であるのにその幼虫の大きさや成虫の飛翔の面白さなどからかとても認知度の高い昆虫です。
今回の記事では分かりやすい特徴を持つスズメガの仲間、オオスカシバの魅力を紹介していきます。
オオスカシバとは?
オオスカシバはスズメガの仲間に所属する蛾の仲間です。
幼虫はスズメガらしく巨大ですが、他の仲間に比べると小ぶりで可愛い幼虫です。
食草はクチナシで目にする機会が多いのでクチナシ専門だと思われがちですが、アカネ科の植物を利用しています。
庭木として様々な場所にクチナシが植えられているので、オオスカシバがコレを利用する割合が多いのです。
成虫は蛾の仲間としてかなり特殊な形をしており、いわゆる壁に張り付いている蛾と比べると戦闘機のような見た目をしています。
翅の性能に優れ、空中で停止するように羽ばたくホバリングを用いて様々な細いお花から吸蜜しているところをよく目にします。
似た種類としては秋にはホシホウジャクという蛾が同じフォルムで似た環境に現れます。
私の地域ではホシホウジャクのほうが多いです。
出現時期は初夏頃~秋までで初夏頃に1回、秋に1回?見かけるタイミングがあるようです。
10月に終齢幼虫に遭遇したので、蛹越冬だと思われます。
スズメガの幼虫の特徴
オオスカシバはスズメガの仲間です。
この科の幼虫にはお尻に針状の棘があるという特徴があり、オオスカシバの幼虫にもこれが見られます。
終齢幼虫にもなるとこの針は非常に立派で硬いものになっており、触るとしっかり固くなっています。
幼虫には成長段階があり、孵化直後から葉を食べてどんどん大きくなっていきますが、1齢と思われる幼虫にもこの針状の突起があることを確認しました。
そのためクチナシで突起のある幼虫を見かければそれがオオスカシバと判断して大丈夫です。
終齢幼虫ともなるとその大きさは5cm~6cm前後になり、シャクトリムシなどの幼虫に比べれば巨大です。
この幼虫はかなり大人しく、触れたりしても体を硬直させる防御姿勢を取ることが分かりました。
しつこく触ると内容物を吐きかけてくる行動が見られましたが、フクラスズメなどに比べるとかなり安心して触ることができます。
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(内容物を巻き散らかす恐怖の幼虫)
スズメガは大型幼虫らしい吸盤のプニプニ感がたまらない幼虫です。見かけた際にはぜひ触れてみてほしいですね。
緑幼虫と擬態
オオスカシバの幼虫は巨大幼虫であるにも関わらずその姿を見つけるのが難しいです。
これは常緑樹であるクチナシに細長く緑色の幼虫がくっついているためです。
幼虫の太さがちょうどクチナシの幹の太さとマッチしています。
不思議なことにオオスカシバの幼虫はクチナシの葉をすべて食べることはせず、僅かに葉の部分を残しているケースが多いです。
この影響かクチナシを俯瞰してみてみると茎の茶色と葉の残した部分でモザイク状になっており、これに幼虫が溶け込んでいるようでした。
おそらく生存のための擬態の戦略なのではないかと思います。
よく観察してみると幼虫の体もモザイク状になっていることが分かります。
茶色のカマキリの翅に緑模様が入っているように、やはりこうしたモザイク模様は自然下の生存において役に立つのでしょう。
このオオスカシバは後述の痕跡を見つけて探してもなかなか見つけられません。
幼虫の痕跡の探し方
緑の幼虫は葉や茎に擬態しているので目視での発見は難しいです。
特に日頃虫を見ず、虫を見る目を鍛えていない方にはなおさら難しいです。そこで幼虫が残している痕跡から存在を探すのがおすすめです。
この内容は幼虫類全般に使えます。
まず木ではなく地面に注目します。
幼虫の密度や大きさにもよりますが食事をした幼虫は必ずうんちをします。
小さいうんちは見つけにくいですが、下がコンクリートや分かりやすい色であれば堆積してきます。
おおよそ体積密度の高い場所の上辺りの枝あたりを見ていくと、幼虫を見つけられます。
もう一つは葉に残された食痕です。
幼虫は葉の端から欠けた月のような形で葉を食べていきます。
食害が発生した、過去に食べられていた場合には分かりやすい食べ痕が残っているのでそれらをサインとして幼虫を探していきましょう。
毒の有無について
幼虫を見つけたら気になるのは毒の有無ですよね。
オオスカシバは毛虫ではないことからも明らかな通り毒はありません。
既に触れている写真を上げている通り安心して触っても大丈夫です。
オオスカシバと色
私はオオスカシバは緑系しか目にしていないのですが、オオスカシバは幼虫の生息密度により色が変わるということが分かっています。
この性質はバッタ類の群生相と孤独相のように生息環境に適応するものだと思われます。
幼虫密度が高くなればエサ資源の消費が早くなり、緑の割合が減るとともに枝などの茶色に近い割合が高くなってきます。
そのため群生する個体群は色を変化させるのだと思われます。一方で密度が低ければエサ資源が尽きることはないので、保護色としての緑のほうが安心です。
バッタやカマキリなどにも見られる生存戦略を見ることができるのですね。
似たような事例では同時期の幼虫キイロスズメで2色の幼虫を見ることができました。
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質感が魅力的な幼虫
オオスカシバを見かけた際にはぜひとも幼虫に対する気持ち悪いという感覚をなくして触れてみてください。
大人は昆虫に対して印象で判断しがちです。
オオスカシバを始めとするスズメガの仲間は私もイチオシの質感を持つ幼虫ですが、その質感には個性がしっかりと見られます。
オオスカシバはゴム手袋のような撫で心地で意外とがっしりしていました。
種類によってはビーズクッションのようなプニプニ感のものもおり、この差にもなにか要因があるのだなと思います。
それらの違いは触れなければ分かりません。オオスカシバは大人しい幼虫なので、恐れることはありません。
対処法
こうした記事にたどり着く方の中には駆除したいという方もいると思います。
飛翔性能に長けたオオスカシバは、庭木以外のところで発生し、来ている可能性が高いです。
そのため根本的な解決というのは残念ながら難しいです。幼虫の駆除は傷口に絆創膏を貼るようなもので、化膿した根本的な部分をどうにかしないと行けないのですが、その根本が外部にあるため解決できません。
なので手間はかかりますがしっかりと今記事で紹介した幼虫の探し方を抑えて、愛情込めて植物の世話をしてあげるのが一番の対策になります。
大きな幼虫なので抵抗がなければ土に返してあげるのがいいでしょう。手で処分が嫌なら浸透移行性やスプレー型の農薬も手だとは思います。
まとめ
オオスカシバはクチナシの葉を利用する大きな幼虫です。
幼虫は個体群密度により緑色や茶色のものがおり、フンや葉に残された食痕によりその存在を認識できます。
食草が比較的狭く、庭木でも発生するので観察しやすく、スズメガ類の比較にとてもオススメの一種です。
成虫も面白い昆虫なのでぜひ探してみてください。
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オオスカシバよりも更に巨大なスズメガに興味があればオススメです。
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秋まで目にするアゲハチョウの幼虫も面白い幼虫です。
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成虫に関してはホシホウジャクのものが分かりやすいです。空中停止のホバリングなどを紹介!