緑と黒の毒々しい毛虫
初夏~秋にかけての長い間目にする巨大な幼虫がいます。
その色は緑と黒でたいへん毒々しく、見るからに毒を持っていそうな気配を放つ毛虫です。
この幼虫はフクラスズメと呼ばれ、大人の親指ほどのサイズ感はある存在感抜群の毛虫です。
毛虫の中でもかなり面白い特徴が見られ、食草などから判別も容易なので観察に適した幼虫です。
フクラスズメとは?
フクラスズメは黄緑色をベースに黒色や赤色などの毒々しい模様が目立つ毛虫です。
出現時期は比較的長く、5月頃~10月頃まで複数回発生します。
スズメと名のつく蛾としてはスズメガの仲間がいますが、フクラスズメはスズメガの仲間ではありません。
幼虫はカラムシなどのイラクサ科を利用し、山地環境から草地環境まで幅広く見られます。
発生地での個体数はかなり多く、幼虫成虫共に一度目にできれば長期間同じ環境で見ることができます。
毒の有無について
毒々しい見た目をしたフクラスズメですが、見た目に反して毒はありません。
毒のある似た姿の虫に擬態している毛虫によく見られるような戦術です。
ということは触れるはずなのですが、私は触っていません。
フクラスズメは幼虫の中でもかなり攻撃的な毛虫で、触れようとするとかなり暴れます。
暴れるだけならともかく首をハンマーのように振って殴ってきたり、同時に未消化のゲロを吐きかけてきたりします。
そのため、毛虫や幼虫に触り慣れている私でも触るときにはびっくりしてしまい心臓に悪いです。
毒はないので興味のある方は棒などでつついてみるとその暴れっぷりがよく分かります。
葉裏で待機する
フクラスズメを探す場合、日当たりの良い場所に生えるカラムシを探していきます。
フクラスズメは葉の表にいることは稀で大抵は葉の後ろに張り付くようにして隠れています。
これは天敵である鳥や寄生バチなどに視認されることを避けるための行動だと思われます。
探す際にはカラムシという植物を認識した上で確実にその裏を見ていかねばなりません。
斜面の横から覗き込むようにして探すのがオススメですね。
もう1つ注意点としてはフクラスズメはかなり簡単に落下します。
うっかり揺らしてしまうとでかい毛虫が落っこちてくるのでかなりびっくりします。
食草はイラクサ科のカラムシ
カラムシは植物の中でもかなり分かりやすい植物です。
この植物は繊維を紙として利用していた過去があり、栽培されていました。
肌さわりとしては和紙のようなフカフカ感があります。
イラクサ科の身近な植物はどれもふさふさしているのですが、中にはイラクサという危険な植物もあります。
イラクサには棘があり、これにギ酸が含まれるため人間に刺さるととても痛い植物です。
イラクサは湿度の高い環境に生える傾向が強いため、カラムシを探す場合はカラッとした日当たりの良い場所を見ていくようにしましょう。
攻撃的な性格の毛虫
フクラスズメを紹介していく上でこの攻撃性は欠かせません。
毛虫の仲間は頭を振ったり、胃の内容物を吐きかけたり、種によっては威嚇音を出したりします。
このフクラスズメは葉裏での待機状態で刺激を加えると高速で動くメトロノームのように頭を無限に振り始めます。
その衝撃は凄く、60cm近いカラムシが地震の影響を受けたかのように揺れまくります。
この頭振りだけでもユニークですが、フクラスズメの恐ろしいところは頭を振りながらゲロを撒き散らす所にあります。
これが恐ろしくて私は触ることができません。指がゲロまみれになってしまいますからね。しかしこの気持ち悪さこそ彼らの生存戦略なのだと思います。
まとめ
フクラスズメは暖かい時期に長く目にすることができる派手な色の毛虫です。
毒はありませんが積極的に攻撃し、ゲロを吐きかけてくるアクティブさから触れるのにはかなり勇気と水道が欲しくなる幼虫です。
一方で食草が単一であることから幼虫探しの入門としてうってつけで、幼虫が持つ防御行動などの面白い生態の観察に適したいい毛虫でもあります。面白い生き物なのでぜひ探してみてください。
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同時期の幼虫として巨大な黒のイモムシがいます。ヘビのような目玉模様が素敵な幼虫です。フクラスズメよりも大人しく、触りやすい入門種です。
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アゲハチョウの幼虫も秋口に越冬個体が見られます。アゲハチョウも面白い模様や臭い香りを使うユニークな生き物ですよね。
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茶色の巨大幼虫の紹介です。スッポンのように首を引っ込める姿が可愛いキイロスズメです。質感が最高です。