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黒い大きな幼虫は毒のある蛾?。赤と黄色の模様を持つセスジスズメ

黒い巨大幼虫は蛾の幼虫?

夏の草地では大人の指ほどもある巨大な幼虫に会えることがあります。

この黒い巨大幼虫はセスジスズメという蛾の幼虫で、擬態や警告色といった生き物の生存戦略を知る題材として適任の虫です。

この晩夏には成虫になるための場所を探して徘徊するため、目にする機会も多くなる虫です。毒もないので触るのにもおすすめの幼虫です!

黒い体に目玉があれば蛾の幼虫


セスジスズメの代名詞といえばこちらの目玉模様です。

正面から見て2列に並び、前二つは黄色で残りは赤色という毒々しい配色をしています。

自然界には目玉模様を持つ生き物がたびたび見られます。

同じ幼虫であるアゲハチョウの幼虫なども目玉模様を持っていますよね。

数多の生物が存在し、捕食関係の中で生きていくのは簡単なことではありません。

こうした模様には彼らの生存戦略が仕組まれています。

ある面白い実験があります。野鳥をかごの中に入れて置いておき、目玉模様のある蛾を見せるとどうなるか実験したのです。

蛾の仲間には翅の後ろに目玉のような模様があるものや前翅に模様があるものがいます。(ムクゲコノハなど)

鳥たちに蛾の目玉模様を見せた途端、急に慌て始めてしまったのです。

幼虫や蛾が持つ目玉模様には鳥などの天敵にヘビであると勘違いさせてしまうのですね。

かくいう私も子供のころはアゲハチョウの眼はこの模様であると思っていました。

セスジスズメも頭部付近を拡大してみるとどうしても本当の頭ではなく目玉のほうに目が向いてしまいますよね。

セスジスズメの幼虫はアゲハチョウの幼虫よりもさらに効果的なことをしています。それが警告色による毒をもつ生物としての誤認です。

赤や黄色は毒の警告?


セスジスズメを初めて発見した人はその大きさに驚くだけでなく、その毒々しい色合いにもビックリしたはずです。

なぜなら明らかに毒を持つようなカラーリングだからです。

自然界には様々な毒を持つ生き物がおり、その多くは自ら派手な色合いでアピールをしています。

例に挙げるとハチ類の黄色や黒の配色などが挙げられます。

黒などをベースにオレンジや黄色、を持つことで私は危ないぞとアピールしています。

派手な色の虫を食べようとした捕食者は嫌な目にあうため、派手な色を避けるようになります。

セスジスズメがこうした毒々しい色合いをしているのもこの色合いが捕食者にとって都合が悪いからだと考えられますね。

似た幼虫ヒメエグリバ


ここまで読んできて、色は似てるけどセスジスズメではないよと言う場合にはヒメエグリバという蛾の幼虫の可能性が高いと思います。

アオツヅラフジという普通種のつる植物を利用するため、セスジスズメと似た環境で遭遇できます。

黒い幼虫を探すには?


チョウやガというのは大抵の場合決まった食草を持ちます。

なので探す場合にはその植物が生えている環境を理解する必要があります。

セスジスズメの場合にはヤブガラシという植物で目にすることが多いです。

この植物はブドウの仲間ということからも分かるように、つる性の植物です。

環境としてはやや荒れ気味の場所に多く、林縁環境でよく見られます。近くの公園や道路沿いの並木、花壇や植え込みに絡みついていたり、雑木林のフェンスなどにもよく見られます。

植物としては葉も分かりやすく、手のひらを広げたように約5枚の葉が付いています。

特徴さえ押さえておけば植物初心者でも分かりやすいですね。

葉が分かれば次は食痕を探します。

幼虫特有の半円状の食べ方や、セスジスズメのような大型幼虫の場合ウンチも大きいので分かりやすいです。

この記事にたどり着いた方はそもそも黒い幼虫を見つけた方だと思いますが、適当に探しても目にできるぐらいの普通種ということです。平地にいる=食草も身近なものであると考えられますね。

かわいいセスジスズメと触れ合おう


上で述べたようにセスジスズメは毒の生物に擬態しているだけで毒はありません。お尻がピンと張っているスズメガの幼虫はどれも毒はありませんので、幼虫ふれあい入門としても非常におすすめです。

勇気を出して背中を撫でてみましょう。

するとぷにぷにした癒される質感に気が付くはずです。また、それと同時に彼らの天敵への忌避行動も観察できます。

例えばこちらは触れたことにより頭部を縮ませて、目玉模様をはっきりと蛇の目に見せる行動です。

個体によっては頭を激しく振って攻撃してきたり、かみ砕いた葉を吐き出して反撃してきたりすることもあります。実際に触れてみることで分かることが結構多いので、気持ち悪がらずに先入観を持たないようにしましょう。

まとめ


黒い体に黄色や赤色の目玉模様が並ぶ大きな幼虫はセスジスズメというスズメガの幼虫です。

天敵に有利に働く目玉模様や、危険を知らせる警告色によって生存率を高めており、真夏の時期に成虫になる場所を探すタイミングで人の目につくことが多いです。

セスジスズメの幼虫は身近な雑草のヤブガラシを利用することから目にしやすく、特に危険性もないので幼虫と触れ合いたい方にお勧めできる昆虫です。
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ヤマカガシという毒蛇はこのセスジスズメの色合いにそっくりで、擬態元であると考えられます。他生物の毒を利用するヘビの面白さを紹介。

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セスジよりも代表的なスズメガです。ハチドリのような飛翔と身近なクチナシを利用することから、名前だけはとても有名なオオスカシバを紹介。

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セスジスズメよりちょっと後に出てくるキイロスズメの紹介です。茶色と緑の2パターンの色合いがある面白い幼虫です。

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幼虫といえばアゲハチョウですよね。目玉模様と脱皮回数により変化する見た目が可愛らしいです。

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セスジスズメの時期に目にするメトロノームのような首振りが面白い幼虫です。