草地で目にするオレンジと黒の蝶
秋になると様々な蝶が花に訪れます。中には大きなタテハチョウの仲間もおり、その中でも平地の草地環境で目にするのはヒメアカタテハというチョウです。
ヒメアカタテハはオレンジと黒色が特徴的な蝶です。
初夏~晩秋まで目にしますが同じ色合いをしたチョウも何種類かおり、オレンジ色の蝶を見つけた方は困惑するかもしれません。
今回の記事では秋に目にするヒメアカタテハを紹介し、同時期に見られる類似種との違いやよく見かけるお花などを紹介します。
ヒメアカタテハとは?
ヒメアカタテハはタテハチョウの仲間でやや大きめの種類です。
草地環境に生えるキク科の植物を利用することから幅広い環境で目にします。
幼虫はかなり強烈なトゲを持ちとても痛そうに見えますが毒などはありません。
こうした有刺鉄線のようなトゲはタテハチョウの仲間の一部に共通してみられる特徴です。
成虫はオレンジ色が目立ちますが、翅先には黒や白を散りばめたような特有の模様が目立ちます。
出現時期は3月~11月頃とかなり長い期間見ることができます。
ヒメアカタテハは冬眠だけでなく夏眠を行う変わった性質があります。
成虫で冬を越す都合上気温が高ければ真冬でも飛んでいるところに遭遇することが可能です。
新成虫は5月頃から見られ始め、10月頃まで綺麗な個体に出会えます。
おススメ観察期は4月と9~10月頃で、この時期は越冬明けの個体と夏眠明けの個体が積極的に花の蜜を吸いに来るため遭遇の機会が増えます。
ヒメアカタテハを始めとするタテハチョウは2種の休眠期間を持つのが面白い点ですね。
同時期に見られるオレンジと黒の蝶
成虫越冬はしませんが5月~11月頃にかけて目にするオレンジと黒色の蝶がいます。
同じタテハチョウの仲間で、より鮮やかな色合いが目立つツマグロヒョウモンというチョウです。
街中などの都市部で目にした場合こちらの可能性が非常に高いです。園芸種のパンジーを利用することで都市部に適応した蝶です。
この蝶も面白いので、見かけた蝶がツマグロヒョウモンだった場合はこの蝶を取り上げた記事がおすすめです。
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ヨモギが食草
ヒメアカタテハは開けた明るい草地に生えるヨモギという植物で目にすることができます。
webによればカラムシやほか数種のキク科を利用している可能性があります。
いずれにせよどちらも明るい草地環境に生えるのでこういった場所を探してみましょう。
ヨモギは平地の草の中では非常にわかりやすい草で、草餅などで我々の生活にもなじみ深い植物です。人が食べるくらいですからヒメアカタテハの気持ちもよくわかりますよね。
ヨモギは新葉の展開期には白っぽい粉状のものを帯びます。
野外で春菊のような葉を見かけてほんのり白くなっていればヨモギの可能性があります。
葉をちぎってヨモギの香りがすればヒメアカタテハがいる可能性があります。
成虫で越冬する蝶
生態的な面を掘り下げていきましょう。
ヒメアカタテハは越冬もする蝶です。成虫越冬する蝶は数えられるくらいしかおらず、ユニークな特徴であることが分かります。
アカタテハなどの完全越冬性の蝶と比べるとやや弱いらしく、越冬明けの個体を見かける頻度は少ないように感じます。
なぜわざわざ成虫で冬を越すのかははっきりとは分かりませんが、考察してみると秋以降発生した新成虫は同時期にカラムシやヨモギなどの餌資源が衰退してくる時期であるため、幼虫が蛹越冬するための十分な期間を設けられないのではないかというのが一案です。
蛹越冬のアゲハチョウとの違いはは9月や10月の段階で越冬幼虫が生まれており、ミカン科樹木は常緑樹であることから餌資源に困ることも少ないという差があります。
もう1つは厳しい冬を成虫で超えることでいち早く春の餌資源を活用できる可能性ですね。
カラムシやヨモギは比較的早く新葉が出てきます。
まだ天敵も少ない時期に豊富な餌資源を確保することで、成虫になる割合を増やしているのではないかという考えが2つ目です。
実際3月に咲くミツマタや、早咲きのツツジなどにはライバルの昆虫が少なく越冬明けのチョウ類が頻繁に来ている場面を目にします。
冬を越せれば楽園が待っているわけです。これらはあくまで私的な考察です。参考程度にお願いします。
落ち葉に擬態する蝶
寒い冬を越す蝶。この時期は鳥たちが活発に行動する時期です。
鳥の眼は非常に優れており、どうやって見つからずに過ごすかというのはとても重要な要素です。
ヒメアカタテハを始めとするタテハチョウの多くの翅は裏側が茶色や茶色のモザイクになっています。
落葉樹が葉を落とす時期にそれらと同じ色をすることで天敵に見つかりにくくするという彼らの戦略です。
タテハチョウの仲間や一部の蛾は落ち葉の上で冬を越します。
一部の種類は軒下などの雨風を避けられるところで越しますが、いずれにしてもくっついた枯葉のように見えます。
越冬性の蝶をいくつか並べますので雰囲気をつかんでみてください。
この性質が越冬性のタテハチョウにそろってみられることから、枯葉擬態を行うことがそうでない場合に比べて生存に有利であることが分かります。進化の過程で取得した生存戦略なのですね。
蝶と植物の訪花戦略
タテハチョウですが餌資源が豊富な時期でも特定の植物に来る傾向が見られます。
食卓に焼肉、寿司が並んでいるテーブルとサラダ、果物が並んでいるテーブル。
お腹がすいているときに食べたいのはどちらでしょうか?焼肉や寿司が選ばれる割合はかなり高いと思います。
秋の植物は特に細長い形状のお花が多く、多くがチョウ類やハチ類に花粉の運搬を頼んでいます。
ヒメアカタテハもその一端を担い、私に地域では主にキク科、ジンチョウゲ科、ツツジ科、グミ科などの細長い花に来ている場面に遭遇します。
特にキク科の筒状花は非常に狭く、口の細い蛾やチョウ類が優先的に蜜を吸えることから人気が高いです。
もしチョウ類を捕まえたい場合はタンポポのような形状のお花を探してみるのがおすすめです。
まとめ
オレンジ色と黒の蝶を見かけた場合、おおよそヒメアカタテハとツマグロヒョウモンに絞ることができます。
2種は同一環境でも見られますが都市部などで見つけた場合にはツマグロの可能性が高いです。
ヒメアカタテハは特殊な越冬形態による長い出現期間や食草が身近なことから観察しやすく、生態的にもタテハチョウの仲間に共通する物事を学ぶのにいい対象です。
これからの秋以降はその擬態の技を見る機会も増えますので、眼にしたらじっくり観察して冬を迎える彼らを応援してあげてください。
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