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ヤマトシジミは白いシジミチョウ。オスとメスの見分け方や食性などを紹介!

草地で目にする白いシジミチョウ

キク科の花から吸蜜する姿

街中からちょっとした草地まで緑があるところを飛び回る白い小さなチョウがいます。

その正体はヤマトシジミと呼ばれる最も身近な蝶です。

身近ですが意外とその生態については知らない方も多いと思われ、特にオスとメスなどは分かりやすい点がありながらもその違いが観察されることはほとんどないでしょう。

今回の記事では近場で目にするいつもの蝶、ヤマトシジミを紹介し顔なじみになってもらいたいと思います。

ヤマトシジミとは

秋のセンダングサに来たヤマト

ヤマトシジミは白地にゴマ塩を振りかけたような特有の斑紋を持つシジミチョウの仲間です。

体長は1.5cm程でしょうか。

あまり大きくはなく、まさに貝のシジミと同じくらいという表現がぴったりな蝶です。

蝶の出現には食草が必ず関連しています。

開けた草地の普通種カタバミ

ヤマトシジミはカタバミという黄色いお花を咲かせる植物を利用する蝶です。

カタバミはそこらへんに生えているのでヤマトシジミもそこらへんで目にすることができます。最も身近な蝶と言えるでしょう。

成虫は早いと3月下旬ごろから11月頃までかなり長い期間目にすることが可能です。

狭い草地に10匹くらいいた

長期発生する蝶としてはアゲハチョウがおり、彼らは年4~5回発生しますが、ヤマトシジミは体感もっと多く発生しているような気がします。

冬を除いたどのシーズンもかなりの個体数を発見できる身近な蝶の代名詞と言っても過言ではない昆虫です。

生息環境と都市部での定着

ヤマトシジミはカタバミを利用します。

日光浴するヤマト

そのためヤマトはカタバミが生えている草地環境で目にします。

カタバミは日当たりをかなり好む植物であるため、林縁環境というよりは芝生やイネ科草本のない低い日当たりが良い草地環境で普通に見られます。

カタバミばかりというケースも多々ある

カタバミは非常に種子散布に長けた植物であり、その種は爆発することで種子を飛ばします。

爆発性の種は内部で濡れており、接地面に張り付きやすくなっています。この結果カタバミは張り付きと雨などで流されて運搬される方法で新天地に定着します。

爆発の性質からかなり群衆するカタバミ

この戦略を用いてカタバミは都市部のコンクリートの隙間などに定着しており、ヤマトシジミはこのカタバミを利用することで町中などでも目にすることができます。

もちろん町中の花壇などがあればそこらでも目にすることができます。

園芸植物を含めればヤマトシジミはかなり幅広いお花を利用していますね。

オスとメスの違い

ヤマトシジミだけに見られるものではありませんが、蝶の仲間は♂と♀で翅の模様が変化するものがいます。

運良く頭を太陽側に向けた個体に会えた

♂は明るい金属光沢を持ち、♀はとても地味な黒色をしているというパターンが多いです。

ヤマトシジミも同様で、♂♀により翅の色が違います。天気の良い日に日向ぼっこをしていればその色合いだけで♂♀の判断が可能です。

背を向けて日光浴する♂

ヤマトシジミの♂は身近な種類でありながら青と白を混ぜたようなとても美しい金属光沢を見ることができます。

蝶の翅には鱗粉が付いています。時間とともに鱗粉が剥げていきボロボロになりますが、翅の金属光沢も同様に時間とともに剥げていきます。

ややボロ。完品は輝きが違う

完品(標本的な視点で欠けがない状態)といわれたりしますが、よく見るヤマトシジミでも光沢が剥がれていないビカビカの新成虫に出会えるととても嬉しくなります。

晴れの日に白いシジミチョウを見かけたら青白い光沢に注目して、その子がどれくらい生きたのか想像してみてください。

一見黒色で面白みの無さそうな♀

一方でヤマトシジミの♀は地味に見えがちです。

♀も複雑な色合いがあると分かる一枚

♀は一見すると黒なのですが、太陽光のもとでよく観察してみると黒の中に緑色などの金属光沢があることが分かります。

捉えるのが難しいですが、♀も綺麗ですよ。

鮮やかさと渋い発色。どちらも良さがあります

♂♀を並べてみました。違いは一目瞭然ですね。

ヤマトシジミは晴れていれば頻繁に止まるので、小さな隣人を偶には観察してみてあげてください。

ヤマトシジミのような白い蝶

ヤマトそっくりなルリシジミ。なれるとでかい

草地の代表種であるヤマトシジミですが、似たような種類の蝶がいます。

山地傾向の強いルリシジミは白色で表翅も似た色をしたシジミチョウです。

この2種には分かりやすい違いがあり、ルリシジミのほうが明らかに大きいです。慣れてくると食草の違いから生息していた環境と飛んでいる姿で見分けられるようになります。

ヤマトとルリ。似ているが細部は異なる

捕まえれば明らかな違いが分かります。注目点は目の色で、ヤマトシジミは目が灰色をしています。ルリシジミは黒いです。

ここだけ抑えておけば2種を間違えることはないので、覚えておきましょう。

ルリシジミでは都市部にはあまりいないと思われますが、畑地などがあればいる可能性はあります。


気温により斑紋が変わるという話

黒点が普通の場合。低温下では黒点がくっついたりする

ヤマトシジミには基本の模様があります。白地に入る黒点模様ですが、蝶の頭側を起点にCのような形に連結します。

基本的にこの模様なのですが、低温下では模様の配置パターンが異なるヤマトシジミが現れます。

私が見た情報は飼育下での話でしたが、11月などの平均気温が下がってくる時期ならば模様違いのヤマトシジミを観察できるかもしれません。

まとめ


ヤマトシジミは私達の生活空間の近くで生息している小さな白いシジミチョウです。

食草がカタバミであることから都市部のコンクリート上で繁殖ができ冬を除いた長い期間目にすることが可能です。

♂♀の判断も簡単なので身近な草地で目にしたらじっくり観察してみてください。

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似た環境で見られるベニシジミは見惚れてしまう美しさのシジミチョウです。観察にとてもオススメです。

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秋の時期にはウラナミシジミというベージュの蝶も同じ環境で見られます。昆虫採集にオススメの蝶です。

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昆虫採集における草地でのリスクや服装、網などの基礎情報を紹介しています。安全あっての採集や観察です。