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ウラナミシジミは秋の関東で見られるシジミチョウ。マメ科の害虫にもなる?

秋に現れるベージュのシジミチョウ

食草のマメ科に夢中なウラナミシジミ

晩夏~秋の関東で目に入り始めるベージュ色の美しい蝶がいます。

ウラナミシジミというシジミチョウの仲間の小型蝶なのですが、日本だけでなく熱帯に幅広く生息している面白い生態を持つ蝶です。

日本では九州などの南部の暖かい地域でのみ越冬ができ、その発生時期は旅をするウスバキトンボと同様にエリアにより観察時期が変わるという面白いものです。

今回の記事では可愛くて美しい外観的な特徴から旅をする理由までウラナミシジミの魅力をお届けします。

ウラナミシジミとは?

葉の上でお休み中

ウラナミシジミは熱帯地方にかけて幅広い生息域を持つシジミチョウの仲間です。

小型のシジミチョウとしてはヤマトシジミなどよりも一回り大きく、飛ぶ速度がとても速いという特徴があります。

食草はマメ科を幅広く利用することから餌資源は豊富で、その飛翔能力の高さと相まって毎年発生地から旅をするように移動していく蝶です。

野山の代表的なマメ科植物、ヤブマメ

農作物にはマメ科も多いため害虫扱いされることもありますね。

小型シジミチョウ故に発生回数は多く、およそ4~5回ほど発生するとされています。

しかし関東圏に限れば観察できるのは早くても8月下旬程の晩夏~11月頃までに限られます。

翅の後ろ側にはシジミチョウの仲間に幅広く見られる特有の尾状突起があります。後述しますが生存のための戦略です。

裏波模様が美しい

初めてウラナミシジミに出会った方はその模様の美しさに驚くはずです。

身近なシジミチョウ屈指の美しさ

ウラナミシジミは翅の裏側に波模様を持つシジミチョウの意味であり、ベージュを基盤とした翅に白い波模様が入ります。

大変おしゃれで類似種がおらず、出現時期が決まっていることからも判別はかなり簡単な種類です。

止まっていれば模様やサイズ感で判別が可能です。

しかし慣れてくればその飛翔速度などでも容易に判別が可能です。

マメ科を食べるチョウ

触覚でマメ科か判別している

ウラナミシジミはマメ科を利用するため、平地などでも普通に目にすることができます。

蝶の出現は必ず食草と関りがありますから、何かしらのチョウを見かけた場合にはその蝶が何を食べているのか想像してみましょう。

シジミチョウながらかなり飛翔は早い

エンドウ豆や大豆などの農作物も利用できるため、畑地環境を転々としながら移動が可能です。

畑地がなくとも自然界の草地にはシロツメクサ(クローバー)などのマメ科がありますし、日当たりが良ければクズなども良く生えています。

こうした植物がある場所では秋になるとウラナミシジミがやってきます。

尾状突起と擬態の戦略

お尻なのに触覚と頭に見える

シジミチョウの中には翅の後ろに針状の突起を持つ者がいます。

ウラナミシジミもこの突起を持ち、頭部の位置を騙すという擬態の戦略を取ります。

シジミチョウの仲間にはこの翅の後ろ側を丸ごと失っているものがいます。

これは本来ならば頭部が食われて死んでいた場面が模様のおかげで助かった場合なのです。

反射で見ると模様が目にしか見えない

尾状突起と翅にある黒点をよく観察してみてください。なんだか生き物の頭に見えてきませんか?

そして突起が触覚のように見えてきますよね。

鳥たちには虫の頭にしか見えなくなっているんです。

同様の戦略はヒカゲチョウなどのジャノメチョウの翅に入る目玉模様でも起こっているように感じます。


ウラナミシジミの生息環境

花以外にもよく休んでいる

ウラナミシジミはマメ科が必要なことから草地及び林縁環境でよく見られます。

そして秋の花壇などではブッドレアやマリーゴールドによく来ています。

自生の植物では私の地域ではメハジキなどのシソ科植物やセイタカアワダチソウ、センダングサなどの外来キク科植物をうまく利用して生存しているようです。

これらはいずれも開けた草地環境に生えている植物ですね。

幼虫の食草と成虫の餌資源が蝶の存在には不可欠です。

旅をするウラナミシジミ

ウラナミシジミは関東では9月頃から目にする蝶です。

翅はヤマトなどより淡い青

一方で九州などでは5月頃から目にできると思われます。(九州には行ったことがないので予測です)

ウラナミシジミは同じく旅をするウスバキトンボと同様に暖かい地域を除いて日本の寒い冬を越せない昆虫です。

彼らは毎年九州で発生し、その高い飛翔能力と食性の広さを生かしながら北上していきます。

9月頃にはついに関東に到着し、さらに北上していく意気込みを見せたところで寒さにやられて死んでしまうというサイクルを持ちます。

毎年秋になると出会うのが楽しみなちょうちょ

日本においてはエリアによって見られる時期が異なるというのはかなり珍しいタイプのチョウだと思います。

亜熱帯~亜寒帯程度の気候が混在するからこそ楽しめるのがウラナミシジミやウスバキトンボの拡散であり、今後もしも温暖化により気温が上がってしまえば秋の訪れを告げるウラナミシジミではなく、平地の普通種としてのウラナミシジミになってしまうかもしれません。

季節限定品が常に販売されているかのような悲しさがあり、物珍しさはなくなってしまいますね。

まとめ

秋の淡い光がこれほど似合うチョウはいない

ウラナミシジミは日本ではエリアによって見られる地域が異なる面白い蝶です。

その生態は食草であるマメ科の幅広い生息環境と、縦長の形を持ち複数の気候帯を持つ日本の特殊な形に由来しています。

蝶自体も他に見られないような特有の模様や擬態による生存戦略を持ち、生態の観察対象としてもとても面白い美しい蝶です。

記事執筆時点ではまだまだ観察ができる蝶なので、近場のお花を探してみたらきっと簡単に出会えるはずですよ。

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