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アゲハチョウの捕まえ方 赤色の花に集まりやすい生態を理解して捕まえよう。

アゲハチョウの簡単な捕まえ方

アゲハチョウを捕まえる裏技的な方法があります。

アゲハは大きな昆虫で種の多様性も幅広く、見られる期間も長いことから日本全国で幅広く愛される昆虫です。

しかし捕まえようとした方はその飛翔の上手さに驚いた経験も多いのではないでしょうか?

今回はそんな難しいアゲハチョウを簡単に捕まえる方法を生態的な特徴と絡めて紹介します。




アゲハチョウとは?


アゲハチョウは手のひらほどのサイズ感の大型蝶です。

食草がミカン科であることが多く、町中などでも比較的よく目にする昆虫です。

生活環境は食草で明確に分かれており、植木のミカンで発生できる平地性のものから、山地に自生するミカン科を利用するものまで幅広くいます。

およそ11種ほどが遭遇しやすい種類として数えられます。

発生は4月頃、昨年蛹で越冬したものが羽化することで始まり、10月頃まで4~5回ほど発生します。最後の蛹は成虫にならず翌年まで冬を耐え忍びます。

赤色の花にくるアゲハチョウ

さてアゲハチョウの仲間はとても良く飛びます。

この飛んでいるアゲハチョウを捕まえるのは簡単では有りません。

なので花に蜜を吸いに来ているタイミングを狙うというのが捕まえる場合にはオススメです。
(頻繁に止まります)

アゲハの場合には赤色の花にやって来やすいという特徴があります。

アゲハをよく見かける花としてはツツジ類、クサギ、ヒガンバナ、ブッドレアなどが有名です。赤色のものが多いんですよね。

これにはちゃんとした理由があり、アゲハチョウは赤色の花に選択的に来ています。

なぜ赤色なのか?

面白い研究が有ります。昆虫の色識別に関する研究なのですが、アゲハチョウは赤色が明確に見えているそうです。

自然下を飛び回り様々な色の花を訪れるわけですが、ストロー状の口をしている彼らは花からの蜜の摂取しやすさに差があります。

すると自然と利用しやすい花の傾向は固まってきます。

筒状をしており、口の長い昆虫でないと蜜を舐められないような植物ですね。

これはツツジ類やヒガンバナが該当します。

いずれも赤系の多いお花です。このようにして赤いもの=蜜を食べやすいと認識させることができれば彼らは選択的に赤色の花を訪れるようになるそうです。

アゲハチョウが赤色にやって来やすいというのはアゲハチョウが赤色を好きなのではなく、その成長過程で赤色から蜜が味わえると認識しているからなんですね。

この研究ではアゲハの色覚にポイントが当たっており、アゲハに色とともに砂糖水を上げる実験をしています。

青色の色紙とともに砂糖水を上げた個体は青色を選択的に選び、黄色の色紙で砂糖水を上げた個体は黄色を選択します。

前述の植物で言えばクサギは白色をした花をしていますが、咲く時期は赤色の花の少ない夏です。

この時期はカラスザンショウなどを始め白色の花が多く、彼らは白色の花から蜜がよく取れることを学習しているということですね。

秋になればブッドレアは紫、ヒガンバナは赤ですよね。ヒガンバナから吸蜜した個体は次のヒガンバナに移動し、吸蜜するということを繰り返します。面白いですよね。

春の赤色はツツジ

ツツジ類は春のアゲハチョウ観察スポットです。

花数の多い所に行けば実に多くのアゲハチョウを見ることができます。

色は前述の通り赤~紫系のものを幅広く利用します。春のものはこの色を学習しているようで、花の前で待っているだけでやってきます。

傾向としては特に黒系のアゲハが好きなようで、日差しの柔らかい午前中に特に多く目にします。

その後お昼時には不思議と消えてまた夕方になると来るようです。

ツツジの花は筒状の花になっており、蜜源までかなりの距離があります。

そのため蝶類は利用しやすく、ツツジも蝶類に花粉運搬を頼んでいます。相思相愛です。

花の形からくる虫を想像して見るというのも1つ生態系から見た採集としてオススメですね。

秋の赤色はヒガンバナ


8月下旬以降はヒガンバナが圧倒的にオススメです。

ヒガンバナも同様に細長い形をしたお花で、蝶などに花粉運搬を頼っている花です。

この時期にはとくに赤いお花が少なく、アゲハチョウの瞳を独占しています。

ヒガンバナ群生地では頻繁にアゲハチョウが訪れます。
蜜が多く、競合となる色が少ない場合には面白いように目にすることができますね。

捕まえ方について

さて色々と紹介してきましたが捕まえ方も1つ紹介しておきます。お花に来ているアゲハチョウは食事のために来ています。

そのため警戒心がとても低く比較的簡単に捕まえることができます。

ツツジ類のような密度の高い花とヒガンバナのような株で点々と立っている花では捕まえ方も異なります。

まずツツジの場合には飛翔しているならば普通に網を振ってもいいのですが、止まっているならば網の底を持ってそっと落としてあげるのがおすすめです。

虫は上に飛ぶ修正があるので、コレで逃げられません。

一方でヒガンバナの場合は勢いが大事です。虫をすくい取るようにヒガンバナをかすめて網を振りましょう。

上から下に叩きつけるのではなく、斜めに振るのがおすすめですね。

昆虫採集は割りと網の性能も大事なので、採集をしばらくやりそうな場合にはいい網を検討してみるのもいいと思います。
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道具などの基礎を理解したければ虫探しの基本の記事がおすすめです。

この方法で探せる種類について

今回の方法では、身近な11種類のアゲハチョウ全てを探すことが可能です。

もちろんエリアに寄ってはミヤマカラスアゲハのような山地性のものは厳しいですが、方法としては出会うことが可能です。

代表的なものだけを紹介しておきます。

ナミアゲハ、キアゲハ、カラスアゲハ、オナガアゲハなど。


まとめ


昆虫採集で重要なのは取りたい虫の生態をしっかりと理解してあげることです。

アゲハチョウにおいては花の選択性が鍵となっており、コレを理解することで飛び回るアゲハチョウを探すよりもよほど効率的に捕まえることができます。

執筆時はまだまだヒガンバナが楽しめる時期なので、ぜひ蝶が赤色を選択している様子を観察してみてください。

また、同じヒガンバナでもどんなアゲハチョウが来ているかをしっかり観察してあげると、アゲハチョウの多様性も理解することができます。

参考文献 アゲハが見ている「色」の世界 (木下充代)

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