蓼食う虫も好き好き

知っているとちょっとお得で日々の観察が楽しくなる自然の魅力を発信します。画像の無断転載は禁止です。

黒いアゲハ蝶はクロアゲハではない!? 身近で目にする黒いアゲハ蝶の種類を紹介。

黒いアゲハ蝶を発見!クロアゲハだ!

黒い蝶たちの吸水シーン。よく見るとそれぞれ個性があることに気がつけるはず。

町中や山地に足を運ぶと、黒いアゲハ蝶を目にする季節ですよね。

黄色いものをアゲハ、黒いものをクロアゲハと認識している方は多いように感じます。

しかし身近に黒いアゲハが7種類もいるというのはあまり知られていないようです。

今回は捕まえてじっくり観察したくなる魅力的な黒いアゲハたちを紹介していきます。



黒系のアゲハはなぜ似ているのか?

これに関しては毒を持つ種に擬態しているのではないかというのが有力です。

黒系アゲハの擬態元と考えられるジャコウアゲハ。毒草由来の毒を持つ。

6種のアゲハチョウの内僅か1種類のジャコウアゲハには食草の都合上毒があります。

その姿を真似ることで天敵などから食べられにくいような戦略を取っているのではないかと推測されます。

その毒を持つジャコウアゲハはここでは軽く述べておくと黒系アゲハの中でも唯一体が赤いです。

これにより黒と赤の警告色が他種よりも強く印象づきます。そのため、各種黒いアゲハにはそれを真似た黒と赤色の配色が見られます。

クロアゲハ

クロアゲハは黒系アゲハの中でも特に目にする機会の多い1種です。

一番オーソドックスな黒系アゲハチョウ

黒色のボディと後ろ翅には赤い模様が縁に並んでいます。

オスの場合には前翅と後翅の隙間に白い模様があるため、ここが見えればクロアゲハかなと推測できます。

今回は写真が無いので紹介しませんが、モンキアゲハにも似た特徴が見られます。

白色が円状なのか線状なのかの判断ができれば、円のモンキアゲハ、線のクロアゲハと判別が可能です。

幼虫の食草はミカン科の植物です。都市部でも庭木として多い木であることから街中でもクロアゲハを目にすることができます。

ツツジや桜などこの時期に赤系の色が多いためにその色を学習している

アゲハチョウらしく色の学習能力があり、春は赤系統の色、夏は白系統の色に来ています。

学習能力を逆手に取り、そうした色の花で待ち構えるのが有効ですね。

年4回ほど発生すると考えられ、春~秋まで長い期間観察することができます。

ジャコウアゲハ

黒系アゲハの中で毒を持つという点から重要な存在です。

体が赤いアゲハチョウは本州ではジャコウのみ

食草がウマノスズクサ科の植物の有毒植物であるため、幼虫~成虫までの全ての段階で毒があります。

ジャコウアゲハはオスとメスで色合いが大きく変わる蝶なのですが、特筆すべきは♂の真っ赤な体です。

飛んでいると赤色は分かりにくいが、捕まえてみるとかなり分かる

黒と派手な色は自然界では警告色としてスズメバチに代表されるように危険を示す色として活用されています。

つまり多くの黒系アゲハはジャコウアゲハの姿を真似しているということですね。

こうした毒を持つ生き物を軸に毒の無い生き物がその姿を真似しているケースはベイツ擬態と言われ、自然界では一部の虫たちに見られます。

蛾の仲間にもアゲハモドキというジャコウアゲハ擬態と思われるものがいる

♀の写真はありませんが、前翅がかなり白い(薄い)という特徴があります。

年2化と言われますが、春~秋まで目にします。3回は発生しているのではないかと思いますね。


オナガアゲハ

クロアゲハに似ているのですが、翅の後ろ側の突起がとても長いという特徴があります。

尾が長いアゲハチョウなのでオナガアゲハ。

それ以外の特徴はクロアゲハに非常にそっくりであり、普通にクロアゲハと間違われている場合が多いです。

クロアゲハ同様に♂の前翅と後翅の境目に白い模様があります。

これも2種が混同しやすい要因であると考えます。

年2化とされますが、やはり秋に目にすることがあります。おそらく3回は発生しているのではないでしょうか。

カラスアゲハ

翅の裏側はクロアゲハにそっくりなのですが、表側には明確な金属光沢が見られます。

特有の金属光沢で飛んでいても分かることが多い

個体により緑~青色と変化が豊富で観察がとても楽しい種類です。

光沢は♂の方が強烈であり、翅を見ると♂には黒っぽいシミのようなものが見えます。これが性標と呼ばれるもので♀にはありません。
年2化と言われており

見ての通りカラスアゲハは分かりやすい

春型と夏型がいます。他アゲハと同様に春型は小型の傾向が強い一方でより光沢が強いという特徴も見られます。

また、集団吸水を行う特徴があります。黒系アゲハやアオスジアゲハなども給水に訪れますが、カラスアゲハの仲間はこの傾向がより強いと感じます。

これに関してただお水を撒けばいいという訳ではなく、土に一度吸収されて湧き出してきたミネラル分が豊富な水にやってくるようです。

食草はカラスザンショウなどを利用していると考えられ、山地の傾向が強い種です。

ミヤマカラスアゲハ

皆の憧れ、ミヤカラです。

夏型ミヤマカラス。夏型でも光沢感はカラスアゲハの比ではない。

春型の♂の美しさは日本の昆虫界でも屈指であり、マニアが多い人気の虫です。

カラスアゲハが裏面はクロアゲハそっくりなのに対し、春型のミヤマカラスアゲハは後翅に白線があるなど明確な違いも見られたりします。

これにより黒系アゲハの中では表の光沢が見えなくても判別できるという特徴がありますが、おおよそ全ての場合において異様なほどの金属光沢で分かるはずです。

夏型になるとこの模様は個体差や地域により消えるものが出てきます。

夏型だと見た目は他の黒系と分からない場合もある。春型ならば後翅の白線がはっきり見える。

年2化とされており、体感として夏型の方が多いように感じます。都市部のエリアでは多い種ではないため、遭遇できるのは稀であると言えるでしょう。

この種も集団吸水が知られています。カラスアゲハやアオスジアゲハなどと共に十数匹のアゲハが待っている様は圧巻です。

食草はキハダなど山地のミカン科です。

ナガサキアゲハ

アゲハチョウの中で最大種の巨大蝶です。慣れてくると大きさで判別することが可能です。

後翅の先につく突起がないという特徴があり分かりやすい(左の個体)

南方系の種類であり近年生息地を拡大しているとされています。

ナガサキアゲハは黒系アゲハの中でも後翅先端の突起が無いという点や前翅の裏側に赤色の模様があったりするなどこの種にしか見られない特徴がいくつかあります。

そのため似た仲間が多いクロアゲハの中でも特に分かりやすい種と言えます。

これもナガサキアゲハ。突起がない。

観察地域により年何回羽化するかが変化することが知られています。

関東地方では少なくとも春~秋まで目にするので3回以上は発生していそうです。


モンキアゲハ

大型のクロアゲハです。ナガサキアゲハと並んでツートップと言えます。

翅の裏側に目立つ白点があるのはモンキアゲハだけ。明らかに大きい。

この2種は春型であれば他の種よりも明らかに大きいため、特徴的な模様が無くても分かります。

モンキの特徴としては前述のクロアゲハやオナガアゲハよりも明らかに大きい円状の模様が連なっています。

また、他のアゲハと比べると物に止まりません。

蝶道で見かけることが多く、止まらない蝶だと思っていたくらい。

運よく吸水現場にて遭遇することができ、初めて捕まえることに成功しました。それくらい私的には捕獲難度が高いと感じる1種です。

大きくて派手というのはやはり魅力的ですね。

こちらも南方系の蝶として昔は見られなかったそうなのですが、神奈川などでは普通に遭遇します。

アゲハチョウ関連記事

pljbnature.com
pljbnature.com

pljbnature.com
捕獲のためには長竿網の利用が効果的です。