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青や緑に輝くクロアゲハ!? 春型カラスアゲハの色の違いと♂♀の見分け方。

キラキラしたアゲハ蝶がいる!

春型緑系のカラスアゲハ。太陽光の下ではキラキラしているのが飛んでいても分かる。

春~秋にかけてはアゲハチョウのシーズンですよね。

黒いアゲハ蝶を見つけてクロアゲハだ~と観察していると、なんだかキラキラしているではありませんか。

クロアゲハってこんなに綺麗なんだ?と疑問がわくかもしれませんが、この蝶はカラスアゲハという別の種類だったりします。

今回は黒系アゲハの中でも人気が高いカラスアゲハを紹介し、捕まえたり出会うコツを紹介します。虫好きの皆様必見ですよ。

カラスアゲハとは?

カラスアゲハはアゲハチョウ科に所属する大型の蝶の仲間です。

夏型カラスアゲハ。9月の下旬に遭遇したシーズン最後の個体。

体長は開帳時で大人の手の平の内指を除いた部分程度で、アゲハの中では小さめです。

季節型があり、春型は比較的小型で美しく、夏型は大型で光沢が弱い傾向があります。

特有の金属光沢が目立つアゲハチョウであり、その色には青色系と緑色系があることがよく知られています。

青系と緑系。個人的には青系のほうが好き。

尾状突起には赤色が顕著に出るものとそうでないものがおり、個体変異は激しめで観察が楽しい蝶ですね。

出現期間は4月下旬~10月上旬とかなり長い期間楽しめます。

利用樹種は主に山地に自生するミカン科の植物であり、カラスザンショウなどを利用していると考えられており、出現も平地より山地に固まっています。(緑が深ければ平地でもいる)

カラスアゲハと類似のクロアゲハ類

カラスアゲハには似た姿の黒いアゲハが見られます。

黒系アゲハの大集合。

表側の金属光沢を見ることでミヤマカラスアゲハを除き除外することができます。

一方で裏側での比較はなかなかに大変です。

尾状突起が無いナガサキアゲハや、裏側に白紋があるモンキアゲハは飛翔段階で判別が可能です。

翅のおしり部分に突起がないナガサキアゲハ。飛んでいても見分けられる。

♂に白筋があるクロアゲハ、体が赤いジャコウアゲハなどは動体視力次第では捕まえてみないと分からないこともあります。

厄介なのがミヤマカラスアゲハです。

唯一あるミヤマカラスアゲハ夏型の♂写真。これだけでは確実な判別は難しい。

神奈川や東京の平地ではミヤマカラスアゲハを見る機会は多くありません。ゆえに運よく遭遇できると判別に悩みます。

春型は光沢の差が明確なので、一目見てわかるレベルで違うのですが、夏型はどちらも光沢が比較的弱いこともあり、2種のすれ具合に応じてかなり分かりにくいケースがあります。

後翅に白帯があるかどうかが確実だが、地域により夏型では消失する場合もある。

確実な判断としては後翅の白帯が挙げられますが、手持ちで参考資料がありません。

一応前翅の光沢の筋が太い細いにより見分けられる場合もありますが、確実とは言えません。
例として示すとミヤマカラスアゲハの夏型がこちら。♂です。

ミヤマカラスアゲハ(左)とカラスアゲハ。正直夏型ではかなり似ているケースが多い。

カラスアゲハの♂で飛翔していた個体がこちら。

このように同条件の写真ではありませんが、夏型の2種は特に似ています。私もたびたび間違えており、多産地だったらこうはならないんだろうなと感じることが多いです。

ミヤマカラスはその程度には遭遇できません。しかしカラスアゲハにもミヤマをほうふつとさせるような美麗個体が多数いるということですね。

春型カラスアゲハ

カラスアゲハの捕まえ方は後述します。まずはこの蝶の魅力を感じてみましょう。

一目みてどれがカラスアゲハか分かってしまうほど光沢は美しい。青系。

春型カラスアゲハはとにかく光沢が美しく、その色は多様性に富んでいます。

具体的によくわかる違いは金属光沢の色の違いで、これは青系と緑系が存在しています。

春型は鋭い光沢が特徴。ギラついている。

中には中間型のものもおり、乱舞していると非常に眼福だったりします。

特に♀において赤色が顕著に目立つ。夏型♀。

尾状突起には赤い模様があるものが多いですが、中には薄いもの、ないものがあり、本体の美しさと相まってコレクション性が高い蝶だと言えます。

習性としては集団吸水やヒルトップという丘に集まる習性が知られています。この点からアプローチをすることが捕まえるコツです。

例えば高尾山の山頂。待機しているとアゲハがやってくる。

春型は湧き水でのミネラル補給時に加え、赤系のツツジを始めとする植物に来ていることが多いです。

ほんのり暗い林道に日差しが程よく差し込む環境で周囲にカラスザンショウがあるようなエリアでは、蝶道を利用して多数のアゲハの仲間が飛翔している場面に遭遇できるかもしれません。

夏型カラスアゲハ

夏型になると♂♀ともに光沢は一回りほど弱くなります。そして大きさは一回りほど大きくなります。

夏型カラスアゲハの雌雄

色合いはミヤマカラスアゲハに寄った様な雰囲気を感じ、同時期のミヤマカラスの光沢もやや弱まることからややこしく感じます。

出現場所としては暑い季節につき湧き水などに変わらず飛来するほか、白系のお花に来ていることが多いです。

シーズン最後となる時期にはヒガンバナやブッドレアなども人気がありますね。

彼岸花はアゲハ類のオアシス。

個体数としては春型に比べるとまとまった発生がないのか少なく感じます。

春型が魅力的な分受ける印象は地味になりがちですね。

♂♀の見分け

♂♀の見分けは実はとても簡単です。

♀(左)と♂(右)どこが違うか?

♂の方が光沢が強く、♀の方が弱い。という記述はよく目にしますが、それは2匹を捕まえて初めて分かる比較です。

1匹で見分けるには前翅を確認しましょう。

緑系の♂と青系の♂。どちらも共に翅の一部がグレーに塗られている。

カラスアゲハ及びミヤマカラスアゲハの♂には性標という性別を示す模様が見られます。

翅の基部より数cmのところに、光沢がはげたような模様が見られますよね、これが♂であることを示す性標です。

翅の白い線が途切れることなくはっきりと繋がっている。これが♀。

♀のほうも載せておくと、このように♀カラスアゲハの前翅には欠けた部分がありません。

ここを見ておけば♂♀は簡単にわかりますね。


捕まえるコツについて

捕まえ方に関しては詳細な記事がありますので、そちらを参照してみてください。
pljbnature.com
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この記事では集団吸水を行う水辺や湧き水の探し方や色を判別する彼らの習性、ヒルトップを好む性質などを紹介しており、多くのアゲハチョウ採集に使える知識が盛りだくさんです。



アゲハチョウの中でも出会いやすく美しいカラスアゲハ。

特にゴールデンウィーク前後辺りで多数の個体が目につきます。

見てよし捕まえてよし、標本にしてもよしな魅力あふれる蝶なので興味の湧いた方はぜひ一度探してみてください。

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