ぐるぐる巻いた目に付く植物
つる植物は春から初冬まで非常によく目にする存在です。

植物にまいているからつる植物なのですが、実はその種類は非常に多く、身近な環境でもたくさんのつるに出会うことができます。
そこで今回は身近で目にすることが多いつる植物を15種類ピックアップし、その魅力や面白さなどについて紹介していこうと思います。
カラスノエンドウ
カラスノエンドウはマメ科植物の1種で、草本です。

出現時期はおよそ3~5月程度で畑地や草地などの緑がある場所にて普通に見ることができます。
花は1㎝前後であまり大きくはありませんが、紫色で色が濃く、目立ちます。
マメ科によく見られる蝶形花(ちょうけいか)という形をしており、この花には旗のような花びらと乗り口のような花びらがあり、ハチ類などがここに乗ることで隠されたおしべやめしべが出てきます。

カラスノエンドウは特に枝の分岐点に黒く目立つ蜜源を持っており、これによりアリを呼び寄せ外敵を防除してもらうという戦略を取ります。
植物を食べる外敵から身を守ってもらうという戦術ですが、カラスノエンドウには恐ろしいほどアブラムシの幼虫が取り付いていることが多く、ときにはアブラムシの排泄物に誘引されてしまっているケースも多く見ます。
この蜜はカラスノエンドウに限らずトウダイグサ科や桜の仲間にもこうした蜜腺を持つ物がいるので何かしら有効なものであると思われます。
花の終わり後には小さいながらもマメができます。

カラスノエンドウの名の通り、草本にしてはちょっと大きいマメであり、より小さいものとしてスズメノエンドウというものがありますね。
カラスやスズメは時折大きさの指標として使われています。
このカラスとスズメの中間を示すマメ科植物もあり、これはカラスとスズメの間ということでカスマグサと呼ばれます。いずれもマメ科植物ですが、サイズ感が違う程度なので代表的なカラスノエンドウを紹介しました。
フジ
フジはマメ科の植物の1種で、高木などに絡みつつ樹冠を目指すとても強力なつる植物です。

木の根が絡みついていると思ったらフジだったというのはあるあるです。言わずと知れた藤棚や初夏を代表する紫色の美しい植物で、ブドウの房のように垂れ下がり無数の蝶形花を付けます。
株が大きいだけにこの蝶形花も大きく、大型のハナバチであるクマバチがよく利用している場面に遭遇するはずです。

フジにもいろいろな品種があり、近年足利フラワーパークのフジの影響か近場でも鮮やかな色合いのフジを見る機会が増えたように感じます。
シロバナフジや、キバナフジ、香りが面白いジャコウフジなど色々なフジがあるようです。
花後にはおよそ秋ごろにかけて豆が作られます。この豆は非常に長く、10㎝以上の巨大豆となります。

一見すると食べ応えがありそうなものですが、豆には有毒成分が含まれるため、どの程度からダメなのか不明ですが食べすぎると中毒を起こすと言われています。
食べようと冬の前に実を拾ってみたところゾウムシ系かと思われる加害が多数見られ、味わえませんでした。
クズ
クズはマメ科植物の1種のことを指し、悪口でも暴言でもありません。

非常に侵略性というか、専有性の強いつる植物であり、野生化している外国では厄介な外来種(日本の植物なので外国では外来種になる)とされています。
花は7~9月頃に咲き、紫色の蝶形花を多数つけます。フジ程の花付きはありませんが、全体で見ると中々に咲きます。

利用としてはくずもちや葛切りが挙げられ、これはわらび餅と同様地下茎に蓄えられたでんぷんを利用したものです。
とはいえわらび粉もくず粉も本物が利用されることはあまりなく、成分表示表を見るとジャガイモのでんぷんやタピオカのでんぷんなどが使われている場合が殆どです。
本物はやや言い値がします(ちょっと前に100g900円前後、ワラビより安い)が、一度味わってみるといいかもしれません。
私はわらび粉派なので、クズ周りのお菓子はあまり食べません。
クズを利用する生き物にはウラギンシジミというものがいます。
クズの花に擬態しているとされている幼虫の擬態は、それはまあ見事なもので、知らなければ気が付くことは不可能と言えるくらい素晴らしい擬態を見せます。

これがウラギンシジミの幼虫ですが、分かりますか?クズのツボミを完璧に再現していて見事ですよね。
夏から秋頃になると産卵のために元気にウラギンシジミが飛び回る様をよく見ることができます。

成虫はこんな感じです。
他にも葉が食べられていればコフキゾウムシの仲間やクズの名が入るクズノチビタマムシなどもよく見つかります。

チビタマムシはクズ利用の本種のように特定の職物のみを利用するものが多いため、知らないとなかなか出会えません。
アケビ
アケビはアケビ科の植物の1種で、つる性です。(写真は後ほど)

通常のアケビには5枚の葉があり、ミツバアケビは3枚の葉を持ちます。
時折2種の交雑と思われる5枚の葉を持ちながらもミツバアケビのような葉を持つ物がおり、自然交雑が起きていると考えられます。(ゴヨウアケビという雑種)
アケビの新芽は木の芽として一部で流通する山菜であり、そして秋ごろにはおなじみのアケビの実ができます。
白い実は種の割合が8割ほどを占めており、食べ心地はかなり悪いのですが、甘味に関しては自然のものとは思えないほど強く、バナナのようなねっとりとした果肉が味わえます。
一方でつる植物のため、取るのに苦労する割には可食部が少ないため、努力に対する成果がしょっぱい山菜ともいえます。
大人になるとちょっと苦い紫色の外皮の方も美味しく味わうことができ、炒め物などにするとおいしく味わえます。
ナスの皮が厚いやつみたいな特有のキュッとする感じが面白い食材ですね。
アケビの花は春先に咲くのですが、かなり変わった花です。
これはガクのみで構成された単花被花(たんかひか)というお花で、いわゆる鮮やかさがないお花です。
昆虫についてはこの植物の名を持つアケビコノハの話が欠かせません。
幼虫はエイリアンのような見た目をした非常にグロテスクな姿をしており、目玉模様や黒と黄色の色合いで毒々しい存在です。(写真ありません)

成虫になると次は擬態の名人となり、枯葉そっくりの姿に変貌します。
アケビコノハの成虫は成虫越冬を行うため、枯葉が増えるその時期に有利な形質を獲得したものと思われますね。
果実食の昆虫で、夜に果樹園などで果物に口を突き刺して食事をします。果物が傷んでしまうので、アケビコノハやエグリバの仲間は害虫として一部界隈では嫌煙される存在です。
コヒルガオ
コヒルガオはヒルガオ科の植物の1種です。

アサガオではなくヒルガオ。というのに意外と日中ずっと咲いています。
ヒルガオ科の植物には漏斗型花冠(ろうとがたかかん)という特有の形態があり、花が開く前にはねじれて萎んでいるという特徴があります。
花は合弁花で桜のように花びらが分かれておらず、キキョウのように大きく目立ちますね。

コヒルガオはその辺の草地の代表的なつる植物であり、身近で見ることができます。
見た目はアサガオの明るい色そっくりですが、花は分かりやすいので探してみてください。
ヒルガオ科を利用する昆虫としてはジンガサハムシの仲間が挙げられます。

ジンガサハムシの写真は無いので、類似の雰囲気を持つカメノコハムシの仲間で紹介しますと、このように金色と透明な翅をもつ昆虫です。
陣笠というのは昔の足軽などが用いたとされるどこかで一度は見たことがある帽子のことで、恐らくこのハムシの模様が中央に向かって収束するさまを例えたものだと思われます。実物は小判のようで大変綺麗です。
マルバルコウ
マルバルコウは近年見かける機会が増えている外来種のヒルガオ科植物です。(写真後ほど)
赤いアサガオのようなお花を見つけた時にはマルバルコウをまず考えるといいですね。
こうした分からない植物が出てきても安心してください。先ほどヒルガオ科の植物は合弁花であり、花びらが分かれないと伝えました。
つる植物で合弁花、どことなくアサガオっぽい姿までは分かりますよね。こうした要素を捉えていくと初見の植物でもどの仲間に近いものかとあたりを付けることができます。
そうした自然の推測というのはまだ知らないからこそ楽しめる自然を生かした知恵です。
お庭で作物などを育てているとマルバルコウの葉はサツマイモに似ているななどと感じるかもしれません。
サツマイモが何の植物かあてられる人はそうそういないと思いますが、サツマイモは実はヒルガオ科のサツマイモ属です。
マルバルコウはというと、ヒルガオ科サツマイモ属なんです。
というわけでマルバルコウはサツマイモに葉が似ているんですね。詳細を見ていくとこんな風に点と点が繋がっていくのは自然の面白い所です。ちなみに地下茎に芋があるわけではないようですが、根茎で繁殖するようです。
ノブドウ
ノブドウはぶどう科のつる植物の1種です。

ぶどう科の植物には山地に出現するものが多く、ヤマブドウなどはまさにその代表ですが、ノブドウと類似のエビヅルはちょっとした草地や市街地の緑がある場所などでも見つかることがあります。鳥散布であるため、偶発的にやってこられるのでしょうね。
ノブドウ周りのぶどう科の植物は食利用されるブドウやワインなどの酒に利用されるなど我々の生活にかなり身近な植物です。
ノブドウはノブドウ属の植物ですが、エビヅルやヤマブドウ、栽培されるブドウ類もすべてぶどう科の植物です。

ノブドウは一般的には食利用されていません。また、ノブドウの果実に寄生するブドウタマバチに寄生されている率も高く、なかなか味わう気にもなれません。とはいえヤマブドウがご馳走なことを考えると見分けたい気もしますよね。
ノブドウ科とぶどう科には大きな違いがあり、それが巻きひげの出る頻度です。
ノブドウが毎節巻きひげを出すのに対し、ぶどう科は2節出して1節休むという巻きひげの出し方をします。
恐らく葉の大きさなどから来る安定感の違いなのでしょうが、見分けるポイントとしては分かりやすく有用ですね。
果実にはカメムシなどもよく来ています。
ヤブガラシ
ヤブガラシはぶどう科の植物の1種です。身近で初夏以降に見る可能性が高い私的2大つる植物です。

葉は鳥足状複葉という植物の中でも珍しいタイプの葉の付き方をしており、身近ではウラシマソウなどに見られる葉の形です。
指のように5本が一気に広がるのではなく、鳥の足のように小さな葉が付け根でまとまりいくつかに分枝しています。
なかなか見られない形状なので、見つけたらじっくり見てみましょう。
ヤブガラシといえば昆虫利用が盛んな植物です。

この植物は数も多く群落を形成し、樹冠を覆うように見られることも多いです。
そして頂点でたっぷり蜜を蓄えた花を咲かせ、スズメバチなどのハチ類を盛んにおびき寄せます。
受粉に貢献するとともに、外敵などに防除してもらう戦術なのではないかと個人的に考えています。
丁度1つ目に紹介したカラスノエンドウとアリの関係のようなものですかね。
それくらいこの植物にはハチ類がよく来ます。
一方で葉にはセスジスズメという大型の幼虫が付いていることが多いです。

群落を丸裸にする勢いで葉を食べてしまうこのスズメガの幼虫には、なすすべもない場合が多いようです。つる植物に黒い幼虫がついていたらヤブガラシと分かる程度には平野部でも付いていますね。
キヅタ
キヅタはウコギ科のつる植物の1種です。(写真は後ほど)
ツタがぶどう科の植物なのに対し、キヅタはウコギ科となります。
仲間としてはタラの芽でおなじみのタラやウドなどが近いですね。
厚みのあるどこか作り物のような葉を持つのが特徴で、一見するとビニールで作られているかのような雰囲気を受けます。
キヅタは非常に身近な植物なのですが、街中ではこうしたつる植物の持つ緑を求めて意図的に造花のキヅタが置かれていることもあります。
一方で本物である場合もあり、この植物自体が増加と似ていることもあって迷うこともあります。
実際には生育旺盛な植物であるため、うっかり本物を育てると物が覆われてしまうなどの背景があると思われます。
キヅタは薄暗い環境にあることが多く、後述の毒植物、ツタウルシと同所に見られることも多いです。
ツタウルシ
ツタウルシはウルシ科のつる植物の1種です。

身近な自然で見られる植物の中では群を抜いて危険度が高い植物で、ウルシの中でもかぶれの話が多い植物です。皆様も特徴などを覚えてこの植物は分かる様にして欲しいです。
ツタウルシは巨大な3枚の葉を付ける植物で、林内の様々なところに出現します。
葉の縁は小さいものでは部分的に突起とも思えるような凹凸の激しいものがあり、赤っぽい印象を受けます。

成長すると葉の大きさは3枚込みで20㎝程度はある大型となり、その葉が無数につきながら木に絡んでいます。
ツタウルシはウルシ科の中でも毒が強いと言われており、私自身は未経験ですが薮漕ぎなどで触れてかぶれてしまうという話を聞きます。
同じウルシ科のヌルデなどではそういった話は聞かないので、葉の成分はかなり強いものと思われます。
そしてこんな植物がその辺の雑木林などで普通に見つかる点に注意が必要です。

地面で転んだり木に手を突いたりした際に普通に潰してしまう可能性があるぐらいには普通にその辺にあります。
自然下にはこのツタウルシの葉に似たつるがあり、ツタなどは代表的な例ですね。
3つに分かれているつるには基本触らないというぐらいの心構えで良いと思います。
ツタウルシはグルグル巻いて上るつるとは異なり、気根(きこん)という細い根を木に張り付けて他の樹木を上る特徴があります。
前述のキヅタにもこうした行動が見られ、葉が落ちる時期になると木には不思議な根が垂直に張り付いたような痕が残ります。
ヤマノイモ
ヤマノイモはヤマノイモ科の植物です。自然薯の名前でおなじみの山菜の一種であり、非常に言い値で取引される芋が有名です。

その根茎の掘り出しは一筋縄ではいかず、複雑な地下と土壌の硬さ、石などの不純物による方向転換などの難しさから綺麗なまま掘るのは素人には無理なほどです。
つる植物としては比較的分かりやすい部類であり、やや厚みのある緑色の葉は底を伸ばしたようなハート形をしており、ヤマノイモにおいてはこの底の部分のみをグッと引っ張ったような不思議な形をしています。
類似種であり毒草のオニドコロは底の部分+両サイドを引っ張った様な円形に近いハートをしているため、一つの判別点として使えます。
また、確実な見分けとしてむかごが挙げられます。

むかごはヤマノイモのクローンとなる部位であり、およそ9月頃から冬前ごろにかけてつるにくっつくような形で見られます。
球形で灰色をしているため、間違えようがありません。
むかごは生食も可能で、私が味わった感じとしてはとろろ芋を塊にしてシャキシャキさせてほんのり青臭みを加えたものという感じです。

生食は人を選びそうですが、加熱したりすると多くの人に好まれる味わいとなります。
値を掘りたい人には晩秋の葉が変色した時期に大きなヤマノイモの葉を探しておくのがコツです。冬になり葉が落ちたら掘ってみましょう。

売っている自然薯が安く感じられるぐらいには痩せた芋しか付いていません。
オニドコロ
オニドコロはヤマノイモ科の有毒植物です。

生える環境もヤマノイモと似ており、非常にややこしい植物の1種と言えます。
形状は前述の通り両サイドも引っ張ったヤマノイモという感じで、単品で見ても明らかに横幅が広く、葉は明るい緑色をしていることが多いです。また、しわ感もややありますね。
加えて晩秋以降になると種を付けます。山の芋の種は3つの羽のようなものの集合体となっており非常に目につきます。
ヤマノイモはこの3つのパーツが丸みを帯びているのですが、オニドコロにおいては長楕円形という感じで形の違いが見られます。

また、オニドコロにはムカゴはできませんのでその2点をチェックできるといいですね。
昆虫の利用としてはキイロスズメの仲間がヤマノイモ科を利用するため、見つかることがあります。

大型のイモムシで大人の人差し指ぐらいの大きさがあります。見つけるとかなりビックリしますが、頭を地締める行動を取ったり、和菓子の牛皮のような質感で癖になるいいイモムシです。
ヘクソカズラ
ヘクソカズラはアカネ科の植物の1種でかなり普通に見られるつる植物です。

これを見ない環境を見つける方が難しいというぐらいどこにでも生えています。
ヘクソカズラはつる植物の中でも葉が対になって出る対生(たいせい)という葉の付き方をするため、見分けに困ることはありません。
加えて全草に特有の臭気があり、ドクダミと同様草刈りなどをするとあることが分かるような変な香りがします。
これがおへそに溜まった垢のようなにおいということでヘクソカズラという由来になります。
カズラは多くの場合つる植物に使われています。

こんな臭い植物ですが、ホシホウジャクやヒメクロホウジャクといった秋ごろに花に出現するホバリングをするハチみたいな蛾の食草となっています。
花はおいしそうな色合いをしており、クリームみたいな鈍い白色にベリーのような赤色が入ります。
パフェに乗っていたら嬉しい色合いですね。
カラスウリ
カラスウリはウリ科の植物の1種で、これもまた広い環境に出現するつる植物です。

葉はキュウリやカボチャのようにしわ感があり角ばっているのが普通で、ザラザラとした質感があります。
特徴としては花がなかなか見られない点が挙げられます。萎んだ花ばかり見つかるのです。

これはカラスウリのお花が夜に咲くためです。恐らくですが訪花性昆虫を夜行性の蛾などに頼る戦略の一つであると思われ、白いお花にレースのようなイメージとしては植物の根が這う様子に近い特有のお花を咲かせます。
果実も良く目立ち、主に秋口から冬の初めに細いかぼしゃのような赤い実もしくは緑色のみを見つけたらならそれがカラスウリの花です。

時折取りに食べられていますが、その選択性はあまり高くないように思います。
昆虫としては何といってもクロウリハムシですね。
ウリ科の害虫として広く知られるこの虫は黒と黄色をしたお馴染みのこいつです。

畑の様にキュウリやスイカ、カボチャなどウリ科が豊富ではない通常の自然に置いてはこのカラスウリはクロウリハムシのホストとして重要なようです。
身近なつる植物の内、まさによく見られるものについて紹介してきました。
これ以外にもつるは多数ありますが、目につくような特徴があるものは載っているのではないかと思います。どの植物にもユニークな点や利用する昆虫の違いが見られますので、ぜひ注目してみてください。
身近な植物紹介記事
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身近な植物を特徴ごとに紹介する記事です。
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季節のお花を紹介する記事です。夏編です。