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蝶の展翅のやり方を紹介。私的おススメ展翅方法と必要な道具などを揃えて綺麗な蝶を標本にしてみよう!

捕まえた蝶を標本にしてみたい

捕まえた虫を思い出とともにいつまでも保存したくありませんか?

昆虫採集が好きな方の中には自身の記録として、地域の記録として標本作成にも挑戦してみたいと考える方もいらっしゃるかと思います。

しかし翅をどう固定するのか?針が上手くさせず蝶が壊れた、翅が上手く動かせないなどの悩みが必ず出てくると思います。

今回はチョウの翅を止める展翅(てんし)作業において私的にこうしているというポイントを紹介していきます。

あくまで私がやりやすい方法なので、参考程度にしてみてください。また、必要な道具や使い方、チョウの捕まえ方などの基礎部分も紹介しておきます。




まず蝶を捕まえよう

手元に既に蝶が既におり、これから展翅したいです!という方はかなり少ないと思われます。

アゲハチョウの仲間など生態の理解が採集に繋がる。思い出個体なら偶然であった子でも良いが、キレイな標本には鮮度も重要。

まずはどんな蝶を捕まえたいのか?を明確にし、綺麗な状態の蝶を捕まえることに挑戦してみましょう。また、チョウを綺麗に保管するために三角紙という専用の道具が必ず必要です。

蝶の標本は捕まえた姿を維持するものですから、可能な限り美しく運搬したいですよね。

そして根本的に綺麗な蝶を狙うには毎年異なる新成虫の出現時期を探っていくことが不可欠です。

狙いたい蝶の選定には図鑑を活用し、最新の出現情報はSNSでその種名を調べていくのがおすすめです。



しかしいきなりお目当てを展翅するのはお勧めしません。

いきなりゼフィルス(ミズイロオナガシジミ)に挑んで失敗した私。悔しいいい思い出。

標本作成においてはチョウの展翅は慣れるまでかなり失敗します。

なので最初は個体数の多い蝶を展翅の練習として利用するのがおすすめです。

出会いやすく、各種サイズの練習にもなりやすい蝶たち。ヤマトシジミは特に良い子。

例としてはシジミチョウならヤマトシジミ、シロチョウ系ならキタキチョウ、タテハチョウならツマグロヒョウモン、アゲハならナミアゲハやクロアゲハですね。

大型と小型では展翅の感覚がかなり異なります。できれば大型→中型→小型と移行していくのがおすすめです。

最低でも中型程度から慣らしていくのがおすすめです。

シジミチョウ辺りは最初はボロボロになってしまうと思いますが、それも学びです。

とはいえ練習の虫とは思わずしっかりと美しい姿にしてあげるつもりで展翅しましょう。

捕まえた蝶の保存の詳細

捕まえたい種類を絞りましたか?蝶は自身の羽ばたきで翅がボロボロになってしまうため、虫かごには入れられません。専用の三角紙に保存します。

胸だけを押して圧迫する。慣れるまでは腹とかを潰して中身が出ることもあるはず。

標本をつくる方は自身で虫を殺さなければなりません。これは命を扱うものの宿命です。

蝶の仲間であれば胸の部分をグッと押すことで仮死状態、もしくは気絶させることができます。この際お腹を押してしまうとグロッキーになりかねないので注意します。


その後三角紙に羽や触覚が折れないように収納します。

しまい方はあるようですが、触覚の扱いが苦手なのでこの形になることが多い。

個人的にはここで完全に〆るよりは持ち帰って冷凍庫などで〆る方がおすすめです。
夏の気候などだと三角紙入れの中が熱くなって腐ってくるなどのリスクがあると思います。

私は冷凍庫で完全に〆ます。その後はおよそ3日くらいはおいて死後硬直を解除します。

死んだ虫は筋肉が固まってしまうので展翅しにくいのです。なので数日置いておきましょう。

冷凍庫に三角紙ごと入れるとどんどん乾燥してしまいます。なので密閉できるジップロックなどに入れて口を締めてから冷凍しましょう。

三角紙を冷凍庫にそのままではなく、必ず密閉できるものに入れて冷凍する。

こうすれば虫の大きさにもよりますが1月程度は問題なく展翅できます。これをしないと軟化といって、柔らかくする作業が入ってきてしまいます。慣れないと難しいので必ず密閉容器に入れておきましょう。


展翅をする前に

展翅には特殊な展翅版という板が必要です。

展翅板。私は平行のものを使っているが、板が斜めのもののほうが良いと思う。

昆虫のお店などで売られており、ネット通販などでも購入が可能です。一度買えばずっと使える物なので蝶や蛾を続けていきたい方やこのカテゴリーが好きな方はあると幸せになれるはずです。

大きさとしてはシジミチョウ大、ゼフィルス大、シロチョウ大、タテハチョウや春型アゲハ大、夏型の大型アゲハ大などがあります。

サイズ感は大人の指でこんな感じです。

シジミサイズとゼフィルス(大きいシジミ)。僅かな差なものの隙間の大きさなどで展翅のしやすさは大きく違う。

この辺はどのあたりの蝶に興味があるか?から手を出していき、後々興味の幅が増えたら増やしていくというのもいいですし、
まとめ買いすれば送料が1注文分で済むので一気に買ってしまうのもいいと思います。

鮮度の良いウラゴマダラシジミを選んで持ち帰った例。根こそぎ取るような採集はNG。

いかんせんこれがあると蝶を取るときに持ち帰るかどうか?の選択肢が生まれますし、鮮度の良いものだけをなるべく持ち帰って必要以上に採集しないなどの環境に配慮した採集などにも気を使えるようになると個人的に願っております。

テープも数作る予定なら専用のものを使ったほうが楽だと思います。

板のほかには昆虫針と展翅テープが必要です。昆虫針は虫の大きさによって使い分けれたら良いのでしょうが、私は汎用的に2号針を全ての虫に利用しています。

シジミチョウだけはもっと細いものが欲しいと思います。

有頭と無頭がある。有頭が扱いやすく、虫体が貫通することもなく便利。

針は有頭のものにしましょう。刺すときにふくらみがあると何かと便利です。

これらも同じ場所で買えるため、板と同時に購入しておきましょう。
あとは作業用に待ち針ですね。これは規模にもよりますがたくさんやるなら300本くらい欲しいです。

展翅作業<板に刺すまで>

まず展翅する蝶を冷凍庫から出します。

自然解凍を待ちます

数日置いて死後硬直が溶けているはずです。
展翅版の方も準備しましょう。

展翅テープには小中大多くて5種類ほどあると思います。

翅がおおよそ覆えるくらいのものが目安です

蝶の大きさに合わせておおよそ翅が覆える程度のものを選択してください。
上端を織り込んで待ち針で止めます。

中央の隙間が両サイドともあるととても触覚がやりやすい。

テープはサイドを揃えず、中央の隙間側に2㎜程空間を確保しておくと触覚作業と翅の持ち上げが楽になります。


さていきなり難所となります。

昆虫の胸の部分に垂直に針を刺していきます。

手に並行に乗せてつまみ、垂直に刺していきます。種によっては息をかけて翅が開くものもいます。

アゲハチョウなどの翅が丈夫な種類ではダメな場合もありますが、死後硬直が溶けていれば胸の部分を持って息を吹きかけていくと翅が開く種類が多いです。それを利用して刺す場所と角度を確認します。

開かない場合には待ち針などで翅の付け根部を押し広げます。

針を刺すときですが親指と人差し指の2本で針を持つと思います。個人的にはこれは安定しないので逆側の手の中指や薬指を土台として右側は親指人差し指(針を持つ手)中指(左手の中指などに乗せて固定させる)の計3点で支えてから安定しました。

指したら8割くらいのところまで持ち上げていきます。

隙間の中央に刺さっているか、横から見て垂直になっているか? シンプルながらここが一番難しいように感じる。

そして板の真ん中に刺します。そして横から確認して垂直に入っているかも確認します。ここは出来栄えに関わる大切なポイントなのですが私も苦手です。

昆虫針が垂直か、板の中心に刺せたか、角度は垂直かこれだけで出来栄えが変わります。



展翅作業<展翅>

分かりやすいスジグロシロチョウで紹介していきます。

まずは広げた翅をテープで両側止めるのがおすすめです。

この作業をやるだけで虫体が回転する可能性を大幅に下げられます。

右左どちらからやるにしても片側を止めておかないと翅を動かしたときに体が動いてしまいます。興味があればまち針を外して試してみてください。かなり動くはずです。

翅を動かす方の待ち針を抜きます。

左からやっていきます

この後は翅を動かすときはテープを緩めて止めるときはテープを張ります(ぴたりと引く)

写真のようにテープを緩めたら一番上の筋(翅脈)か中央の筋に針をかけます。

翅の基部(黒いところ)が板と平行か確認します。高さがあると針が翅を貫通します。

この時翅の付け根の位置が板より高いとうまく翅脈にかけられませんのでその場合には刺さっている虫の位置を調節します。

翅を動かすイメージとしては直線ではなく円を描くようにです。

種にもよりますが、黒い筋がある太い脈の基部に針を掛けて動かします。

三角形の角度を求めるときに角度が「(」こんな感じで示されていると思いますが、これに近い動きをします。直線でやると破けます。

どの程度翅を持ち上げるかについては私は翅の下部が90℃程度で止めています。

これぐらいの角度が個人的には好き

右利きの方は右で針を持ち左は展翅テープを持っています。

翅を上げてここで良いかなと思ったら左手でテープを張ります。

これで固定

そして翅の下部外側に待ち針を打ちます。
こうすると後翅が動かしやすいです。

テープは止めた針を軸にシュッと上にスライドして緩める感覚。

後ろも同様にいったん緩めて太い翅脈に針をかけていきます。私は中央の太いのにかけました。そして待ち針で止めます。

片側が終わったので逆サイドの待ち針を抜きます。

まち針を打ち右側に手を付けていく

右利きの場合右側が難しいです。同じやり方をするとどうしても針がテープをくぐる都合上翅を押さえられません。

なので板を180℃回転させるのが最初はいいかと思います。

回転させたイメージ。逆側は下に動かす。

こうすることで「(」上から下にこの動きをすることができます。右利きの場合左手の親指と中指でテープが持てるはずです。
後はやり方は同じですね。

シジミなどの特に小さい蝶を除いて、最も難しいのは針刺しと位置の固定。

翅ができたら触覚を整えます。テープを張るときにつくっていた隙間に上手く収納しましょう。

ジップロックに入れていれば乾燥していないはずなので触覚が折れたりすることは無いと思います。
乾燥していると触覚は簡単に弾けてしまいます。(驚くほど簡単に飛びます)

後は日陰環境で3~4週間ほど自然乾燥させます。

湿度には注意。カビたり腐ったりする。

乾燥して放置しているとチャタテムシやカツヲブシムシなどの乾物を食べる生き物に食べられてしまうので、シリカゲル+密閉環境などもおすすめです。

裏展翅もしたい

裏展翅は私も始めたばかりですが情報があまりないので紹介します。

展翅板に固定する前の段階。上に針の頭がある通り逆向きに指す

針を刺していきます。この際角度を誤ると翅を貫通するので気を付けてください。

1度指したらうまく翅と翅の間を抜けているか確認してください。

息をかけて翅が開くならスムーズです。

しかし開かない場合には待ち針などで翅を少しずつ開きながら貼り付けます。

開かない場合の固定が難しい。鱗粉がどうしても剥がれてしまう。

表と同様に両サイドを止めて体が動かないように固定し、作業側の方を外します。

針をかける位置も同じです。翅の付け根の高さにだけ注意してください。

裏展翅は撮影するだけの余裕がなかった。表ができた人ならできます。

基本的には表と同じなのですが、翅が開かない場合にのみ表よりも固定するのが難しいと感じましたね。

表は語れるほど経験が無いので今後鍛えられたらまた更新していきます。


こうして蝶を標本にすれば大人ならば採集の記録として、お子様ならば虫取りの楽しい記憶として残していくことが可能です。

標本箱に張り付けて記録していくととてもいい思い出になること間違いなしですので、虫好きな方にとてもおすすめです。

昆虫標本としてはラベルなどの要素も必要となりますが、今回は展翅の記事などのそれらは割愛します。
蝶の採集日や場所だけしっかりと控えておけばラベルは後からでもできるため、そこだけ気をつけましょう。

私的には展翅を楽しんで美しい蝶の姿を集めることに魅力を感じ始めたら、ラベルなどしっかり作って学術的な路線に踏み込んでいけばよいと思います。なくても思い出の虫たちであることに変わりはありませんからね。

きれいな蝶を採るために役立つ記事たちを紹介します。
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集団吸水でアゲハチョウを探す方法です。
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