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ハートマークが可愛らしいカメムシ。やや珍しいエサキモンキツノカメムシの紹介。

ハートがあるカメムシ

秋によく目にするカメムシ類ですが、よく見てみると様々な模様があり中々に楽しいものです。

秋の紅葉のような色合いとハートマークが美しい

その中でもちょっと鮮やかな色合いで背中にハートマークを背負った種類がいます。

エサキモンキツノカメムシというカメムシで、幅広い時期に生体を見ることができるカメムシの中でも人気な種類の昆虫です。

今回の記事では模様がかわいいエサキモンキツノカメムシを紹介していきます。

エサキモンキツノカメムシとは?

エサキモンキツノカメムシは1㎝程度の普通サイズなカメムシです。

人の目にはかなり目立つ色合いのカメムシ

カメムシの種類としてはツノカメムシの仲間であり、肩の部分が肩パッドのようにとがる特徴があります。

このブログのトップに出ているのもエサキモンキツノカメムシです。

これの拡大画像です

やや分かりにくいかもしれないので、同じくツノカメムシの仲間であるウシカメムシを例にとるとこのように翅上部の先端がとがっています。

ツノカメムシ類最大の魅力があると思うウシカメムシ

ツノカメムシの仲間は特徴がはっきりしているので見分けやすい種類と言えるでしょう。

種類としても普通種であり、平地~山地まで幅広く目にすることが可能です。

成虫越冬を行うので越冬場所を知っていればほぼ一年中目にすることが可能です。エサキモンキツノカメムシは落ち葉の下で越冬していることが多いように感じますね。

クサギに比べると50分の1くらいの出現率

平地性のクサギやキマダラに比べると個体数は少ないらしく、外灯に来ている割合も低いです。見つけたらハート模様の通りちょっとハッピーな気分になれますね。

生態的な面と珍しさ

続いて生態面を見ていきましょう。

角感は近くで見ないと薄いか

エサキモンキツノカメムシも他のカメムシ類の例にもれずおおよそ5月頃から産卵を行い、新成虫は7月頃から10月頃まで発生することが明らかとなっています。

このカメムシは卵を見守る性質があるカメムシで、ちょっと古い情報なので今は違うかもしれませんがこうした性質を持つカメムシは7種いると指摘されています(1959年の情報)。

カメムシ類は実はビックなカテゴリー

国立科学博物館の情報によればカメムシ類は今や1150種類もいると言われており、種数は当時より増えていると思います。

しかし面白い生態を観察できる身近なカメムシとして貴重な存在ですね。

個体数が少ないのはおそらく利用する樹木の幅にあると思われます。

有毒なウルシ科での事例もあり、驚き。紅葉のツタウルシは漆かぶれの要因

エサキモンキツノカメムシはミズキ、ハゼノキ、コシアブラ、サンショウなどを利用していると言われており、それぞれミズキ科、ウコギ科、ミカン科の樹木になります。

科として身近なのは庭木でもよく見られるミズキ科とミカン科ですが、数は多くない樹木です。

とはいえエサキは果実にはあまり来ていない印象

なのでクサギやキマダラに比べれば意図的に見つけるのは難しいです。

植物とのかかわりが深い昆虫だからこそその抑制要因として植物が働いています。

農業害虫としてのチャバネアオカメムシや、クサギカメムシと比べると食草も狭いらしく、害虫として名を聞くことも無い種類です。

人工物の上で目にする機会が圧倒的に多いのは何かあるのか

このようにひとえにカメムシといっても広食性なのか違うのかによってだいぶ性質は異なります。カメムシ類は興味を持つ人も少なく世間的にはまとめて嫌われる昆虫のカテゴリーですが、なかなかに面白い生態を持っているのです。



ハートマークと色合いが特徴的なカメムシ

エサキモンキツノカメムシで検索をかけようとすると「珍しい」や「ハート」といった候補がサジェストに現れます。

他の虫ではまず変えの効かない圧倒的ハート感

カメムシとしては知らなくてもハートマークがあるという点は注目されているようで、模様に可愛らしさを見出している方がいるのが分かります。

このカメムシは臭いを出すことを覗けば(これが厳しい)人に好かれられるポテンシャルがあると思います。

ハートと角のダブルキュートポイント

まずは背中に背負ったハートマーク。こんな模様がある虫はいませんよね。そのままクッションにしたら普通に欲しいデザインです。枕とかにもよさそう。

色合いも自然界ではなかなかに珍しいです。

上から見ればそのほとんどが茶色とハートにしか見えませんが、よく見るとハート周りに黒色、角の先も黒色、翅の淵には緑色のラインが入っており、デッサンや点描をする際に明暗をつけるかのような立体感をつける配色がされています。

点描のようなボツボツ感。金属光沢がある昆虫のような雰囲気

拡大してみると体には凹凸があることが分かり、タマムシのような金属光沢をもつわけではありませんが中々に良いデザインだと言えます。
正直かなり好きなデザインです。特に肩の角から顔までの美しさが素晴らしいんですよね。

全体の雰囲気も綺麗で、人気が出ても良さそう

顔までの淵も緑に枠採られており、額縁のような立体感がカメムシのつぶらな瞳を強調しているように感じます。絵の練習に向きそうなカメムシですね。

カメムシとツノカメムシ、角はなんのためか?

形態的な違いを見ていきましょう。ツノカメムシの仲間といえばその立派な角でしょう。

エサキの角は近くで見ると立派だが、遠目だとイマイチ分かりにくい

およそ分けるとカメムシとツノカメムシ、ハサミカメムシが形態的には違いがはっきりとした種類です。

カメムシはホームベースのような印象ですが、ツノカメムシは肩パット様の部位からごつくいかつい印象を受けます。まるでドラゴンボールの敵キャラのようです。

最強の角感を持つウシカメムシ。ドラゴンボールの世界?

形態的にここまで違うわけですから何かしらの角がある有利な点があると思うのですが、カメムシ自体があまり研究されていないジャンルなのもあって有意義な情報は見つかりませんでした。

パッと思い浮かぶ範囲では捕食時の生存などに有利に働きそうだなという印象を受けますね。通常のカメムシは丸く食べやすいです。その代わり臭いにおいを出して防御するわけです。

ツノカメムシの角は想像よりだいぶ固く、針のようにも感じられます。

臭いにおいに+して捕食者となる鳥などへの攻撃手段(偶然的な)なのではないかと思ってしまいますね。
あくまで妄想ですが。 

エサキモンキツノカメムシの匂いチェック

絵先に出会え次第更新していきます。

カメムシはどこで越冬するのか?

カメムシ類は網戸や壁、屋根などで目にしますよね。

丸まった葉の中で集団越冬の準備?

これはカメムシ類が越冬する場所を求めていることに由来します。越冬昆虫にとって越冬場所の選定はとても重要です。
秋にあれだけ目にしたのに急にカメムシを見なくなるのは選定した場所で越冬しているためです。

餌資源の少ない時期に目を覚ましてしまえば体力を使い死んでしまいかねません。

そのため日が当たらず、風当たりが強くなく、雨が程よくしのげる場所を選びます。

これらの条件を考えると屋根や壁などのカメムシが止まっている場所が越冬向きであることが分かりますよね。

そして自然界でもいい条件の場所があります。それが落ち葉の下です。

落ち葉の下で越冬していたエサキ

実は地面というのは非常に温度が安定しています。落ち葉中は湿度も安定しており、冬の乾燥した空気も大丈夫です。

ということで越冬性昆虫の多くは北側(日が当たらない)の落ち葉の下に潜んでいる場合がとても多いです。エサキモンキツノカメムシも冬に適切な位置の落ち葉をひっくり返していくと出てきます。

落ち葉のある場所の条件も様々である

環境条件的な視点を頭に入れておくと冬の味気ない落ち葉の見方ががらりと変わり、考察がはかどりますよ。
まさにカメムシが我々に教えてくれる知識です。

まとめ

エサキモンキツノカメムシはハートマークと美しい色合いが素敵なカメムシです。

ツノカメムシらしい角がとてもかっこよいのですが、身近なカメムシと比べるとやや見つけにくい種類です。

しかし卵を守る生態などのユニークな面を観察できたりするのでカメムシ観察の入門にとてもおすすめです。
つぶらな瞳にも注目してみてくださいね。
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最も目にする茶色のカメムシ、クサギカメムシの紹介と最強の香りと言われる臭さを確認してみました。

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緑のカメムシの「いつものやつ」ことチャバネアオカメムシです。大量発生の要因や体色の変化など面白い点を紹介。カメムシの発生には我が国特有の事情が関わっているようです。

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参考文献 兵庫県のツノカメムシ 国立科学博物館の研究者紹介