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大きなカメムシの種類は何? 秋に壁でよく見かけるキマダラカメムシは外来種のカメムシ

秋に目にするカメムシたち

秋になると思い浮かぶ臭い虫がいますよね。

黒字に黄色いまだら模様があるカメムシ。大きい

緑の甲羅のような姿をしたカメムシはそれこそ多くの人に嫌われる不快害虫です。

しかし特に都市部で目にするカメムシは緑色ではなく、黒やグレーの色合いをしているものが目立ちます。

今回の記事では生息地を広げつつある外来種のキマダラカメムシを紹介していきます。皆様一度は眼にしたことがあるはずですよ。

キマダラカメムシとは

大体1.5cm位の大きさ

キマダラカメムシはカメムシの仲間の中でもかなり大きな種類で、およそ1.5~2cm程度の大きさの外来種の昆虫です。

幅広い木々の樹液と果実などから養分を吸収します。

色々な果物に針状の口を刺して傷つける

カメムシによる食害は農作物のグレードに影響を与えるという背景があるため、一般の方だけでなく農家さんも含む多方面から悪い印象を持たれている虫です。

この仲間は不完全変態ですが、カマキリのように姿がほとんど変わらないわけではなく、成体と比べるとやや違う姿をしています。

成体になると黒い体に黄色が散りばめられた警告色を放つようになり、じっくり色を観察してみると中々に派手です。

キマダラカメムシの幼体。夏にかけて色々なところで目にする

キマダラカメムシの幼体は写真のようなもので、色は明るいグレー。丸っぽい形に赤の点があります。この姿を目にする方も多いと思われます。

黄色を散りばめた特有の色合い

この色合いから成体になると黄色いまだら模様を散りばめたカメムシ、すなわちキマダラカメムシになることが名づけの由来です。

天敵に対してこのわずかな色合いがどんな効果を持つのかは不明ですが、この種がこの斑紋を持つ以上何かしらの効果が見られるものと思われます。

臭い匂いを放つカメムシの仲間

カメムシらしく臭いにおいを放ちます。カメムシ臭にはパクチー臭と青リンゴ臭のものがいますが、キマダラカメムシはパクチー傾向の強いカメムシです。純粋に臭いです。

また、大型種でありながらも人の気配などには敏感です。壁などで観察していて落下してくるとびっくりするので気をつけましょう。

夏に外灯を見るとカメムシは大抵いる

光に対して正の走行性を持つらしく、秋になると光のある壁などで大量に見つかります。

食性に関してはなかなか食事の観察機会がないのですが、論文によるとバラ科樹木(おいしい果実が多い)を加害するとの記録があります。



外来種であるキマダラカメムシ

夜寒くなる秋には、外灯周りから動かない

このキマダラカメムシですが近年急速に分布を拡大している外来のカメムシです。

日本における記録はそこそこ古く、1770年代に長崎県の貿易主要地であった出島での記録が初とされています。

このことからも外来種らしく輸入品にくっついて日本に入ってきたことが推測できます。ところがその分布は長い間九州の暖かい地域にとどまっていました。

事態が変わり始めたのは2000年代に入ってからで、2002年には山口、2008年には東京でも確認されています。

秋の果実についていることも多い

外来ではありますがその生態は在来のものと同じく成虫で越冬するというタフな性質を持ちます。そのため、一度侵入を許してしまうと長い期間定着し繁殖を繰り返しどんどんと数を増やしています。

なぜ秋に目にし大量発生するのか

カメムシ類の集団越冬

ここからはキマダラカメムシに関する話ではなくカメムシ類にある程度共通する話です。カメムシの仲間は小さな昆虫のわりに寿命が長く年も越します。

産卵は梅雨の時期で秋になると卵から孵った個体数のピークを迎えます。

もみじの紅葉が始まると、虫たちは越冬場所に潜む

秋になると日々の気温が徐々に下がり始めます。すると越冬性のカメムシは越冬する場所を探して回るようになるのです。

ここも越冬性の昆虫に共通しますが、越冬する際に環境条件の変化が少ない場所を選びます。

これは例えば日当たりでいえば南よりも北側、風が当たるよりは避けられる場所を選びます。

特に北側は日が当たらないので昆虫の越冬場所として最適

すると越冬に適した環境というのはおのずと決まってきますよね。

特に大量発生時期に当たる秋頃は、個体数が多い時期にもかかわらず昼間の気温が比較的暖かく成虫も活発に行動します。
すると洗濯物などに張り付いたりするという被害が発生します。

そして夜になるとお家の蛍光灯に正の走行性を持つ生態から集まり、網戸などに大量に張り付くという状況が出来上がります。

このまま網戸を出会いの場として産卵するのがカメムシの王道パターンといえるでしょうね。

昆虫の多くはこうしたライトを出会いの場としているものもいます。

当事者としては恐ろしいですがそれも1つの戦略なんですね。

キマダラカメムシに似たカメムシ

類似種のカメムシ、クサギカメムシ

類似種には普通種のクサギカメムシがいます。
非常に幅広い植物を利用するカメムシで、平地の普通種であることから目にする機会も多いカメムシです。黄色模様がないので判別が可能です。

まとめ


秋になるとよく目にするカメムシ類。その中でも都市部で最近よく目にするのは外来種のキマダラカメムシです。

黄色いまだら模様のカメムシは臭いにおいを放ち、とても嫌われています。
壁などでよく見られるのは光に対し正の走行性を持つ特性とカメムシ類が越冬するのに好むような環境(窪みがあるような)であるからだと思われます。

カメムシ対策便利アイテム

カメムシ専用のスプレーがあります。壁などの場所に集まりやすいカメムシ類に向けて散布すれば、公表4ヶ月の長い持続効果でカメムシが来にくい場を作ることができます。昨今増えているキマダラの性質にもあったオススメスプレーです。



参考文献
島根県大田市内で確認された外来種キマダラカメムシの記録
東京都区部におけるキマダラカメムシ(カメムシ目カメムシ科)の分布

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