秋のカメムシの種類について
秋の代表的な昆虫ともいえるほどこの時期に目にするのがカメムシです。
カメムシにも多様な種類がおり、季節による様々な出会いが楽しめます。
とはいえ街中を始め、人の目につきやすい種類というのは限られてきます。
モンシロチョウが身近な蝶であるように我々の生活圏で目にするカメムシの種類というのもおおよそ絞られてきます。
今回の記事では特に目にする機会の多い緑や茶色の代表的なカメムシ類をまとめて紹介します。身近なあのカメムシがいるはずですよ。
カメムシとは?
カメムシはカメムシ目に所属する昆虫で非常に大きなカテゴリー群です。
意外な例で挙げればセミ類やアメンボ、タガメなどの昆虫もカメムシの仲間です。
カメムシ類の特徴としては草や生物に差し込む特有の口器を持ちます。
この口器は普段は収納されており、虫体を裏返してみると体の中心線に沿って収納されているのが分かります。
今回扱うカメムシの仲間たちはいずれも草本の汁を吸うものですが、果物などからも吸うため農業害虫としてとても嫌われているものもいます。
カメムシ類は越冬性のものも多く、およそ初夏頃に産卵し秋にかけて新成虫が発生します。
種によってはコオイムシのように卵のお世話をする者もおり、観察対象としてなかなかに面白い種類だと思います。
秋にかけて新成虫が発生する生態からピークも秋ごろになります。
網戸や屋根下、洗濯物などに大量発生して困っている方も多いのではないでしょうか?
越冬場所の選択に雨風をしのげる場所や日当たりが悪く温度が一定などの環境条件を分かっているようで、これが屋根などの一般的には虫が嫌いそうな場所で目にする理由です。
また、カメムシ類は光への走行性が強い昆虫です。日の当たる場所や外灯などによく来る要因の1つです。
紫外線領域の波長にはよく反応するようで、昼間でも白色の物体に誘引されている様子を見かけます。
さらには農作物も加害することから一般の方と農家の方に非常に嫌われている虫です。
しかし種ごとの形態の違いや色合いの差、つぶらな瞳など改めて注目してみると魅力も多い虫です。
大量発生にばかり目が向いてただただ処分されてしまうのは惜しい生き物なので紹介していきます。
緑の身近なカメムシ
カメムシといえば緑色という印象の方も多いと思います。
特に農業害虫的な視点で見ると緑色のカメムシは重要な対策種です。
身近なものではアオカメムシ類がとてもメジャーで、チャバネアオカメムシやツヤアオカメムシが代表的かと思います。
緑のカメムシというだけで不快な方も多いかと思いますが、種によってはかなり美しかったりします。
チャバネアオカメムシ
最も目にするアオカメムシの仲間だと思われます。
私の地域においても緑カメムシの中では群を抜いて見かける機会が多く、外灯を始めとする光源や柑橘系などの各種果実類を加害している場面に遭遇します。
果樹類~様々な植物の実で幅広く目にします。
このことからも分かるように非常に広食性のカメムシです。
農業害虫として重要な種類で、岐阜県森林科学研究所によれば100種以上の植物を利用すると指摘されています。
このカメムシはスギやヒノキといった針葉樹を主に利用するカメムシであり、まさに我が国の植林の多くがスギヒノキからなる人工林であることと密接に関係しているカメムシです。
成長にスギ・ヒノキの養分摂取が欠かせず、このカメムシとスギ・ヒノキ花粉の量に相関が見られる研究などもあります。
農業害虫の重要対策種が、これまでの国の施策と強く結びついているとは皮肉なものです。
チャバネアオカメムシはチャバネの名の通り緑の翅の大部分に茶色いまだら状の模様を持ちます。見分けはとても簡単です。
ツヤアオカメムシ
ツヤアオカメムシはアオカメムシの仲間の中で最も美しいと私が思う種類です。
カメムシとしては比較的大型で、緑色のかなり強い光沢があります。まさにツヤがあると言えるでしょう。
ツヤアオカメムシはチャバネアオカメムシと比べると身近な種に似たものがいます。
ツヤがあると言われても光沢感は類似種と比較しないと分からないかと思います。
ツヤアオには予想以上にツヤツヤなので、光沢で覚えましょう。ざっくりと理解しておくだけでも大丈夫です。
ツヤアオカメムシも残念ながらスギやヒノキを利用するカメムシです。
私の観察地域にはスギやヒノキが多いことから必然的にツヤアオの観察機会は増えます。
ツヤアオは集団越冬性があるのか時折集団で隠れられそうな場所に潜んでいます。
今回はミズキの丸まった葉に集まっていました。この葉の中に7匹ほど潜んでいます。
チャバネと同じように食草が大量にあるとどうしても個体数が増えてしまいますね。
ただ美しいカメムシなので見かけるとついつい観察してしまいますね。秋の観察には隠れ場所を探すのがコツです。自然界にある隙間を探してみましょう。
茶色っぽい身近なカメムシ
チャバネアオカメムシ
チャバネはさっき紹介したでしょう。
と思いきや、カメムシの中には越冬個体の中に色合いが変化するものがいます。
チャバネアオカメムシもその1種で、翅にあった茶色の部分が全身に変化しています。
変色は生存上有利なものであり、同じく越冬する昆虫としてはアカボシゴマダラなどのゴマダラチョウの仲間にも同様の戦略が見られます。
枯葉の増える時期には緑でいるよりも茶色の方が同化できるのでしょう。色変化にはおよそ5タイプほどの配色があります。
種の説明は緑のチャバネで紹介したのでここでは省きます。
クサギカメムシ
クサギカメムシはあらゆるところで目にするカメムシで、秋における出現率の大半を占めているように感じます。(私の地域の話)
このカメムシもかなり広食性のカメムシで、農業害虫としても指摘されている種類です。
茶色い翅の最後部が特に色が濃くなっており、淵に定規のメモリのような線模様が一定間隔で入ります。
webでは臭みの強いカメムシと紹介されていますが、私が体験したところアユのにおいがしました。なかなかにいいカメムシな気がしています。
他のカメムシと同様発生は6月頃から始まり、秋にピークを迎えます。やはり紫外線への嗜好性が高く、日当たりのよい白みのある場所でとにかく目にします。
クサギという植物の名を冠していますが、特にクサギを利用するわけではなく、ただ単に臭い木と臭いカメムシのマッチングで名付けられているのだと思います。不憫な子ですね。
黒っぽい身近なカメムシ
キマダラカメムシ
近年生息地を恐ろしいスピードで広げている外来種のカメムシです。
黄色いまだら模様が特徴的ですが、実際に観察してみるとまずその大きさに目が行きます。
♂よりも♀が大きいというのはカメムシに共通しますが、クサギの♀のサイズがキマダラの♂という感覚です。
大型のものは2㎝近い印象を受け、壁についていることが多いクサギとキマダラでもそのサイズ感で判別が可能です。
キマダラも幅広い実などを加害するカメムシです。害虫としての側面もありますがそれよりも人工物などで目にする集団の方が不快な虫だと思います。
我々が気が付かないうちにいつの間にか当たり前のように身近に入ってきたカメムシです。
カメムシを目にしやすい場所
カメムシ経験が豊富なわけではないのですが、よく見かける場所を紹介していきます。
カメムシに興味のある方や防除に多少でも参考になれば幸いです。
まずは壁ですね。
特に多いのは外灯の付く周辺の壁です。LEDでもその波長の一部は昆虫に視認されるものがあります。カメムシ類は比較的良く見えているようで、よく来ています。
また、夜じゃないから壁には来ないというわけでもなく、太陽光に含まれている紫外線を反射するような色のものにもよくやってきます。
例えば彩り豊かな服、日に照らされた人工物、何かしらの白いものなどには昼間でも寄ってきます。
洋服の色に対する紫外線反射の実験では、白が圧倒的に反射し、時点で黄色、グレーなどと続きます。
白い服や白い外灯、グレーの壁などの人工物に来ているのは虫が好む紫外線反射率が高いためだと私は推測します。
例に挙げると黄色系統で外灯のある壁にはクサギやキマダラがとてもよく来ています。
推測の域ですが検証の価値はあるのではないかと思いますね。
カメムシを避けたい方はこの時期は紫外線吸収率のよい色合いを着て実験してみてください。(黒や緑、青など夏に着てると暑い色)
これに加えて昆虫の越冬に関する知識を仕入れておけば、大量カメムシの避け方のイメージがわくのではないかと思います。
カメムシ対策は難しい
たびたび紹介している岐阜県森林科学研究所によればカメムシ防除の困難さが伝えられています。
重要な害虫であるチャバネアオやツヤアオはスギやヒノキを主に利用していましたね。
成虫は果実を加害するためだけにおいしい果実に来ます。
害虫駆除においては例えばクチナシ食いのオオスカシバや桜のオビカレハのように卵から大量発生までが同じ場所で起きるケースが多いのですが、カメムシの場合違う場所で育った個体が成体になるとともに果物に加害するため、問題の根本を断つことができません。
例えるならば蛇口の元栓を占めずに水を止めようとしているもので、カメムシ対策の根本を断つことができません。
カメムシ対策を行いたいケースというのはおおよそ庭木などの果実に大発生したり、雑木林の近隣などで大量発生した個体が外灯に来ているパターンだと思います。
庭木的な状況下で農薬の散布を続けるとどうなるかというと農薬耐性のあるカメムシの出現と、果樹園の生態系バランスが崩れ新たな害虫被害が激化するという問題の出現です。
生物間でつながっている生態系において1種の昆虫だけを駆除しようとするのは難しいという問題ですが、なかなかその反省を生かすのは難しいですね。沖縄に導入されたマングースの事例と同じようなものだと思います。
家の人工物などに来ている場合はそのまま越冬してしまうパターンが考えられます。うっとうしい場合には殺虫系のスプレーを使うのも手です。
もしとんでもない量の発生が起きている場合には申し訳ないですが私自身そういった事例に遭遇していないため、良い手の提案はできません。
いずれにしてもカメムシの防除は要因が外的なものであるため難しいということです。
まとめ
身近なカメムシとして私の地域で特に目にするものをピックアップしました。
緑と茶色のカメムシの中でチャバネ、ツヤアオ、クサギ、キマダラは圧倒的に見かける機会の多いカメムシであるとともに農業害虫や日本のスギ・ヒノキの移植などの様々な背景を見ることができます。
カメムシを通じて生態系のつながりやバランスの難しさを学ぶことができるので、ぜひ題材としてよく観察してみてください。
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