特に目にする緑のカメムシ
秋にある意味話題に挙がるカメムシ類。

特に今年は大量発生が話題となり、全国各地で虫が苦手な人による阿鼻叫喚の声をよく聞きます。
大量発生しているカメムシ類に注目してみるとその多くが緑色をしていることに気が付くはずです。カメムシ類はとてもたくさんいるのになぜ緑のものばかりが話題に挙がるのでしょうか?
今回の記事では農業害虫や大量発生することで有名なチャバネアオカメムシを紹介し、その発生要因と我が国の背景などを絡めてお伝えしていきます。
チャバネアオカメムシとは?
チャバネアオカメムシは体長1㎝程のやや小型のカメムシです。

多くの人が持つ「カメムシといえば」のイメージにぴったりであり、チャバネの名の通り緑色の体に茶色い翅を持つマダラ色のカメムシです。
農業害虫として悪名を轟かせているむしであり、かつ大量発生するカメムシでもあります。
カメムシ類の多くに共通するように越冬性の昆虫であり、産卵はおよそ5~8月頃まで行われます。

成虫の出現は初夏~秋まで続くことから成虫の出現ピークは必然と秋に最大数となります。
カメムシ類の中でも果実嗜好性の高い種類であり、種類問わずあらゆる植物の果実を探していくことで出会えます。
特にわが国で多いスギやヒノキに隣接した環境でよく見られ、秋には大量発生をして多くの人を恐怖させていることでしょう。
大量発生種と食草の関係
昆虫の出現には必ず食草が関連しています。特に植物利用の傾向が強いほどこれは顕著です。

例えば茶色のカメムシで最も身近なクサギカメムシは20科50種以上の植物を利用するという食性の広さから幅広い環境で目にしますよね。

このチャバネアオカメムシは我が国でかつて一生懸命植林したスギやヒノキをの果実を利用します。
面白い点は成虫はあちらこちらで目にするのですが、幼体の生育過程ではスギヒノキから吸汁する必要があるという点です。

研究によればチャバネアオカメムシの成虫は多種多様の果実を利用しますが、幼体は主にスギヒノキを利用していることが指摘されています。
成体は広食性で幅広い果実も利用することができます。
チャバネが大量発生するための環境要因(ヒノキ類の植生)が日本の環境では整いすぎているんですね。

我々が目にしているこのチャバネは、本来の姿の一端でしかないということです。
特に2齢幼虫がスギやヒノキの胚(養分が多い)を吸うことが成長上重要らしく、植林地ではスギやヒノキの成長を妨げる点でも害虫と言われています。
彼らの餌資源はまさに無限に生えていることからチャバネもまた大量に発生するのです。

これを裏付ける話があり、チャバネカメムシの大量発生にはスギヒノキの花粉量が関連していると指摘した話があります。
この研究では19年もの長期にわたりチャバネとスギヒノキの発生を調査しています。

これによれば90年、95年、2002年に大量発生があり、ヒノキの結実量の豊作は88年,90年.93年,95年、2002年で餌資源となるスギヒノキの果実が多い前年度の夏に豊富な餌があることで大量発生につながった可能性があると指摘されています。
とはいえ気温条件や日照条件の明確な関連は認めておらず、環境条件的な面での確実な大量発生の予測は難しいようです。
幼体がスギヒノキを主要で食べ、スギヒノキの果実が前年の夏にできることから彼らの発生には大きく関わっていそうですね。
農業害虫として強烈なカメムシ
カメムシ類は農業害虫としても深刻です。

このチャバネは成虫が様々な果実を加害することからカメムシ類の中でも重要な対策種です。
カメムシ類の果実への加害は、農作物のグレードを落とすという点が注目されると思います。

特に稲などでは深刻ですよね。見た目の問題以外にも針を突き刺した場所から病原菌が侵入することで果実を腐敗させたりする場合もあります。

チャバネカメムシが大量に寄生したナシ類の果実が軟化したり腐敗する現象が認められており、特にチャバネの発生と隣接している地域でのナシ園で果実腐敗症が引き起こされたこと、再現実験においてチャバネ加害+病気を引き起こす細菌の噴霧によって果実腐敗が起こされたことからチャバネによる影響によるものと言えます。
このうちの実験では40匹のチャバネを放ったもので4果中全てが、5匹放ったものでは1果が腐敗したそうで、なかなかに深刻なものであることが分かります。
グレードを下げるだけでも厄介なのに果実自体をダメにしてしまうというのは、農家の方が躍起になって駆除するのもよくわかりますよね。
チャバネアオカメムシの色彩変異
チャバネアオカメムシの面白い点は越冬個体に茶色い姿に変化することです。

これについてはチャバネカメムシは越冬前に体色が変化し、越冬後に再び緑に戻るということが明らかになっているので、11月頃の寒くなる要因をトリガーにして変色が起こるものかと思います。

チャバネの体色変化を調査した研究では。日照条件が1日15時間の長期間明るい時期から、1日12時間へと短い時間へ変化することで産卵の抑制及び体色変化が始まると指摘されています。
逆もしかりで日照条件が明るい時期12→15時間へと変化すると再び産卵および体色が緑へと変化するようになるようです。
これらは20度の恒温条件下でのものです。

日照条件というものは我々の感覚でも理解しやすいですが、虫たちの中には明確にこれを利用しているものがいるようで、蛹越冬する蝶の幼虫が何世代目で越冬蛹になるかという話にもこの1日の日の長さが参照されていました。
季節を示すものさしは多くはありませんが、昆虫たちは昔から変化することのない日差しの時間を指標として季節を感じ取っているのかもしれませんね。
カメムシ類を避けるための考察
カメムシ類をどのように避けるかというのは虫嫌いの人からすると死活問題だと思います。

カメムシ類は特に紫外線の波長が好きなのか白色灯やLED、太陽光を反射している物質に良く集まります。

体につくのが嫌という方は色に注目するのがおススメで紫外線を反射する白、黄、グレー当たりの色合いは避けた方がいいかもしれません。特に白や黄色は壁などを例にとるととてもよく集まってきているように感じます。
昆虫ライトトラップを想像すると分かりやすいと思いますが、白色のネットを敷いたり幕としてかけたりしますよね。それだけ反射がいいということです。
一方で黒や紺などの紫外線を吸収しやすい色合いはカメムシには見えにくいので付きにくいように感じます。(個人の感想)
野外で行動していても服やズボンにカメムシはついても頭につくことって少ないと思うんですよね。
まとめ
チャバネアオカメムシはとても身近なカメムシの代表格です。
その発生にはスギ・ヒノキが深く関わっており、幼体は針葉樹、成体は果実類を利用します。
農業害虫でもあり、彼らの加害が明確に病気を引き起こしたり品質の低下を招くことが明らかとなっています。
悪い面がある一方で季節による体色の変化などの面白い面も持ち合わせています。苦手な方は紫外線の反射を意識した色合いを身につければ被害を減らせるはずです。
参考文献
スギ・ヒノキ球果を吸汁するカメムシ類の発生量とヒノキ結実量の年次変動
チャバネアオカメムシの加害部から感染したErwiniachrysanthemiによるナシ果実腐敗症の発生
チャバネアオカメムシの休眠発育と体色の変化
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本記事で紹介したチャバネと同様にスギ・ヒノキ利用の緑のカメムシの紹介です。見かける頻度はチャバネにも負けないかもしれませんね。