臭いカメムシランキング上位!?クサギカメムシ
秋も深まる11月、外灯や壁でカメムシを見かける機会が増えますよね。
緑の印象が強いカメムシですが、よく観察してみると黒っぽいカメムシもいることが分かります。
実は身近ながら臭いカメムシランキングに名を連ねるクサギカメムシというカメムシです。
今回の記事では頻繁に目にするクサギカメムシを紹介し、その臭さの検証や類似種との違いなどを見ていきます。
クサギカメムシとは?
クサギカメムシは主に初夏~初冬まで目にする茶色と黒を混ぜたような中型のカメムシです。
緑の身近なカメムシ類と比較するとかなり大きく見えますが、大型種と比べると小さく見えます。
色合いはかなり地味で葉っぱや地面についていると中々に気が付けません。
カメムシ類は多くが成虫越冬を行います。こうした色合いを持つことは生存に有利な戦略であると思われます。
クサギカメムシのように植物の名がついている昆虫はその植物を専門で食べるものもいますが、クサギカメムシは農業害虫で知られるようにバラやマメ科など幅広い植物を食べます。
論文によれば雑食性で20科50種もの植物を食害したとの記録があります。
広食性の昆虫であるために生存範囲が広く、日本全国様々な場所で見られます。
農業的な視点で見ても代表的な害虫であるチャバネアオカメムシよりも大きな被害をもたらすことが指摘されており、特にナシやモモといったおいしい果物への被害が目立つと指摘されています。
産卵はおよそ6月頃で、人気の果実をつけるバラ科植物の生態に合わせているように捉えられます。
カメムシ類のように成虫で越冬するものは、日の長さがその生態に大きく影響を与えます。
クサギカメムシの場合7月中旬ごろの日の長さを境に今年産卵する個体と来年産卵する個体に分かれることが分かっています。
これはおそらく加害するバラ科樹木の結実との関係が深いのではないかと思います。
クサギの印象が強いですが、その発生にはあまりクサギは関係ないです。
それでも名付けられたのはおそらく臭いクサギと臭いカメムシというシンプルな点で結びつけられたのではないかと思います。
臭いカメムシランキング上位の異名
このクサギカメムシは人家の屋根や壁などの環境で越冬をします。
カメムシの中でも特に嫌われているカメムシで、その理由はシンプルに多きめで不快なのと、カメムシの中でも臭い種類とみなされているからだと思います。
クサギの臭気を濃縮しているわけではなく、分泌量の多さで勝負しています。
カメムシ類の臭気は彼らにとって重要なものであり、敵が触れてきた際の防御手段であるとともに捕食された際の攻撃手段でもあります。
この臭気も既に研究がされており、カマキリにカメムシの持つ複数の成分を塗った餌を与える実験から面白いことが明らかとなっています。
特定の成分を塗った餌を食べたカマキリは食べることを辞め、これに味覚を阻害する効果があることが分かりました。
そしてそれでも食べたものの中には死ぬものが現れたことから毒性があることも分かったのです。
カメムシ類を密閉容器に入れると自身の臭気で死ぬという話が話題になりましたが、それを裏付ける効果ですね。
クサギカメムシはこの成分を多く分泌することで誰の眼にも臭いカメムシとして映っているのです。
臭さの検証
秋になれば様々な場所でこのカメムシを目にすることができます。
臭いカメムシ類の成分は植物の青臭さを凝縮したようなもので、よくパクチー臭にたとえられますよね。
私はパクチーが苦手なのですが、果たしてクサギカメムシの臭気はどのようなものなのか?私によく効くのか検証してみました。
まず壁を探してクサギカメムシを捕獲します。
臭気を出させないためになるべく穏やかに捕まえるのがコツです。
臭いを閉じ込めるジップロックをチョイスしました。捕まえやすくてかなりおすすめです。
作戦としては化学反応させた試験管のように香りを閉じ込めて袋を開けた後に手で仰ぐプランで行きます。
袋のクサギカメムシをもみもみして刺激していきます。甲虫ではないですが結構硬いですね。
昔昆虫食に興味があったときに何を血迷ったのかハードルの高いカメムシを茹でて食べた時の記憶を思い出します。
あれはいきなりハードルを超えすぎていました。
さて揉んでみましたが袋の中に液体がありません。
試しに香ってみてもやはり香りがしませんでした。もしかするとカメムシには臭気を発するトリガーがあるのかもしれません。
仕方ないので袋から出して素手で行きます。臭気を出さない原因が袋であると仮定して指で抑えてみたのですが?
意外にもこれでも液体を出しませんでした。
ここで捕食シーンを思い浮かべて指で挟んで空中に浮かべてみることにしました。
ここまでしてようやく液体が噴出されました。
カメムシの液体はおそらく足の付根などに部位があり、これが当たる条件にならないと噴射されないのかもしれませんね。
最強と名高いクサギカメムシ。名に恥じない液体の量でカメムシ自体が水分で一部つやつやしています。
その香りは...?
上品なきゅうりでしょうか?
最も適切な香りは生の鮎の香りです。
正直に申し上げるとかなりいい香りだと思います。これは非常に予想外であまりのいい香りに指を頻繁に嗅いでしまいました。
クサギカメムシはwebなどで調べると非常に臭いと書かれていますが、その殆どは実際に香りを嗅いでいないのではないかと疑ってしまうほどに良い香りです。
まだサンプル数が少ないので結論を出すのは早いかもしれませんが、今後見つけたら捕まえて嗅いでみようと思います。
少なくとも私の捕まえた個体はキュウリウオ科の魚の香りでした。
クサギカメムシの付くクサギとは?
既に述べたようにクサギカメムシはクサギで発生しているわけではありません。
しかしその名がついていることから紹介しないのももったいない植物なので、臭い植物として紹介しておきます。
クサギには特有の臭気成分があります。ただ万人に嫌われるカメムシ臭とは異なり人によって評価が分かれる香りです。
私的にはピーナッツに近い香りだと感じていて、春先の新芽のてんぷらなどはとてもおいしいと思える植物です。
臭気があるようにシソ科の中木で、大きさは大きいと7m位まで伸びます。
春は新芽の利用、夏は訪花性昆虫が良く訪れる花をつけ、秋以降は赤色の可愛らしい果実を見ることができるとてもいい植物です。
類似種キマダラカメムシとの比較
クサギカメムシには姿がとても似たキマダラカメムシという外来種のカメムシがいます。
両者ともに人工物的な環境(壁や外灯)で目にすることが多く、紫外線などの光に寄せ付けられる傾向が強いように感じます。
ご存じの通り室内の白色灯にも紫外線は含まれていますので、これに寄せられて網戸や壁によく張り付きます。
2種の違いは写真で比較すると明らかです。
キマダラカメムシは黄まだらの由来の通り体に黄色い斑点が散りばめられています。
一方でクサギカメムシには淵につく白模様はありますが、翅の中心部分に黄色模様はありません。
そして実物を比較すれば一目瞭然、キマダラカメムシの方が大きいです。
キマダラカメムシもバラ科やマメ科など幅広い植物を加害しますが、こうした外来種の出現によりもしかするとクサギカメムシ類も生活圏を奪われているのかもしれませんね。
害虫としてのカメムシ類
カメムシの成虫越冬は自身が吸水する植物の都合に合わせていると考えられます。
クサギカメムシは卵から成虫までおよそ30日前後で5月下旬頃から新成虫の発生が見られます。
この時期から秋にかけてはバラ科樹木を始め様々な植物が未熟果を作っている時期で、カメムシ類は未熟~熟すまでの長い期間加害することができます。
農作物の品質はとても厳しく、カメムシ類に加害されてしまうと容易にそのグレードが落ちることからカメムシ類は嫌われています。
これが農薬の使用にも拍車をかけています。カメムシ類への対策は簡単ではありません。
まとめ
クサギカメムシは秋によく目にする2大カメムシです。
幼体が夏~秋にかけて発生し成虫で越冬することから秋に個体数のピークを迎えることが要因です。
臭いカメムシとして知られていますが、実験をしてみるとその臭いは爽やかなきゅうり臭でむしろ心地のいい香りでした。
光に対して正の走光性を持つことで外灯周辺で比較的簡単に遭遇することが可能です。とてもユニークな昆虫なので見かけた際には身近なカメムシ類との違いを観察してみてください。
参考文献 クサギカメムシの生態 カメムシ臭気成分の化学生態学的研究
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類似種として紹介したキマダラカメムシの紹介です。クサギと合わせてこの2種だけ覚えておけば大丈夫です。外来種としての側面をよく紹介しています。
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ハートがかわいいユニークなカメムシの紹介です。結構身近な種類で見たことのある方も多いのでは。
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緑と茶色のカメムシの紹介です。大量発生することも多い種類ですが、その背景にはスギ・ヒノキが多い日本の事情があるようです。
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緑や茶色のカメムシの中で最も目にする子たちをまとめました。よく見るあのカメムシたちが載っているはずです。
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サクラで目にする黒と赤色のあのカメムシの紹介です。外来種で生態が異なり、冬は幼虫で過ごします。肉食性で人も刺すサシガメの仲間です。