河川敷の王者オニグルミ
クワガタ採集をしようと考えた場合多くの方がコナラやクヌギなどの雑木林の樹木に手を出してしまいます。
しかしこれは自ら採集のハードルを高くしていると言わざるを得ません。
今回の記事では初心者こそ河川敷に行くべき理由と、河川敷で見るべき樹木としてクルミの仲間を紹介しその見分け方をお伝えします。
オニグルミとは?
オニグルミはクルミの仲間に所属する植物です。花期は4月頃で夏ごろには房状の実を付ける特徴があります。
実は熟せば食べることも可能で、重力散布後水の流れによって流されて新天地で発芽するという性質をもちます。
このことからオニグルミの分布は河川敷に集中しており、水辺の付近で幅広く見ることができます。
幹は白くてすべすべしています。葉も羽状複葉と言って特徴的なのですが、初心者は葉まで見ると混乱するので見なくていいと思います。
河川敷ではクワガタやカブトムシなどの樹液性昆虫が良く訪れており、知っている人は皆河川敷はクワガタ採集の王道であると理解しています。
河川敷でクワガタが取れる理由
虫の出現には食草と餌資源が不可欠です。クワガタの場合には朽ち木と樹液が必要です。
河川敷は上流域から流れてきた太い枝や幹などが堆積します。また、次世代のための朽ち木も同様に上流から常に供給されていくため、継続的な発生にも期待が持てます。
そして初夏から秋ごろまでは河川敷で優占するオニグルミやヤナギの木に樹液が流れ出ます。その貢献者はコウモリガという蛾の仲間であったりカミキリムシの仲間であったりします。
クルミやヤナギがクヌギやコナラと異なる点は樹皮がとても柔らかいために自身の顎や角で樹皮を傷つけて樹液を出すことができるという点です。
これにより雑木林では他の虫が木を傷つけることに依存している樹液を自身だけでも得ることができるので、非常に多くの個体を見ることができます。
しかも雑木林ではクヌギコナラ以外にも多くの樹木が存在しているのに対し河川敷ではオニグルミ、ヤナギの割合が圧倒的に高く、次点でエノキやニセアカシアなどが出てきます。
見るべき木が限られており、その木も特徴的な見分けるポイントがあるために初心者向きです。
初心者は実を見ること
クヌギの見分け方、コナラの見分け方を一生懸命学んで結局木々が多すぎてわからないよ!となった方は多いのではないでしょうか?
クルミの木は夏になると特有の房状の実を付けます。この実さえ見つけられればクワガタの来る木です。簡単です。
しかも都市部の河川敷の場合河川敷から木にかけて人の入った痕がわだちとして残っていることも多く、人の跡があるからこれは虫が来る木なんだろう!と判断しやすいです。
樹皮や葉を見て判断できるようになればより小さな木も採集対象として見ることができます。
クヌギやコナラは前述のようにカミキリムシなどの外的要因がないと樹液が出ません。
オニグルミなどは虫自身が傷つけられるため、雑木林では見ないような細い木にもついている可能性が十分あります。
クルミの葉は羽状複葉と言い左右に1対ずつ手のひらほどの大きな葉がついていきます。先端のみ3枚になっています。
手のひらほどで羽状複葉の葉は河川敷ではヌルデなど一部被るものがありますが、数は多くないので見分けやすいと思います。
樹皮が白く滑らかなのも特徴ですね。
まず実を見て見分けていき、数をこなして来たら葉の雰囲気や樹皮にも注目してみてください。
時期について
河川敷のクワガタ採集は実は長期間行えます。具体的には5月のヒラタに始まり10月頃までできます。
昼も夜も採集できますが真夏は暑すぎるので夜だけにするのがいいと思います。
コクワやヒラタなら5~6月前半、ノコやカブトなら6月下旬~7月中ぐらい、8月になるとノコとコクワばかりです。
臆病なヒラタは5月や9月頃がいいと言われていますね。
蹴りが有効なオニグルミ
オニグルミは水で種子を散布するため、河川敷では次々と新しいクルミが生まれます。
これにより河川敷には細いものから太いものまでいろいろなサイズのオニグルミがあります。
しかしその全ては蹴っても問題ない程度のサイズ感です。
蹴り採集にうってつけの樹木であるため、ハチなどのリスクに気を付けながら蹴っていきましょう。下草が茂っている場合が多いのでそこは注意です。
蹴り採集に関してはやり方を記したものがあります。後日記事を上げますので少々お待ちを。
樹液採集も可能
蹴る前にはしっかりと樹液を目視しておきましょう。クルミの樹液はやや特殊な形である場合が多いです。
まずコナラやクヌギのように発酵臭がする場合はほとんどないです。さらさらした樹液がちょろりと流れている場合が多いんですね。
また、クヌギでは幹に入るカミキリムシやボクトウガに由来しますが、クルミでは自身でも傷つけられるため、枝などの細い部分にもついている場合が多いんですよね。
オニグルミは根元から枝先まで念入りに探しましょう。
幹や枝には写真のような木くずの蓋のようなものができている場合が多いです。
これはコウモリガという大型の蛾の幼虫によるものです。
蓋を覗いてみれば樹液がたまっており、コクワガタやヒラタクワガタが潜んでいる場合も珍しくありません。
河川敷は足元にススキなどの草本があり、クルミやヤナギなどの低木も生えています。
コウモリガは草地で育った後に樹木に入るという変わった蛾なので、河川敷で目にする機会が多いんですね。
樹液がなぜ発生するのか?その要因を自然の繋がりから理解していくことで樹液のメカニズムも分かりやすくなりますよ。
オニグルミの生える場所を探す
さてそんなオニグルミですがどうやって見つけるのか?というのが難しそうですよね。
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これはグーグルマップなどで河川敷に緑がある場所を探していくのが効率的です。
詳細は別記事ですがやり方を記していますので参考にしてください。
細い河川では断定できませんが、一級、二級河川程度の川であればたいていクルミは生えています。
名を挙げれば相模川や多摩川は上流部は不明ですが中流域からはよく見かけますし、境川、金目川、酒匂川、中津川、鶴見川などの河川でも普通に目にします。
このことからも河川の普通種であることはよくわかると思います。
河川敷の中の森をうまく見抜いていきましょうね。
河川敷の注意点
ここからは私的な注意点を紹介していきます。
ぬかるみが多い
水辺に隣接している河川敷は水が集まりやすいだけでなく、車や人により常に踏まれるために水がしみ込みにくい環境になっています。
ぬかるんで滑りやすいので昼間のうちに危険個所をしっかりと把握してリスク削減をしましょう。
下草で入れない場合が多い
ススキやヨシなど1mを超える下草が広範囲に生えている場合が多いです。
イネ科の草本は堅いことが多く、肌を出していると切り傷だらけになります。草が多すぎる場合には諦めるか、先行者のわだちを通りましょう。
ヒラタを狙いたいなどの特別な理由がある場合にはマダニやツツガムシ対策としてつなぎなどを着用し、重りの入った長靴などでマムシ対策もしたいところです。
しかし死ぬほど暑いので気を付けましょう。
マダニやツツガムシのリスクがある
河川敷は暑く砂利や石などの熱の影響か乾燥しがちです。水辺ということでタヌキなどの動物類の出入りも多いことからダニ類はよく見られます。
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わだちなどを利用する場合でも化学繊維などのマダニが張り付きにくい材質の服を使うか、ディート含有のスプレーを利用してリスクを減らしましょう。
マムシがいる
水辺の宿命です。昼間も夜も足元に細心の注意を払ってください。
マムシが怖い場合には舗装された道とクルミにつながる先行者の道だけを利用し、しっかりしたライトで足元を確認してゆっくり進んでください。
擬態しているマムシは弱い光では分かりにくいので、強力なライトで影が作り出せるくらいの方が安心できると思います。安全第一です。
コマチグモなどの毒グモもいる
ススキなどの葉がくるりと巻いている場合、それはカバキコマチグモなどの毒グモの巣です。河川敷に多いです。
刺激するくらいでは出てこないですが、掴んだり開くと出てきて噛まれます
トイレがない場合が多い
地味に注意です。冷たい飲み物や食べすぎなどには注意しましょう
オニグルミは河川敷ということで知らない人には縁のない樹木です。しかし初心者こそ分かりやすい樹木を見るべきなので今回の記事を参考にクルミで探してみてください。簡単に出会えるはずですよ。
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河川敷で特に有効となる蹴り採集の紹介です。細い木の多い河川敷の昼間に特に有効的に試せる方法です。