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ツツジの花が咲かない理由は?花芽を3倍以上に増やすには剪定しないこと!

ツツジの花が咲かない。何が悪いのか

名所つつじが岡公園の満開のツツジ。

ツツジの世話をしているのに花付きが悪い、花が咲いたのになぜうちのは名所のようにならないのか?

つきっきりで世話をしたのに花はこれだけ?

1年間お世話してきたツツジの花が咲かないとショックも大きいですよね。

今回の記事では数万株のツツジを観察する中で見えてきた花芽を増やす方法を紹介していきます。

もしかしたら目からうろこな情報も含まれているかもしれませんので花付きで悩んでいる方は読んでみてください。頑張れば6倍くらいには花を増やせる可能性があります。


前提知識など紹介しているので、本題に入りたい方は花付きを3倍以上にする方法をタップ!

ツツジの花付きの段階について

まず美しく咲いているツツジという抽象的なものを筆者と読者で統一するために美しいツツジの状態を定義しましょう。

誰の目に見ても美しいのは全方位に満開でもこもこな状態

これは下から上までもこもこした状態で咲いているツツジと定義します。

具体的には名所つつじが岡公園のような全身にふわもこな花がついている状態です。
これをベストであるとすると他にも開花の段階はありますよね。

花は咲いているが数が少ないパターン。比較すると株自体の成長が弱かった

花は咲いているが名所程モコモコにならず、まばらというパターンや
そもそも花の割合が3割程度以下や

花が咲いていないツツジの例。花期なのに寂しいもの

花すら付きませんでしたということもあり得ると思います。

この花付きを最善にする方法に関しては名所を訪れて何がその差を生んでしまうのか非常に疑問を持っていました。3年間ツツジを観察し続けてその答えにたどり着けそうなので共有したいと思います。


ツツジの花付きを悪くする要因について<前提知識>

webなどでツツジの花付きを悪くする原因について調べると剪定時期に関する指摘というのはかなり多いです。

こうしたボンボンのような花つきを狙うのは生態的な理解が不可欠

これは事実ですが深く掘り下げていく事例は見つからないので詳細を紹介します。

花期がクルメ系より1月程遅いヒラド系はより顕著に剪定などの差が現れる

少し古い論文になりますがオオムラサキツツジというヒラド系の大輪ツツジを対象にその花付きを調べた論文「ツツジ類における剪定・刈込時期と花芽形成の時期との関係について」にてオオムラサキツツジは無剪定時に86.5%、花後直後に刈込をすることで68%程度の着蕾率(翌年の花芽になる率)になることが明らかになっています。

同研究では刈込時期が遅れるほどに着蕾率が低下することが明らかとなっており、花付きを最高率で良くしたいならば剪定をしない。
妥協案としては花がまだ咲いている時期に軽く剪定する必要があります。

見た目以上に美しいツツジを作るのは難しい。適当な管理では不可能

ご自宅のツツジを真夏や秋以降に手入れしていて咲かないという場合にはこの点を新しく理解して
「剪定しない」や
「花の終わり際に刈るようにする」や
「葉がなくなるまで切らない」

といった管理の仕方を変える必要があります。
上から2つに関しては論文指摘の通りで、3つ目は初出だと思うので解説しますと、ツツジの刈込にも段階があります。

ツツジの葉(左に飛び出た枝を例に取る)には葉がある場所と葉のない枝のところがある

この論文で研究されているのは緑の葉があるところ(今年のびる枝)まで刈る場合と、茶色く葉が無い所まで刈る(前年以前の枝)まで切る場合の2パターンがあります。

おおよそ今年枝まで刈るパターンが多いと思いますが、もし刈込面が茶色一色で緑の葉が無い場合にはそもそも刈りすぎです。

茶色まで刈ってしまうと花後直後でも30%と蕾率は著しく低下します。なので刈込にも注意が必要です。


刈込や剪定時期の遅れが問題でない場合には、病害虫や樹勢が弱っているというケースも考えられます。

樹勢が弱っていると思われる個体。土条件は鹿沼土+野菜などの培養土で統一しているが、これだけ枝の伸びも花つきも悪い

私の家のツツジも購入直後から目の伸びが悪く花付きも良くない個体がいます。

これは1株では分からないので例えば他の同条件下のツツジとの新芽の伸び具合や花の付き具合などから比較の中で調べていく必要があります。

心食虫ことベニモンアオリンガ。市街地でも発生するのでこの虫の被害は最優先で確認

病害虫の場合にはベニモンアオリンガが挙げられます。新芽に穴が開いていないか確認してあげましょう。 剪定以外で最も花を減らす要因です。

恐らく数年間以上刈り込みだけされている場所の例。芽が細かくなり花が咲かないばかりか秋に刈り込みもしていた

また、数年間刈込しかしていないというのも花が咲かない要因になりがちです。刈込管理しかしていないならば剪定ばさみで形をブロック状から木らしい姿に戻さないとダメな場合もあります。


花芽を減らす要因について主要なものとしてはこれらのものが挙げられます。まず上記要因を考えてみましょう。


花付きを3倍以上にする方法

ここからはwebなどの論文では探せない実体験に基づく花芽の数が変わる差を紹介していきます。

同じツツジなのに差がついてしまうのはなぜなのか。疑問を持って理由を調査してきた

まず前提としては前述の無剪定で9割程度、刈込では花後直後で7割程度の花付きが期待できるというものを共有しておきます。

結論から述べるとツツジの花芽には成熟の段階があり、これにより花芽の数が変わります。

剪定や刈り込みと無剪定区を作り対照実験した。結果剪定や刈り込みを入れるだけで花芽はついても数が減ることがわかった

刈込や剪定時には大多数が1つの花芽になる傾向が確認できました。一方で無剪定時には先端に花芽が3~7程度と数が増えました。

よく見るともこもこの枝は飛び出た表面の太い枝についていることが分かる

通常ツツジの花芽というのはその春以降に伸びて十分成長した枝の先端につきます。

もし枝の剪定などを行うと新しい芽を出すのにおよそ3週間~一月程度かかります。

刈り込みを入れたツツジの例。分化期に当たる6月下旬でもまだ若々しい枝ができており、花芽に変化するチャンスを逃していると言える

すると無剪定の枝はツツジの花芽分化期に当たる6月下旬ごろに既に十分な枝を用意できているのに対し、剪定や刈込を行った枝は枝が柔らかく、花芽をつけるのには不十分な状態となっています。これにより同じ花芽であるように見えても花の数が違うという現象が起きます。

この点は花芽分化期を終えた晩夏のツツジの先端を見れば明らかで、無剪定のツツジは8月頃には花芽がはっきり確認できるのに対し、剪定や刈込の場合にはこの時期に花芽が確認できません。

剪定しないと花芽の充実が早いぶん芽が充実してくる。剪定を入れると花芽はついてもその数が少なくなる傾向が見られた

最重要ポイントはここで、ツツジの花芽は先端のものが十分な大きさになると2つ目、3つ目の花芽を作り始めます。(太い枝で顕著)

ツツジの上部は花芽の多い枝(高い位置につく)と花芽の少ない枝の2つにより構成されている

そのため、ツツジの剪定は通例として春に行うのがベストであるとされていますが、そもそも剪定自体をしてしまうことで花芽の充実具合が変わり、結果花の数が大きく変わってしまうことが分かりました。

7月の中旬にもなれば花芽が確認できる

無剪定区では剪定区で芽が育つまでの1か月分、多くの栄養を花芽に注ぎこめるので花数が大きくなるのです。この差には私自身目からうろこでした。


これは細い枝ではあまり見られないのですが、やや太めの栄養がよく流れる枝で極大の差となります。

外周に飛び出る枝の花数が多い例

ツツジの花芽は通常クルメなら2つ程、ヒラド系なら1~2つ程の花が咲きます。

ヒラドは一つの花目に1.6程度の花がつく

ヒラドで仮定すると先端の花芽が基本1つとなる剪定、刈込の場合は花が咲いても1つから2つと少ないのに対し、無剪定の場合には花芽が6~8程度期待できます。こうした強い枝は率先して切られてしまうので知らなかった方も多いのではないでしょうか?

無剪定で花芽を充実させれば伸び方の違う枝が多数形成されるので木の形が不均一になる

これにより花数がブーケのように増えるのでもこもことした印象を得られるのだと分かりました。つつじヶ丘公園のものも上部から枝が飛び出ているのが見て取れますね。

ヒラド系は大型のツツジなので枝も太いものが多いです。すなわちツツジの生態に合わせた管理をした際にそれだけ結果も生まれやすい種類であると感じています。

左:刈り込んで強い枝を除去した区、右:剪定などせずに強い枝を活かした区。

参考に今冬の無剪定と刈込区を比較しますと無剪定区は太く良く伸びた枝の先端に複数の花芽をつけており、刈込区ではほとんど1つしか確認できませんでした。

刈込は花後3週程度だったと記憶しています。

無剪定も刈込も花芽をつけるという点では鑑賞にたえる花付きにはなります。

しかし極上の花付きを目指していくならば今回の記事のポイントはマストな知識になるのではないかと思います。

ただし植物は成長します。何年かに一度は手を入れる必要が出てきます。ここで剪定のワンポイントを紹介。

わかりやすく冬芽で見ると芽の真上で切ることでその芽に栄養を振り返ることができる。背を下げられる切り方。枝の途中で切ってはいけない

園芸をやられている方は切り戻し剪定を知っていると思います。ツツジの剪定をする際にはなるべく枝先には触れず、枝を分岐で切るようにして挙げることで減らす花芽を最低限に抑えることが可能です。

とにかく花を形成する部分にハサミを入れない。これを徹底することで花芽を劇的に増やしつつ樹高も下げることができますね。



ツツジは構いすぎてはダメなことがよくわかりました。

花芽の数が増えれば花の数は倍以上に増える。生態を理解すれば十分可能

この方法では花芽の数が純粋に増えます。タイトルでは3倍としていますが、厳密には7~8倍程度に増やすことも可能です。

ツツジの花付きを改善したいならば最初に指摘したいくつかの花芽を減らす要因を確認した後、剪定しないという選択をしてみるとよいでしょう。翌年には成果が出せると思いますよ。

花付きを改善できないパターンの紹介。

ツツジの花付きを劇的に増やす方法を紹介しました。しかしこのケースがあてはめられない場合があります。

刈り込みのし過ぎにより枝が過密になると花芽をつけるための栄養が分散してダメらしい

刈込のしすぎにより形が角刈りになっていて花芽も咲いていないくらい芽や葉が細かい場合です。

花芽の形成には栄養を集中させる必要があります。自身で数万規模のツツジを観察した結果この細かい状態では花はついても1つにしかならない場合が認められました。

一度トリマーなどをやめて剪定ばさみで自然な形に再生してあげる必要があります。この場合には最短で2年あれば美しい花付きに戻せますよ。

私的オススメアイテム

花後にはお礼肥としてリン酸含有量が高い油かすを撒いてあげましょう。リンは日本の黒土では吸収されやすく、含有量が高めの物を選ぶのが有効であると感じます。栄養の流れやすいハチでは2ヶ月に1度くらいの頻度で少量を与えるのがおすすめです。

葉に白い点や花芽が枯れていたり、葉が食べられている場合にはベニカがオススメです。翌年の花を維持するため、樹勢を維持するため、発見し次第手を打ちたいところです。
庭的な環境ではいずれも発生しやすいので備えておくのが吉です。

剪定をする場合、葉先に触れるのはオススメしません。枝の分岐へ切り戻して再生してあげましょう。この剪定ばさみは落葉性を除いてあらゆるツツジの枝を楽に切り落とせます。私も愛用しているオススメハサミです。



参考文献
ツツジ類における剪定・刈り込み時期と花芽形成の関係について(内田均・萩原信弘)

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名所のツツジは美しい形のゴール設定と言えます。本物の美しさを一度確認しておきましょう。
庭のツツジがこんな姿にできるならどんな労力でも払いたいものですよね。
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害虫にお悩みなら木くずから害虫を見分ける方法がおすすめです。

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ハダニやグンバイなども数で攻めてくる害虫です。光合成効率が落ち、花つきに影響を与えると考えます。

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害虫などの要因に関して気になる方におすすめです。