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ツツジの花芽と葉芽の見分け方。無剪定と剪定時の花芽形成時期の違い。

ツツジの花芽と葉芽を見分けるには?


ツツジの仲間は丈夫で適当な管理をしていても枯れることはなかなかありません。

それゆえに不適切な方法で扱っても生きてしまい、気が付けば花がつかないなんてことになりがちです。

今回の記事では夏頃にできる芽が花芽なのか葉芽なのかの見分け方と、刈込が花芽形成に及ぼす時期への影響について説明していきます。



花芽と葉芽


ツツジの仲間はザックリと4月の小粒系、5月のサツキや大輪系に分けられます。

いずれにしても6月下旬~7月下旬にかけて翌年の花芽になるか葉芽になるかが決定し、慣れてくれば夏の時点で判断が可能です。

この際、春に剪定をしたかどうかで判別の時期が変わってきます。

無剪定であれば4月咲きのものは7月頭ぐらいには花芽が確認できます。剪定したものは8月下旬ごろに花芽が確認できます。

花芽


花芽は写真のように中央の部分が何層にも重なり、いかにも大きく膨らんで見えます。

花芽形成初期でも基部には明らかなふくらみが見られています。

また、樹形から飛び出ているような強い枝は栄養が良く流れ込んでいるため、花芽が複数形成されます。

その場合最初に形成された中心の1つを軸にしてその周りに新しい花芽がポコポコできてきます。

強い枝はがなりごつごつしてきます。

この1つ1つの花芽からだいたい2つの花が飛び出てきます。

こちらの写真は花芽が現時点で3つ確認できていますので、来年この枝からは6つほどの花が付きそうです。今からワクワクですね。

葉芽


葉芽は花芽と比べ明らかに小さいです。

基部のふくらみがなく、上から見ても本当にわずかな緑色のふくらみが見られるくらいです。

葉芽は栄養の不足や花芽分化の時期までに枝が充実できなかった場合に形成されます。
(写真は剪定後伸びてきた枝。若い。)

花芽はこれから11月頃までどんどん大きく成長していきますが、葉芽は小さいまま翌年の2月頃にならないと大きくなってきません。

なので花芽を認識すれば相対的な大きさで判別が可能です。

もしも花芽なのかがあまりにも気になる場合には芽を1つ剥いてみるといいでしょう。

花芽かどうかは見分けなくとも来年の花つきは変わりませんが、育てている植物の事情を知っておくのもお勉強です。

あまりにも小さいですが、花の要素である雌しべが見えます

10月以降で芽が充実してくれば花を形成する要素で判別が可能です。



無剪定と剪定時の花芽形成期の違い


ツツジにおける刈込管理は通説とされていますが、ツツジの生態に合わせるならば花付きを良くするという点においては間違っています。

前述のように花付きに影響するのは花芽分化期に枝が充実しているかどうかです。

(剪定が遅く葉芽予備軍が多い)
ツツジの剪定は花後すぐに行うのが良いとされていますが、すぐに行われるケースというのは稀です。

今回は花後1月後に刈込剪定したツツジと、無剪定のツツジをサンプルとして用意しました。

無剪定

前提条件として品種は同じ胡蝶の舞というクルメツツジです。(参考文献はオオムラサキを対象にしたもの)

まず並べた一枚。左が無剪定右が花後1か月後剪定です。

左のボリューム感が明らかです。

花芽のところで述べたように強い枝には栄養が流れ込むので、こうしたツツジの枝のアップダウンがもこもことしたツツジらしい雰囲気を出してくれます。

芽を拡大してみます。既に中心の花芽ができており、中心を軸に新たな花芽が形成されています。

ツツジの花芽分化は時期は決まっているのですが、実はスイッチのようにカチッと切り替わるわけではありません。

ボリュームを調整するようにピークがあり、8月下旬ぐらいまで花芽になるものと葉芽になるものが入り乱れます。

無剪定はこのボリュームで変わっていく花芽変化の時期全てに充実した枝を整えて待っているため、90%近い非常に高い花芽形成率を誇ります。

枝の充実具合は色合いを見ることでも判別が可能です。

(こちらは食われたやつです)
十分に育った枝はかなり濃い緑色をしています。枝ぶりもヒョロヒョロではなくがっしりとしていますね。

剪定

右側が剪定したツツジです。8月下旬段階でも枝がヒョロヒョロしているのが分かると思います。

先端の枝を見てみると花芽がまだ形成されていないものが多いことが分かります。

(これはのちのち花芽になります)

前述の通り7月上旬からボリュームを絞るように花芽に変化していくツツジですが、8月下旬の段階で枝が充実していないということはそれだけ花芽になれるチャンスを逃しているということです。

それでも根元部分を見れば割合は少なくとも花芽になっているものもあります。ツツジの生命力の強さには驚くばかりです。

刈り込みは花後直後に行ったとしても60%程度の着蕾率で、1月後の剪定では40%程度まで落ちることが明らかになっています。
このことからも枝の充実の重要性がよく分かりますね。

まとめ

ツツジの花つきを良くするためには花芽分化期までに枝を充実させることが重要で、無剪定で90%、花後直後の剪定で60%の着蕾率といわれています。

剪定期が遅れるほど花芽の割合は減っていき、1月遅れると花芽の割合は40%まで減ってしまいます。

7月頃には花芽が目視できるようになり、根本の大きさを見ることで容易に判断することが可能です。

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ツツジの花つき目標として、こうした名所の花つきを見ておくことはオススメです。管理次第でどこまで改善できるのか?それを理解しましょう。春に訪れるのももちろんオススメです。



参考文献 ツツジ類における剪定・刈込み時期と花芽形成との関係について(内田均、荻原信弘)