蓼食う虫も好き好き

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ツツジやサツキの花が咲かない場合に考えられる要因。天敵害虫ベニモンアオリンガや刈り込みが与える影響などを比較!

お世話したツツジの花が咲かなかった


バッチリ刈り込んだのにツツジの花つきがイマイチだった。

毎年刈り込んでいるのに花つきがどんどん悪くなった。

これはツツジの花が咲かないパターンとしてよくある話です。今日はそのような状況を引き起こす要因について見ていきましょう。

害虫ベニモンアオリンガによる被害


この緑とピンク色の蛾(写真は春型です)を見たことのある人はいませんか?ツツジ愛好家の宿敵とも言える虫です。

健全なツツジの芽は6月~7月頃に花芽分化(かがぶんか)が起こり、この時期に花になるか葉になるかが決まります。

その後は水切れや寒の入りなどから芽を維持できるかどうかが重要なのですが、このベニモンアオリンガという虫が芽を食い荒らします。

剪定が終わったあとの5月~10月にかけて新芽の先に注目してあげてください。

写真のように先が枯れていた場合ベニモンアオリンガによる食害を受けています。

この蛾による被害は甚大で、新芽を専門で食べ、小さな株では全滅しかねないほどの影響をもたらします。

通常ツツジは新しい枝を数本出します。

今年伸びた枝は枝分かれしません。

写真右の分枝しているようなものは食害を受けて芽が潰れ、新しい枝を伸ばしたとわかります。

このようなサインを見つけた場合にはすぐオルトランなどの薬剤による対処が必要です。

ベニモンアオリンガの幼虫は非常に小さく目視での発見は困難です。しかし芽の付け根に小さな穴を残すため、よく見ておけば発生初期で被害を防ぐことができます。

3~11月まで被害は発生し、7月以降の被害が致命傷となるのでよく見てあげましょう。

刈り込みの遅れが花芽に悪影響を与える


ツツジは今年十分成長した新梢の先端に花芽をつけます。

剪定が遅くなるほど花芽が付きにくくなることが研究で明らかとなっており、無剪定、弱刈込、強刈り込みと言ったどの程度切るかによっても花つきが異なります。

ツツジの剪定や刈込みは5~6月に行うと一般的に見かけますが、それでは遅いというのが正直です。

以前紹介した実験区です。右が無剪定、中央が強刈り込み、左が弱刈込です。

強刈り込みは丸坊主になり、葉がないレベルまで刈り込むです。弱刈り込みは葉が残る(数センチ)程度の刈り込みです。時期が花後3週間ほど立っているので、花つきはいまいちでした。

一般的には刈り込みは伸びた枝につく花数こそ減りますが、新しく出てくる枝の数が多いので花自体は増える傾向にあります。

しかし、毎年刈り込みを続けることは花の減少を引き起こします。

ここでイメージしてください。枝は1本を切るとまた1本生えるわけではありません。

3~10程度の新しい枝が切り口付近から伸びてくるのです。5本出ると仮定すると、1年目1→5。2年目に5→25。3年目には25→125と増え、枝は小さく、栄養は分散し、密集し始めます。

このように密集し、花をつけないツツジは町中を始めいたるところで目にしますよね。

野菜を大きくする際に摘芯というテクニックがあります。枝や幹を切り、栄養を実に渡すのですが、花芽にも同じことがいえます。こうなると細かな枝を抜いて栄養を絞ってあげなければなりません。

このように塊になってしまった枝を根本から抜いてしまいましょう。

花後すぐであれば余裕で芽が出始め、翌年でも美しい花が楽しめます。お庭のツツジがギュウギュウになっていないか確かめてみてください。

そしてツツジは根本まで切ってもそうそう枯れませんので、刈り込みばかりの場合思い切って剪定ばさみで切ってあげてください。

日当たりが悪い


光合成で栄養を稼ぐツツジは日差しが大好きです。半日は日当たりを確保したいです。高木などの日陰になると明らかに花つきは悪くなります。

日当たりの悪い奥側は明らかに花つきが悪いです。日当たりの影響と、暗い環境では害虫ベニモンアオリンガも発生しやすいようです。

夏の水切れに注意

根本に直射日光が当たり、夏に3日ほど雨がふらないと水が不足し花芽が枯れる可能性があります。土に直接植えていても雨がふらなければ水を上げましょう。

7月以降の剪定は絶対にダメ


既に話したようにツツジの花芽は今年伸びた枝先に付きます。

秋になるとこういった上に伸びた枝をみっともないとみなす方がいますが、植物の性質に合わせるのが大切です。この伸びた枝を切ることは花芽を大きく減らすことになります。

切った場合と残した場合の花つき具合も確認しておきましょう。

こんなに違います。上に伸びる枝は太く栄養がよく流れるため、花芽がたくさんつきます。これを切るともこもこした名所のような美しい雰囲気を出すことはできません。

では5月6月の剪定は?

7月以降はダメ。なら6月に選定すればいいか。これも実はダメです。

ツツジはクルメ系なら6月、ヒラド系なら7月頃に花芽と葉芽に分かれる花芽分化(かがぶんか)が起きます。

このタイミングまでに新梢が十分育っていないといけません。
なのでツツジ剪定のベストタイミングは花が8割終わった4月位の頃合いになります。
これにより分化前に新梢を最大限育てることが可能になります。

今日はツツジの花付きを悪くする大きな要素についてお話しました。

これ以外にももちろん要因は有るのですが、最もよくありそうなものを紹介しました。花と剪定の季節以外にもツツジをしっかり見て、来年の美しい花を目指しましょう。

剪定ばさみではVS8が圧倒的におすすめです。太めのツツジの枝もバッサリ切れ、細かい枝でも大活躍します。私も愛用中。


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やってしまいがちな秋剪定編もどうぞ。夏以降の刈込みは花が咲かない要因No.1です。