蓼食う虫も好き好き

知っているとちょっとお得で日々の観察が楽しくなる自然の魅力を発信します。画像の無断転載は禁止です。

アオマダラタマムシ採集記2 イヌツゲで探すアオマダラ2024(失敗編)

アオマダラタマムシが見たい

当ブログをご覧の方は今季も色々と採集活動をしていたのはご存知かと思います。

今年の成果。死んだアオマダラの顔まではたどり着けたものの、生態は1個体を逃したのみ。

タマムシハンドブックを購入して色々なタマムシを見る中で特に興味が湧いたのがアオマダラタマムシでした。

神奈川県では記録が極めて少なく、同様に東京においても生息地が限られると言われるタマムシです。

昨年は過去に記録のある高尾山に5回ほど足を運び、見られず苦い思いをしました。なので今年こそ見たいと思い合間に探してみたのですが、今季は死骸を見つける所までで終わってしまいました。

今年複数回行ったアオマダラタマムシの採集記をまとめたものです。(主に6月のもの)

アオマダラタマムシ採集記

アオマダラタマムシは4月下旬ごろから出現するタマムシでおよそ8月下旬ごろまでいるようです。

6月はイヌツゲを見て回っていた。羽脱痕はかなりあるのになぜか出会えない。

個体数のピークはSNSベースによると6月頃と言われており、この時期に狙ってみることにしました。

アオハダの感覚は昨年の高尾山で掴めましたが、同じことをしても面白くないので思い切って場所を変え、前半は多産地で利用すると言われるイヌツゲでの確認記録がある場所へ足を運びました。
pljbnature.com
(昨年6月の下見編)
後半は高尾のアオタマのついでなどでアオハダ、標本ラベルなどから記録のある地域でアオハダなどを見ていました。

前半の地域がメインの採集記となります。

ここはイヌツゲがとても多いようです。環境に入って早々イヌツゲを見つけました。枯死している場所もあり、大木ではありませんが中々によさげな感じです。

羽脱痕は早々に見つけており、今季の発見が期待されたのだが...

これは!?

予想よりもだいぶ小さいですけれどもアオタマやヤマトタマムシと同じ形の痕があります。アオマダラタマムシのものに違いない...!
これは期待が持てますね。

イヌツゲは多いのですが,、いい感じに成長しているものや枯死している場所があるものがあまりありません。

イヌツゲの枯損部を利用し、楕円形の痕を出す虫など他にいないだろう!

一方で脱出した痕はとても多いです。体感としては高尾でモミに残るアオタマの痕やイヌブナに残るヨコヤマorゴマダラの痕以上に見かける程アオマダラの脱出痕があるのですが、肝心の本体がいません。

アオマダラタマムシはイヌツゲなどモチノキ科の大木を利用することで知られ、♂は♀が幹に飛来するのを待っていると聞きます。

木は太めの物も多い。太めの幹で♀待ちするのはウバタマなどにも見られる行動。

条件のいい木では♂のアオマダラが何匹もついている場面を目にするそうですが、なぜかそんな気配はありません。

近年クワガタの採集をしているときに似た感覚を覚えました。

ナラ枯れで木々から大量に樹液が出る結果山地の樹液は樹液パラダイスとなっており、特定の木にクワガタがたくさんつくというような機会が減っているように感じます。

逆になぜ見つからないのか分からない。後日(数カ月後)遭遇した虫屋の方に事情を話したら、この地域に来ればポコポコ取れると言っていた。

このエリアはイヌツゲが豊富なことで有名で、近隣の公園のイヌツゲなどでもアオマダラの記録があります。

逆に植樹が多すぎて私が見つけていない良質な木に集まっているのかもしれません。

アオマダラの傾向ですが、がっつり心材部に入るようです。太い枝が打たれた跡を見ると幹の中心を利用している傾向が見られます。

幼虫は不明ですが、蛹化するのは芯材部で間違いなさそうです。切断面の中心に穴が見られた・

成木の分岐した片方が枯死しているような木が好きなようで、細い枝に入ることは無いようです。枯死部で痕を見かける場合には外周20㎝位は最低欲しいようで、地際の枯死部で痕を見ることが多かったです。

イヌツゲはこれを利用する虫が少なく、特に穿孔性の虫が限られるのが分かりやすいですね。

地際に複数の脱出痕があるイヌツゲを見つけました。また痕かよと思っていると...?

冒頭の写真。その小ささに驚いた。

!? アオマダラタマムシ!!

しかし様子がおかしいです。樹皮をかんだりする様子がありません。

このアオマダラは羽化に失敗してしまったようで、穴から出られずそのまま死んでしまったんですね。

死んでいるとはいえアオマダラはアオマダラ。顔しか見えませんがその姿や雰囲気の片鱗が見えただけでうれしいものです。

詰まっているので掘り出せない。死骸のために削るのも嫌なのでスルー。

引き抜ければ全身が見えるのでなんとか引き抜きたいのですが、こんな状況は想定していなかったのでピンセットなどありません。

枝を利用してみましたが思ったより柔らかいことと掴んだら頭部など取れそうな感じ(死後固まる前の緩さ、もしくは腐敗した柔らかさ)があったので諦めました。

やはりアオマダラはここにいる!

この期待感が1匹を見つけるモチベーションをくれます。

しかし残念ながらこの日はこれをピークに進展なく終了。なぜいないのかと疑問を持ちながら別日に続きます。

別日

別日と言いつつ4回分の空に終わった採集記の報告です。

別地域のアオハダ。薄い記録のエリアらしいが羽脱痕などはなし。

同じ場所に数日後に来ました。アオマダラモチベがとても高く、見つけてやるという気持ちがあります。

先日良かった場所をさっと見て新規開拓を行います。

当初はイヌツゲとアオハダを探していた。モチノキ科ならばいい部位があれば利用しそうと判断。

イヌツゲで見つけてやると意気込んでいましたが、モチノキでもクロガネモチでも構いません。モチノキ科をしっかり見ていきます。

イヌツゲの大木、枯損部があり、これにいなかったらいないだろう感のある太めのものが5本もある場所に来ました。

巨大イヌツゲは立派ですね。これぐらいの規模感なら枯れた部分もあるはず。

立派なイヌツゲです。この場所は初日とは違うのですが、アオマダラの記録がある公園です。
枯損部は!?

痕はある!アオマダラは!

なんでいないんだよぉぉ と疑問。周囲にモチノキ科の群生地があるわけでもないので古いのか?

アオマダラ...

いませんね。

これにいなかったらもういないだろう ということでこの地を後にして1日目のポイントへ。

これの2倍以上太いイヌツゲが途中から折れて部分枯れしていました。

新規開拓しているとこれにいなかったらいないだろうイヌツゲを発見。私がアオマダラならこれには来ます。

アオマダラは幹につくので遠目から張り付いている幹を見ていきます。

痕はあるものの虫の姿はないか?

裏側も枯れているようなのでちょっと回って....

ここで枝先から中型甲虫の羽ばたく音がします。枝!?と振り向くと

アオマダラは桜の葉を食べることが知られている。つまり桜の樹冠を見るのも有効か?

近隣のサクラの樹冠に飛んでいく小型のヤマトタマムシ様のシルエットが見えました。

アオマダラじゃないかー!

飛んでいた姿は完全にサイズ感形ともにアオマダラでした。

の声を心の内で響かせながらアオマダラタマムシは樹冠へ消えていきました。

その後はよさげなイヌツゲを発掘して悔しながらの終了です。

モチノキ科狙いの採集は過酷。アオマダラタマムシ採集は今季も苦い結果に。

私の昆虫採集ではヨコヤマヒゲナガカミキリが最も苦戦した種類なのですが、このカミキリの採集はライトの巡回が含まれるので副産物が豊富で楽しいのです。

一方でこの地のアオマダラタマムシの採集は単調な採集になりがちで0か100かという感じがあります。

その中でのアオマダラが飛んでいくシーンは何度もフラッシュバックするほど強烈なダメージを受けました。
pljbnature.com
(採集は情報交換にこそ価値がある?その価値を提供するためにも空振り情報はためになる)
時は流れ今季オオトラカミキリの採集時にいろいろな虫やさんとお話をし、アオマダラの話をすると相当なスカをかましているからか情報を教えてくれる方がおり、3箇所ほど新規ポイントを入手することができました。

冬季には材中の成虫の様子を見に行き、なんとかその姿を見てやりたいと思っています。話によればこの辺では局所的な分布なようで、当てればかなりいるようです。

必ず捕まえてやります。

タマムシ科採集関連記事

pljbnature.com
インセクトフェアでは出品アオマダラタマムシのラベルを見てきました。標本販売はそのラベルを眺めるなんて言う楽しみ方もありますよね。もちろん該当地域だったわけですが。
pljbnature.com
今季のアオタマムシ編です。高尾アオタマに興味があるならば読んでおくと有意義かもしれません。
pljbnature.com
初夏のタマムシ科採集。ナラ枯れでクロホシタマムシ採集がやりやすくなっています。今がおすすめ。
pljbnature.com
真冬のトゲフタオタマムシ。坊主でしたが今季もリベンジ予定。