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2024年高尾山昆虫観察記8 昼間のヨコヤマヒゲナガカミキリと高尾のオオトラカミキリを目指して(1敗)

9月の高尾はカミキリが熱い

オオトラ幼虫の特徴的な痕。出会えない可能性が高い超難関種。

9月に入りクワガタシーズンも終了。今年も夏が終わったとお思いの方も多いことでしょう。

しかしこの時期から出始める虫というのもおり、高尾山ではとあるカミキリの仲間がシーズンを迎えます。

9月の前半では先月に続きヨコヤマヒゲナガカミキリが狙えますし、私的秋の高難易度種としてヨツボシシロオビゴマフカミキリ(メディオ)、アカジマトラカミキリ、オオトラカミキリが出現します。

今回は昼の部にて夜行性とされるヨコヤマを探しつつオオトラを狙ってきました。ネタバレですがオオトラには会えてません。

訪問日のコンディション

訪れた日は台風明け直後の日差しが良い日でした。

オオトラの気持ちで考えると、この日は良さそうだったが。

この日ほど良い日はないと踏んだのです。

目標は2つ。

昼間にイヌブナルッキングにてヨコヤマヒゲナガカミキリを発見すること、オオトラカミキリを捕まえることです。

前回(観察記7)にて見つけたヨコヤマ。人気のカミキリだが夜見つける虫である。

ターゲットの1つであるオオトラカミキリの詳細は後述しますが、日中日の差し込む熱い時間に産卵におりてくることがわかっていますので、およそお昼ごろを目安に中腹に到着です。

気温は熱いのですが風は涼しく、日陰にいると汗が引いていくような空気感でした。

台風直後で林内は湿っており、太めの木々が濡れている様子も見られましたね。

ヨコヤマを探していく

今期も夜間のイヌブナルッキングにてヨコヤマを捕まえています。同様の方法で昼間に見つけられるのか検証したいものです。

明るいので夜より丁寧な探しが必要。しかし見るべき場所は地際に集中するので楽。

昼間のヨコヤマは夜の間に樹冠に戻らず、地際に残っている個体を探していくことになります。

夜であれば自身の記録では幹の7m~30cmの辺りについているようですが、日が出ている昼間の時間帯には地際の落ち葉の影や下に潜んでいるようです。

そうした個体を見つけるために、夜よりもより深い場所を見ていく必要がありそうです。

人気のカミキリなので探している人もいた。

ということで、昼なのですがライトは必須です。

夜のイヌブナでもなかなか見られないカミキリなので、昼間にわざわざ狙うのは大変だとは思います。

しかしオオトラ1本狙いだと0か100かの採集となり、なかなか大変なのも事実です。

副産物として狙えるものは狙っていきたいものですね。

こちらは過去写真ですが、イヌブナのヒコバエを後食するなど知られています。

今期見つけていた食痕や産卵痕のあるイヌブナを確認し、昼のルッキングの感触を掴んでいくわけです。

ヒコバエの多いこういう木にはいそうだなという場所を見てみると...?

地際にヨコヤマ!落ち葉や木の窪みなど探せば見つけられる可能性は十分ありそうです。

イヌブナ2本めにして地際にいるヨコヤマを見つけてしまいました!

こういう遭遇はかなり嬉しいものですね。

この日見つけられたヨコヤマはこの1匹だけだったのですが、夜間でも数匹取れる機会は多くないことを考えると副産物でルッキングしてみるというのは良いのかもしれませんね。

坊主覚悟だったので、ヨコヤマに出会えただけで気力は十分。

やはり王道の地際と落ち葉の境目あたりに潜んでいました。

昼のほうが配色が溶け込んでいるように見えます。

跗節1本欠けの個体で、この時期にしてはgoodですね。

オオトラの場所を探していく

早々にヨコヤマを見つけて今日はこれだけでももう十分なのですが、ここから本命のオオトラを探していきます。

モミから出る樹液を頼りに産卵に来そうな木を探っていく。

高尾におけるオオトラの難易度はなかなかのものであるらしく、高尾の虫の中でも最高位の難易度と言って間違い無さそうです。

お会いした方の中では両手で数えられないほどの空振りは当たり前のようで、初回の私はビビってしまいますね。

しかしながらそれらの方から有益な情報も頂いていますので、ビギナーながらにアドバンテージはあると考えます。

ヨコヤマルッキングをしつつモミを見ていくと、ナタで削ったような跡が見られます。

割と見られるのが残念なところ

これはオオトラのいた場所なのでしょうが、高尾でも木を削ってる箇所が目立ちました。大変な虫なのでしょうが、傷つけてまで取るのはどうなのかと思いますね。

樹液がダラダラ。これはいつ頃の痕なのでしょうか。

ずいぶん良さそうに見えますが、古いのでしょうか。

アオマダラタマムシもそうでしたが、痕はあっても見つからないものです。

第一モミポイントを痕にして目的地へ向かいます。

今季アオタマを捕まえた有望モミポイントへ向かいましょう。

移動中にモミなど見ていると、意外とオオトラの痕は見つかるんですよね。

エリアによる差こそあれど、モミに痕が見られるものは多い。何年前のものか不明。

オオトラは普段は樹冠に潜んでいるといいます。

産卵のタイミングで♀は幹を伝っておりてくるとのことなので、アオタマよろしく気がついたら横にいるタイプの虫であると思われます。

気を抜かず集中力を持ってモミを見て歩くことが大切ですね。

怪しげな日当たりの良いモミを見て歩く作業

候補のポイントに足を運んでみると、やはり大木よりも細めのモミが多く、周囲の木にも痕が見られます。この辺の感覚は大木の枯れ木に来るアオタマとは真逆ですね。

白い樹液の雰囲気を探って今いるのかどうかというのを見分けていきたいものです。

35~45度位の傾斜がありそうな斜面から出てくるとは思わない。

道を歩いていると横の斜面から物音がしました。こんな時間に大型動物か?と警戒の目を向けると...?

今期採集記4,5,7回でお世話になっているカミキリ屋さんが斜面から現れます。私的にはこれが一番ビックリしました。


挨拶をしつつオオトラ目当てなのは知っていたので、同行させていただくことに。

ソロでこれをやり続けるのはなかなかに大変そうです

時刻はお昼を過ぎた頃合いです。オオトラの見回りはいそうなエリアのモミの木を巡回すること。

これに過去の現地での採集情報や現地民との交流で得られる採集情報などを交えて行くのが効率的と言えそうです。

オオトラは同業者も多いようで、本日は5人ほど遭遇しました。

いるのでしょうがその幸運はなかなかにつかめません

皆様大変さはご存知のようで、かつかなり虫好きの方ばかりですから、巡回しつつ再遭遇しては虫の話をするというのがなかなか他の採集と違って面白かったですね。

有益な情報が落とせるようにルッキングをしていきます。

このようなものはかなり前だそうで、過去にいたサインとして使える

幼虫の穿孔痕は渦巻き状の特有な形をしていますが、これが樹皮に出ているのはかなり前のものだそうです。素人からすると目新しいものに見えますね。

ヒゲナガのフラス。ヒゲナガのほうが多いので、フラスは線状ばかり。

また、カミキリのフラスはゴボウのような線状のものや豆状のものなどいくつかありますが、モミに見られるものとしては線状のものはヒゲナガのものであるそうです。(カミキリ屋さんより)

オオトラのフラスは粉状であるらしく確かに見せてもらうと特徴的でした。

剪定された木に残されたオオトラの痕とフラス。

この採集ですが噂通りかなり大変です。個体数の少ない虫がたまたまおりてくるタイミングにたまたま遭遇しないといけません。

加えて副産物がありません。

見られた虫はヒゲナガカミキリ2匹くらい。

当初はモミの細枝に付くというメディオを並行しようと考えていたのですが、二兎を追うものは状態になりそうでやらないほうが良いと思いました。

とはいえ色々教えてくださり、褐色腐朽菌食いなどの生態を教えてもらいました。(メディオ)

結果的に7時間ほど滞在し、オオトラは気配も0。副産物はエゾゼミの声と今回はヨコヤマが取れた(十分)くらいでしたね。

しかしながら現地の方とオオトラの難しさや会えない感情共有や、合間の虫トークなど、虫に会えていては過ごせないような時間の共有ができたのは楽しかったです。

夢を追い求めてまた近々いく。

今日取れた方は0だったようです。

今回数々の有識者から頂いた情報を下に今期何度か足を運び、有益な情報発信ができたらと思います。またリベンジに行き、記事を更新しますが、内容は似たようなものになってしまうかもしれません。

採集のリアルな感じを届けられるとも言えるかもしれません。
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リアルな採集感が楽しめる高尾のオオトラ。挑む方は苦行の用意をしておきましょう。

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